抹消

認知症と言えば、徐々に記憶を失っていく。
と云う風に受け取ってはいます。
家族の名前や関係すら忘れてしまい、帰る家も見失う。

だとすると、ああしたいこうでありたいと言う欲望も軋轢も無くなり
死に対する恐怖や不安、人への羨みや嫉み憎しみ恨みなど
消えてしまうと言うことなのでしょうか。

身の置き所さえ安全で守られていさえすれば、
家族にとって、残された者達にとっては
寂しい事であり悲しい事のように思える諸々の事が

当の本人にとっては最も癒しとなり安らぎとなり得る事もあるのでしょうか。
と思うと 幸せなのかもしれないと思えて来たりします。

それは当の本人にしか解らないことで、
その状態にまで至る経過にもよるのでしょうが、
もうその時は説明不可の状態になっているのかもしれません。

私にとっては、そうであれば、
母親の羊水に守られ、浮かんでいられた時のように、
安全で安心な、真空状態の世界に思えたりもするのです。

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