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2022年の良かったアルバムやライブなど個人的な音楽トピックを振り返る

昨年までは一応年間ベストアルバムの記事を書いていたのですが、2022年はアルバム単位で何十枚もちゃんと聴くだけの時間もなければ順位付けれるだけの比較も出来なかったので年間ベストのスタイルは諦めました。

代わりに今年は個人的に良かったアルバムやライブを自分の体験や感じたことと交えながら時系列で1年を振り返っていければと思います。

1〜2月

北米メインストリームというひとつの価値基準で物事を推し量ることが難しくなった現状において、スペイン語圏のレゲトンと、サウス・ロンドンのインディ・ロックと、韓国のK-POPと、西アフリカのアフロビーツを同じ俎上に上げて語るのは決して簡単なことではない。だからと言って、ある特定の音楽を「最高だ」と称揚しても、また新しい村をひとつ作ることにしかならない。そのような混沌とした現状においてポップという共通言語は如何に見出すことが出来るのか? そして、それはどのような形であり得るのだろうか?

The Sign Magazine 2021年年間ベスト・アルバム 50
(http://thesignmagazine.com/features/50-best-albums-of-2021)

シーンの中心が存在せず、国やジャンルごとに分断が加速する時代において、音楽は今後もパブリックな共通言語となり得るのか。というのが2022年の出発点だったが、年明け早々The Weekndや宇多田ヒカルなど国内外のポップスターがアルバムをリリースし、やっぱり中心ってある気がするし、あった方が面白いじゃんと思った。

海外ではライブもフェスも普通に開催されるようになったし、アフターコロナへの気運が高まりつつも、ロシアとウクライナの戦争が本格化し始めた2月に27歳になり、多くのロックスターが命を落とした年齢についに追いついた。自分にはまだまだ生きる理由も成し遂げたいことも沢山あるし、命の数だけある未来が理不尽に奪われることのない世の中に少しでも貢献出来ればと。

良かったアルバム/楽曲

The Weeknd「Dawn FM」

The Weekndらしいダークな雰囲気をまとったダンスポップを軸に、アフターコロナを予感させるテーマとコンセプチュアルな作風。亜蘭知子「Midnight Pretenders」の大胆なサンプリングも注目を集めた。日本のシティポップリバイバルと接続しつつ、2022年の音楽シーンの始まりを告げるに相応しい1枚。

宇多田ヒカル「BADモード」

世界に通用する日本のポップスというより、世界のポップスが日本に逆輸入されたイメージ。A.G. Cook、Floating Points、小袋成彬らプロデューサー陣の豪華さも話題に。自分にとっては宇多田ヒカルは日本のポップスの代表格と言える存在だが、今のお茶の間の音楽リスナーにどのぐらい浸透しているのだろうか。ネトフリのドラマでも「First Love」が再燃中。

マカロニえんぴつ「ハッピーエンドへの期待は」

ユースの代弁者としての所謂エモい言葉使いや味付けの多いアレンジもてんこ盛りで、1枚通すと聴き疲れたり毛嫌いする人も多いだろうけど、日本のロックバンドシーンを更新してやろうという気概はめちゃくちゃ感じた1枚。沢山聴いた訳ではないが、迷ったり魂が吸い取られそうな時には今もこういう音楽にすがりたくなる。

リーガルリリー「Cとし生けるもの」

アジカン、チャットモンチー、KANA-BOONなどのレーベルの先人達のDNAと彼女達らしいオルタナティブな轟音ギターサウンドがハイレベルで結実した1枚。「惑星トラッシュ」と「東京」が好き。

良かったライブ

1/25 サカナクション@日本武道館

個人的にも超久しぶりの武道館ライブ。フルキャパで開催出来たのも年明けの時点では衝撃的だった。昨年のオンラインライブをオフラインで再現したライブ、女優の川床明日香さんを起用したストーリー仕立ての前半部分がとても良かった。特に「壁」〜「目が明く藍色」の流れがグッときた。演出と共に昔の名曲が脚光を浴びるのはライブならではだし、サカナクションのポップとオルタナティブを跨ぐ姿勢に改めて勇気をもらった。

