夏の雲

左足の親指の側面にイボがある。

痛みは全く無いが、妙に気になる。
気になるので、月に一度程度、自ら剃刀で削っている。
削りすぎると、少し痛い。
皮膚が薄く柔らかくなり、少し赤みがかったところで削るのを止める。
数日後、気がつくとまた固くなっている。

今日もまた、イボを削っている。
深夜のコンビニ店員のように慣れた手つきで、
ちょうどいいところで削るのを終える。

僕は、削り取ったイボのカスと、削り取られた足の親指を眺めていた。

なんだか顔の右半分が暖かい。
気がついてすぐ隣の窓を見上げると、
窓の外では、昨日降った大雨のお詫びとばかりに、
見事に空が青かった。
その青さと競うように、勢いよく跳ね上がった雲は、
縁取りを輝かせて、青空の下半分を埋め尽くそうとしていた。

僕はまた、足の親指を眺めていた。
足にできたイボは、少し削りすぎたせいか、
独自のリズムでジンジンと、僅かな痛みを足先へ伝えていた。

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