其処には

鏡に映る貴方は、私の合わせ鏡。
そっくり同じ、よく似ています。

でも、貴方の鏡に映っているもう一人の貴方は、
幾人もの人が度重なり、まるで違った貴方を映し出しています。

其れはもう新しい貴方。
刻一刻と変化する、新しい貴方の姿でした。

「今」の私はすでに有るものからしか成り立たない。
今此処に有るものからしか形作れない。
それは貴方の一かけら、
幾万もの人々の一かけら。
その 何を感じ 何を選び 何が記憶されていくのか。

変化の仕方はとても小さくて、
私は其れに気付く事がなかった。
随分前と比べれば、全く違った顔姿が映っているのに
「相変わらず何も変わらない」
「私は其のままだ」と嘆いているのかもしれない。

以前の私がどんな風に映し出されていたのか、
もう忘れているのにね。
以前の貴方がどんなだったか私は覚えているのにね。

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