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自分が「シーン」の中心にいたと思えた"時間"と"熱狂" - 2010年代の音楽を振り返る(4)

2010年代の「個人的名盤」を振り返る企画note、今回は第4弾。


ここまで2010年、2011年、1年飛ばして2013年を振り返ってみた。

今回はまた1年飛ばして2015年の作品をピックアップして当時の自分語りと合わせて文字を綴っていこうと思う。


前回のnoteで「2013年はロックフェスが一般化した年」と書いた。

それから2年後の2015年、自分の肌感覚では、フェスは相変わらずロックシーンのど真ん中にあった。

そして当時自分は20歳。自由に遊ぶことを最も許されていた時期に音楽に求めていたのは「ライブで盛り上がりたい」という一心だった。周りにいるのもそんな人達ばっかりだった。


フェスやライブハウスに行ってはフロアの前方で汗にまみれて踊りまくっていた1年を象徴するアルバムがこの2枚。

KANA-BOONの「TIME」とKEYTALKの「HOT!」

文字通り当時の「時代感」と「熱狂」が詰まっている。そして、10年代後半に至るまでのフェスの時代を象徴する曲が収録されているアルバムだ。



2014年〜15年のKANA-BOONとKEYTALK、いちいち言葉で説明するまでもなく、本当に凄く勢いがあった。


2組とも2013年のメジャーデビューの頃に初めて聴いてから一気にハマり、その時に何となく「このバンドを武道館でライブをするまで見届けたい」なんてことを思い描いていたのだが、両者とも2015年に日本武道館を即完させてワンマンライブを成功させてしまった。2年も経たない、あまりにも速いペースで夢は叶ってしまったのだ。


トントン拍子にライブハウスの会場やフェスのステージが大きくなっていくのはファンとしても気持ちがいいもので、2組とも「このままロックシーンのど真ん中に居続けるのだろう」と確信していた。

それに、これらのバンドについて行き、ダンスフロアで熱狂していた自分もロックシーンの当事者としてど真ん中にい続けると思っていた。



2013年頃から始まったフェスブーム、楽曲のBPMも流行の波も、何もかもスピーディだった。

あれから5年ほどの月日が経った今、熱狂の渦を作っていたバンドも、その渦で熱狂していた20歳の自分も、当時の状況とは違う場所にいるのは紛れもない事実だ。

暑苦しくても飽きることなく踊り続けた4つ打ちビートも、今の自分の頭の中では鳴りを潜めている。

奪って奪って奪ってく
流れる時と記憶
遠く遠く 遠くになって

- KANA-BOON「シルエット」


Heavy Routine Story End 

- KEYTALK「Monday Traveller」


時代の先駆者として、パレードを率いる覚悟を決めたKANA-BOONは「TIME」以降の作品では自ら生み出したブームから降りるように、ロックバンドの王道としての力強さを求めるようになった。

追い風を断ち切ることで、ここまで茨の道になるとは正直思わなかったけど、その度にバンドは力強くなって、起伏があってこそのロックの王道をこれからも転がり続けるだろう。


一方のKEYTALKは、踊れてかつ「巻き込む」曲の先駆けとなった「MONSTER DANCE」以降、お祭りバンドとしてのキャラクターを強みとして更に押し出していく方向で着実に進化を遂げている。

今年に入ってレーベルを移籍してリリースした最新アルバムは、ロックバンドがポップサイドに振り切った爽快感に溢れていた。

ただ、対バンやイベントによってはバチバチに戦う時もあれば硬派な楽曲で魅せることもある。そんな変幻自在でクレバーな一面も彼らの魅力として残っている。


KANA-BOONやKEYTALKをはじめ「4つ打ちダンスロック」とか「フェスロック」と言われたバンドが一括りに語られていたこともあったけど、若いバンドが1つの束になって新しいシーンを作っているように見えてそれはそれで悪い気はしなかった。

今となっては束は散り散りになったように思うけど、その束となっていたバンドも、時代の波を乗り越えて芯の強いバンドとなって活動している。残念ながら活動が止まったバンドもいるけど。


2015年の個人的名盤であるこの2枚を今改めて聴いて、客観的に当時の自分の熱狂を捉えようとしている。良くも悪くも、今はもう取り戻せない過去の思い出だ。
だけど、今よりも余計なことを考えずただ純粋に音楽を楽しんでいたこの時代を、ただ単に消費した過去にしたくないからこうして振り返って文章を書いている。


渦の外から当時の熱狂を見ると、結構ネガティブな捉え方もされている。

例えばロックフェスに集まるバンドやお客さんを指して「画一化」って言い方をしている人が多い。今となっては自分も全くそう思うのだけど。

みんなでワイワイ盛り上がる「一体感」だったり、みんなが全く同じ動きをして楽しんでいたり、バンドメンバーのキャラクターとか、音楽以外の部分が目立っていたり、そういった所に違和感を感じるようになってしまった。


だけど、昔は自分もその当事者だったことを絶対に忘れてはいけない。当時は周りの人と一緒盛り上がるのが凄く楽しかったのに、いつしか冷めた目で見てしまうようになってしまったのは何故だろうか。


君を笑うやつは数年後きっと泣いてるぜ

- KANA-BOON「LOL」

外野からバンドの見方とか楽しみ方とかにあれこれ文句つけるのは、今みたいに頭を使うことなくピュアな音楽体験を楽しんでいた若い頃の自分自身を殺してしまうことになりかねない。


そうならないためにも振り返るべき1年だと書きながら再実感した。

2015年は、ロックシーンの真ん中に自分を感じたとても楽しかった1年だ。

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