3月

ここ数年やってみたかった、音楽ストリーミングサービスのエディターとしての仕事が本格的にスタートした。先述した「パブリックな共通言語としての音楽」をリスナーに届けることが出来るんじゃないかと飛び込んでみたものの、膨大な新譜の情報量や様々なジャンルの音楽との付き合い方に戸惑ったし、今後もずっと向き合い続けることになると思う。

良かったアルバム/楽曲

ASIAN KUNG-FU GENERATION「プラネットフォークス」

3月のトピックはなんと言ってもアジカン。タイトルもそうだし、バンドが初期からテーマにしていた「個人と世界との関わり方」を再解釈したアルバムなんじゃないかと思う。ゲストアーティストを迎えてインディーロックやヒップホップのエッセンスを交えつつ、日本のギターロックの王道の部分もしっかりアップデートさせる役割も果たした。特に胸に刻まれたのが「You To You」の後半のパート。音楽が人を繋ぐ、一方で音楽が人を隔てるということの功罪について考えるのも自分にとって中長期的なテーマになりそう。

Laura Day Romance「憧憬蝋燭 / Roman Candle」

物語性のある作風でインディーロックリスナーを中心に各所で高く評価されたアルバム。優しさと哀しさ表裏一体の歌声と、繊細に重ねられたギターが堪らない。ワンマンライブは気づいた時には売り切れてたから来年は絶対観たい。

藤井 風「LOVE ALL SERVE ALL」

特別ハマった訳ではないが、年明けからのThe Weeknd→宇多田ヒカルからの流れで藤井風の新譜が出たのが凄く良いと思った。自分のピントを無理なくポップの真ん中に合わせられている気がしたし、世界にも開けている感じがした。実際に世界に羽ばたいたのは前作の「死ぬのがいいわ」だったけど。

良かったライブ

3/13 ASIAN KUNG-FU GENERATION@パシフィコ横浜

結成25周年イヤーを締め括るアニバーサリーライブ。日本のギターロックしか知らなかった自分がアジカンを起点にゴッチ主催のApple Vinegarやこの日ゲストで来たバンドを知って、少しずつ色んな国やジャンルの音楽を知って、カルチャーを取り巻く世の中への考え方が変わって、そういう循環を経てまた大好きなアジカンのロックに立ち返れたのが最高だった。
ゴッチがMCで「ライブは育ちも価値観もバラバラの人達が音楽のもとで一瞬だけ通じ合えるから素晴らしい」と話していて、普段はみんなバラバラで良いんだと思えたし、ワンマンライブだけど内に閉じてなくて、自由で間口が広いフィーリングが会場を包み込んでいてオーディエンスにもそれが確かに伝わっていたのが感動的だった。2022年ベストライブの一つ。「アフターダーク」も初めて生で聴けた…!!

3/27 GEZAN@日比谷野音

Million Wish Collectiveというコーラスチームを加えた編成で行われたワンマンライブ。GEZANらしい反逆のレベルミュージックが大幅にアップデートされていて、天から降り注ぐようでもあり地の底から沸々と燃え上がるような衝撃的な音楽だった。
ライブの後半では指定席ガン無視で前方の通路に押し寄せたり酔っ払いが叫び散らかしたりでなかなかカオスな状況に。価値観も境遇も全然違う人同士でも同じ音楽が好きで同じ空間に集うという、コロナ禍前はまだ自然と受け止められてた状況を久々に目の当たりにして思った以上にストレスだった。 でもそういうある種のコンフォートゾーンが脅かされるのも含めて音楽を通じて世の中と繋がるということなのかなと。音楽がどんな人達の受け皿になっているのかを考えさせられたライブだった。

4〜6月

4月末のコーチェラのライブ配信がとにかく強烈だった。海外のライブにもはや制限なんてものは無いし、そんな中でのHarry StylesやBillie Eilishのヘッドライナーのライブは凄まじかった。88Risingのステージに宇多田ヒカルが参加したのも話題に。日本のライブシーンやコロナ対策との差を感じて妬みたい気持ちにもなったけど、日本の音楽とアジアや世界との距離は確実に近づいているし、以前よりもグローバルな音楽シーンの輪に加われている感じがした。
サマソニのヘッドライナーでThe 1975のカムバックが決まったのもこの時期だったと思うし、3年ぶりのフジロックやサマソニへの気運が高まった期間だった。

良かったアルバム/楽曲

Official髭男dism「ミックスナッツ」
星野源「喜劇」

アニメ「SPY×FAMILY」第1期のOP/ED曲。2組がこれまでの楽曲でも描いてきた、いつまでも拭えない孤独感やありのままの自分を見せれない感覚、そしてそれこそが自分を自分たらしめているというメッセージがアニメのテーマと見事にマッチした素晴らしい曲だと思う。「ミックスナッツ」はライブで弾き語りで初めて聴いた時の印象と音源との振り幅がデカ過ぎてビックリした。

羊文学「our hope」

羊文学みたいなバンドがメジャーで活躍しているのはまさに我々の希望でしかない。神聖な空間に包み込まれる心地良さとそれをパワフルに突き破るギターの高揚感、諦めと祈りを丁寧に織り交ぜた世界観に何度も救われたアルバム。脈々と受け継がれた音楽の歴史の延長線上にいることを実感させられる「OOPARTS」は2022年屈指の名曲。ツアーもでかいギターの音炸裂で最高だった。

tofubeats「REFLECTION」

DJライクなシームレスな楽曲運びの心地よさと「鏡」をテーマにコロナ禍の内省が綴られた詞が胸を打つ1枚。tofubeatsみたいに本来歌うことを専門にしていない人の歌とか歌詞は妙に共感出来る部分が多い。2018年以来のアルバムという事で、コロナ禍以前の2019年のフィーリングをちょっぴり感じれる気もしていてダンスフロアへのノスタルジーも漂う1枚。

BBHF「13」

生と死がコンセプトのEP。今作以前からBBHFはずっと人生のタフな部分を描いてきたバンドだと思うし、そこに向き合うエネルギーが演奏のフィジカルの強さに反映されているのが伝わってきた。 ツアーのMCもとてもタフな内容だったけど、芸術をライフワークにしていく並々ならぬ意志を感じたし、誰を大切にして何に縛られないかに正面から向き合って活動をしているアーティストを応援していきたいと思った。

Foals「Life is Yours」

とにかくポップで踊れてフィジカルに直接訴えてくるバンドサウンドが最高の1枚。タイトルも含めてロックフェス復活の1年のムードにピッタリ。配信で観たフジロックのステージも素晴らしかった。

良かったライブ

4/30 VIVA LA ROCK 2022

コロナ禍で2年連続で参加。人数制限でこじんまりとしていた昨年に比べてだいぶフェスの雰囲気が戻ってきていたし、集まったオーディエンスが主役となってフェスという共同体を作り上げて動かしている様子が伝わってきた。自分が参加した初日のMVPは我らがBase Ball Bear。親子で来ているBESTYの方々がBE:FIRSTの出番を待っている中、この日のラインナップの傾向やフェスの意向をセットリストに反映しつつブレないライブをかましていた。

5/15 Base Ball Bear@日比谷野音

Base Bal Bear恒例の「日比谷ノンフィクション」も3年ぶりの開催。結成20周年イヤーということもありゲストが続々登場。コラボ楽曲を中心に、いわゆる邦ロックの磁場から距離を置き、他ジャンルとの接続を試みたりトライアルを重ねてきた2010年代のバンドの歩みを振り返り、アンコールでは10年ぶり3度目の日本武道館ワンマンライブを発表した。

5/28 POP YOURS

幕張メッセで初開催された国内最大級のヒップホップフェス。セットも演出もめちゃカッコ良かったし出演者も皆デカい会場でも映えるし、自分みたいなヒップホップカルチャーに馴染みがない(というか馴染めない)人間もこういう場があると楽しめる。来年以降もこういうイベントが続いて欲しいし、ラップミュージックがポップミュージックと接続していって欲しい。

7〜8月

自身3年ぶりの夏フェスに歓喜したり、久々にライブで遠方に足を運んだり、あの時の当たり前が戻ってきたことを全身で感じ取ることが出来た夏。もちろんコロナ禍のルールはあれど、もうシンガロングしたりモッシュしたりする年齢でもないので、マスクつけてること以外は大きなストレスもなく楽しめた。
ロッキンもサマソニも飲食とかライブ以外をメインにしても十分楽しめる感じだったし、参加者が1日の過ごし方を自由に決められるある種の公共性みたいなものも戻ってきて良かった。これが無いと始まらない。

良かったライブ

8/11 ROCK IN JAPAN 2022

千葉の蘇我スポーツ公園に会場を移した3年ぶりのロッキン。ひたちなかのスケール感にはどうしたって劣るし、ステージやタイムテーブルの組み方とか言いたいことは多々あるけど、童心に返って真夏の晴天の中ロックバンドの生音を浴びて良い1日だった。ナンバーガールはこの日も合わせて復活期間中2回観れたし、終盤のホルモン→ストレイテナー→バンプの流れは自分の原点を辿るようでエモーショナルな気分に浸っていた。

8/20〜8/21 SUMMER SONIC 2022

2022年最大のトピック。なんと言っても初日のヘッドライナーを務めたThe 1975がライブ再始動の地にこの日を選んでくれたことに大感謝。この1年で1番熱狂したひと時だった。ロックバンド聴きたての中学生時代に出会ったプライマルスクリームで2日間のラストを締め括れたのも自分の今までの集大成感があってブチ上がった。
3年分楽しんだ一方で3年分の隔たりも存分に味わった。参加する事で感じた国内外のアーティストのスタンスの違いや、それぞれのファンの間の分かり合えなさが浮き彫りに。楽しかった余韻と共に自分の行動や言動にも矛盾を抱えながら、このカルチャーを受け継ぐ当事者としてまた来年の夏に向けて1年間過ごしていこうと思った。

8/26 Base Ball Bear×ASIAN KUNG-FU GENERATION@Zepp Osaka Bayside

金曜日に日帰りで大阪に強行した歴史的なツーマンライブ。自分の人生に多大な影響を与えた2バンドが遂に邂逅を果たした夜。それぞれ代表曲と最新モードを惜しみなく繰り出すセトリで、下北系ギターロックの先輩後輩としての関係の深さや、自分も含め長年2組を応援し続けてこの日集まったオーディエンスの期待に応えようという想いがステージからもフロアからも存分に伝わってきた。ベボベのアンコールではアジカン喜多さんを交えての「ループ&ループ」カバー。新しい音楽も楽しめるようについて行きたいし、いつまでも4つ打ちや8ビートのギターロックにもブチ上がれる自分でありたい。そしていつかゴッチも交えて「透明少女」で共演して欲しい…!!

9〜10月

夏まではグローバルなポップスターの新譜で盛り上がりフェスティバルも復活し、大勢の中で自分も熱狂してるイメージで音楽と関わっていたが、9月以降はELLEGARDENの16年ぶりの新曲に始まり、今までの人生に縁の深いアーティストのリリースが続き、一気に自分のパーソナルな部分に向かっていく期間となった。
4年前の2018年の同じ時期にライブやリリースで動いていたアーティスト達が4年後の2022年に同じような動きをしていて(ELLEGARDENは4年前の8月に復活ライブを行ったし、9月のアジカンのシングルや10月の04 Limited Sazabysのアルバムが出たのも4年前とほとんど同じタイミングだった)、個人的に偶然とは思えぬ巡り合わせを感じたし、4年前の9月に大学を卒業していわゆる社会のレールから外れた時の色んな感情がフラッシュバックしたりもした。今は仕事上ある程度幅広く音楽シーンをウォッチしなきゃいけない立場でありつつも、まず一人の音楽ファンとしてこんなにも純粋に盛り上がれた期間は後にも先にも無いかもしれない。
10月からは某社主催の音楽メディア講座に参加することに。年齢も音楽のバックグラウンドも少しずつ異なる受講者の方々とディスカッションしたり、今の音楽シーンに対する所感などを聞けてとても有意義な時間となっている。年が明けると講座も後半に突入するので、そろそろ実際のアウトプットや今後のキャリアに活かすためのアクションをとっていきたい所。

良かったアルバム/楽曲

ELLEGARDEN「Mountain Top」

先に書いたように16年ぶりの新曲リリース。単なるカムバック/リバイバルに留まらない、活休を経てどっしり構えて懐も深くなった4人のバンドサウンドに納得した1曲。歌詞もこの1年で色々覚悟を固めなきゃいけないタイミングに差し掛かってるなと感じている自分に突き刺さった。

ONE OK ROCK「Luxury Disease」

エルレの新曲と同じ日にワンオクがアルバムをリリースしたのも意味深でしかない。意識的にUSのポップスのマナーに則ってあえて必要な回り道をした前作を経て、今作は安易にUSのポップシーンやポップパンクリバイバルには乗っからず、違う文脈からロックを復権させようという気概を感じた。サマソニのライブもMCは良くなかったけど圧倒的なスケール感とダイナミックなパフォーマンスは凄まじかった。

ASIAN KUNG-FU GENERATION「出町柳パラレルユニバース」

5月からのアルバムツアーでも度々聴いていた楽曲。サビの「午後から街の風になって君らしく踊ればいいじゃない」という歌詞が音楽の核心を突いている気がして涙が出た。表題曲の裏では「サーフ・ブンガク・カマクラ」完全版へのモードに突入していて、4曲入りのマキシシングル(死語)の中で遊び心やそれこそパラレルワールド感を詰め込んでいるのも凄い。

04 Limited Sazabys「Harvest」

令和04年に放つ04年ぶり04枚目のアルバム。前作の「SOIL」シングル「SEED」と来てなんだか既定路線のタイトルだし、変わらないことに拘り過ぎずもっと新しいことやってくれという気持ちもある一方で、変わらないことの潔さを今になって羨ましいとも思った1枚。ツアー初日の千葉LOOK公演も観に行った。前作のツアーはファイナルまで全国隅々見届けたけども、あんな無茶はもう出来ないし、自分も日本のロックバンドシーンからは随分離れてしまった。 4年という月日はあまりにも自分と世の中を変えたけど、当時何よりも望んでいた一瞬の熱狂を体感出来るチャンスが巡って来たら、なるべく掴み損ねないようにしたいと思った。年末大晦日は彼らと共に激動の1年を締め括り、新たな1年を迎えることになる。

AFJB「AFJB」

Dragon AshやMAD CAPSULE MARKETSのDNAを受け継いだ2020年代型のミクスチャーロックにビリビリと感電させられた1枚。海外のハイパーポップとか米津玄師の「KICK BACK」みたいなカオスなポップソングとも共振してる感じがするし、この時代にバンドでこういう音楽を作り上げたAge FactroyとJUBEEの嗅覚が素晴らしい。

The 1975「Being Funny In A Foreign Lauguage」

今年はランキング付けなかったけどベストを挙げるとしたらやっぱりこの1枚。1曲目のアウトロが今年聴いたどの曲よりも美しく、バンドとしても音楽シーンとしても個人的にも新たなフェーズに向かっていることを確信した音楽体験だった。個人的にこのアルバムの一番の肝はこのアルバムタイトル(邦題は「外国語での言葉遊び」)なんじゃないかなと思っているのだが、この辺はまだ上手くまとまっていないので年明けにでも改めて何か書ければと。

良かったライブ

9/4 Lady Gaga@ベルーナドーム

自分が人生で初めてライブを観た西武ドームに十数年ぶりにカムバック。自分が今まで観たアーティストの中で一番のビッグネームかも。この夏実感した3年越しのポップカルチャーのビッグバンがここでも巻き起こっていた。「Born This Way」のピアノ弾き語りが圧巻だった。

9/12 sumika×Official髭男dism@豊洲PIT

ロックフェスで若手バンドが束になって成り上がっていった時代から数年が経ち、当時たくさん観たバンドを改めて観る機会を増やそうと思い…というのは半分本当でもう半分はとにかくライブハウスのヒゲダンが観たかった。日本のライブハウスの中でもトップクラスにデカい豊洲PITのキャパに全然収まってないスケール感に圧倒された。主催のsumikaはちょいちょい昔ライブよく観てた頃の曲も演ってくれてノスタルジーに浸りつつ、若いファンを中心に今も彼らの音楽が誰かの拠り所になっているのが伝わってきた空間だった。

9/30 go!go!vanillas@日本武道館

ロックフェスで若手バンドが束になって成り上がっていった時代から数年が経ち、それぞれのバンドがそれぞれのスタイルで成熟しているのを特に感じたのがバニラズ。鍵盤やトランペットなど、フジロックの時のサポートメンバーが加わった7人編成でのライブで「My Favorite Things」という公演タイトルの通り、今のバンドのフェイバリットな部分をその曲ごとに最大限活かしているのが印象的だった。12月に出たアルバムも良かった。

10/7 中村佳穂@昭和女子大学人見記念講堂

ギターレスでドラムとコーラスがそれぞれ2人ずつの形態で今回のツアーも言わずもがな圧巻のパフォーマンス。中村佳穂の存在感はいつもスピリチュアルかつフレンドリーで、こちらのエネルギーを吸い取っては何倍にも大きくして振り撒くような歌とリズムに心を動かされる。コーラスメンバーと共にラストを飾った「そのいのち」は自分にとってかけがえのないパワースポット的な1曲。

10/11 warbear@WWW

warbearというよりGalileo Galileiがの再始動が告げられたメモリアルなライブ。何かが起こると始まる前からこちらも緊張していた中、6年前に止まった時計の針が巡り巡って再び動き出した。自分も音楽にワクワクし続けて音楽で誰かの心を癒せるような人生を進んでいきたいと改めて思えた夜だった。この日は開演に間に合わなかったのだが、自分が企画したプレイリストを開演前のBGMに使ってくれたみたいで大感謝。

10/27 ASIAN KUNG-FU GENERATION@横浜アリーナ

アルバム「プラネットフォークス」に参加したゲストアーティストが全員集合した、全国ツアーの最終盤の1日。アンコールで満を辞して初披露された「星の夜、ひかりの街」がハイライト。今回のアルバムはアジカンが昔から歌ってきた(時に自己否定もしてきた)「繋がり」というテーマの再解釈だと改めて思ったし、この日もゴッチが言ってた「バラバラのまま同じ空間に居合わせて素晴らしい瞬間を共有する」っていう、緩いけどかけがえのない繋がりをこれからも積み重ねていきたいと思った。

11〜12月

11月は仕事もバタバタしていた中でライブも10本参加したりしていたら新譜をちゃんと聴く時間が全くなく、あっという間に年末になってしまった。9月以降主にライブを通じてルーツを再探訪して、改めて自分の出自を大切にしようと思った期間。2020年、2021年とライブに行けない代わりに色んな音楽を聴いて好みも価値観もだいぶ変わったと思ったし、ロキノン系ばかり聴いていた自分の学生時代を悔いたりもしたが、やっぱり自分が実際に目撃出来るものや若い頃に影響受けたものの力は強いなと。

良かったアルバム/楽曲

ELLEGARDEN「The End of Yesterday」

予告通り2022年中に16年ぶりのオリジナルアルバムがリリースされた。活休直後にエルレを知った自分にとっては初めてリアルタイムで手に取るアルバム。いざ聴いてみると昔のことを懐かしむ余裕がないぐらいに2022仕様の音作り。個人的にはもう少し軽やかさとか抜け感が欲しいと思いつつ、リバイバルではなく現役バリバリのバンドとしてカムバックしたい想いが存分に伝わったし、日本のこういうジャンルのバンドシーンをアップデートさせるのに多大な影響力を与える1枚になりそう。Amazon MusicのCMを見てトリビュート盤でサウシーとかマカえんがカバーしてるも悪くないなと思ったり。

結束バンド「結束バンド」

邦ロックリバイバルな今年の後半のムードを決定づける真打がクリスマスの夜に思いもよらぬ所から登場。アニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」の劇中バンドがあの頃のギターロックを鮮やかにアップデートしていく衝撃の1枚。最終回のEDでアルバムのラストを締めくくるアジカン「転がる岩、君に朝が降る」のカバーで涙腺が崩壊した。年末は時代遅れのロックンロールやらラストロックスターやらで盛り上がっているが、自分はこれからも世界を塗り替えるロックを求めている。

良かったライブ

11/8 櫻坂46@東京ドーム

いつかの学生時代にAKBを観て以来の東京ドーム。パフォーマンスはめっちゃカッコ良かったし、アンコールの欅坂の「overture」のどよめきだったり、メンバーの卒コンならではのグループの歴史を遡るような展開には心震えるものがあった。 自分がこのシーンに再びハマる余裕は無いけど、周りにも坂道グループのファンはやっぱり多いし、アイドル批評をしてる方もいたりするので、ほど良い距離感でアイドルシーンもウォッチ出来ればと思う。

11/10 Base Ball Bear@日本武道館

10年ぶり3度目の武道館ワンマン。前回の時はバンドに出会ったばかりの頃だったからファンとしてリアルタイムで武道館を迎えられた念願の夜。この10年間紆余曲折試行錯誤を繰り返してきた3人も、うだつの上がらない日々を過ごした自分も報われた気がした。作品ごとにふるいにかけられながらも追い続けて良かったし、同じような思いで膨れ上がった客席を見ても感動した。こいちゃんのMC聞いて感じたのは、バンドは20年かけてようやくピュアな気持ちで楽しみながら音を鳴らせるようになるんだなと。そういうある種の無邪気さに立ち返るのはバンドにとって一番の自信の表れなのかもしれない。野音のコラボ祭りから一転、最後まで3人の演奏で貫き通す姿勢も素晴らしかった。

11/11 STUTS@LINE CUBE SHIBUYA

今年リリースされたアルバム「orbit」のレコ発ツアーの終盤戦。バンドメンバーとゲストの面々でステージがパンパンに。表現することへの情熱が次々と伝播していく光景を前にブチ上がった。いわゆるSTUTSらしいビートの心地良さとは真逆の、パンクロックのライブを観た後みたいなエモい余韻が続いたのが意外だったし、自分も自分のやり方で表現したいと思った夜だった。

11/20 King Gnu@東京ドーム

初めてロックバンドのライブをドームで観れたとても貴重な体験。King Gnuとしてこの5年間世に送り出してきた楽曲をようやく身の丈に合うスケールで鳴らせたのではないだろうか。個人的にはやっぱりギタリスト常田大希のカリスマっぷりに心惹かれる。絶対ラストに演ると思ってた「サマーレイン・ダイバー」も最高だった。自分はこれからもスタジアムロックに夢を見たい。

2022年を振り返って

ここまで個人的な話やシーンについての所感を述べつつ2022年の音楽について振り返って来ましたが、おかげでとても濃密な1年を過ごすことが出来ました。冒頭に問題提起した分断や争いは留まることを知らず、パブリックだと思ってた場所もどんどん閉じていって息苦しさも感じたけど、それでも共通言語となり得るポップカルチャーのありがたみを実感したし、一方で一人ひとりのファンが特定の対象に熱狂出来ているからこそこのカルチャーは成立しているとも思いました。ここ数年自分には後者の視点が欠けていたので、もっと多面的にアーティストやリスナーの想いを汲み取れるようになりたいなと。

後々振り返ったとしても間違いなくターニングポイントとなる1年で、この年齢で2022年を過ごせたのは本当にラッキーだったと思います。仕事でもやりたいことを任せて貰えているし、今まで遠回りした分を取り戻していかなきゃなと。サービスはポストサブスク時代をサバイブするべく突っ走っている真っ只中なので、自分も置いていかれないように考えをアップデートさせて成長にもっとコミットしたいと思いつつ、生き急いで心を殺さないようにプライベートでも好きな音楽とちゃんと向き合っていきたいです。ライフステージ的にも2023年以降、20代の残りの期間は本当に勝負どころ。日々自分を支えてくださっている方々への感謝を忘れずに、これからも自分らしく音楽のある生活を続けていきたいと思います。みなさんにも素敵な2023年が訪れますように!

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