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『100万回生きたねこ』のススメ

大人になってから子どもの頃読んだ本を読み直すと、感情移入する対象が変わったり、ストーリーの後ろにある、作者の深い意図に気づけたりして、嬉しい発見と喜びがあります。

この記事では、児童書担当の書店員が、大人になってから楽しむ子どもの本の素敵さを共有したい!という想いで、子どもの本の中から「推し」を紹介しています。

第2回は、この本。

100万回も死んで、100万回も生き、100万年も死なない、ねこのお話。
立派なとらねこで、100万人の人に可愛がられ、死んだときには100万人の人が泣いたのに、ねこは1回も泣かなかった。

なぜ、ねこは泣かなかったのだろう。
悲しくなかったからだ。
なぜ悲しくなかったのだろう。

喪う悲しみを知らないから?
泣いてもらう側だったからなのかもしれない。愛をもらう側だったからなのかも。

「ねこは しぬのなんか へいきだったのです。」
なんでだろう。
何回でも生き返れるから?

何回でも生まれ変われるとしたら、私たちはそれぞれの人生をどんな風に捉えるだろう。

人生が一度きりならば、より人生を大切にできるだろうか。

喜びに満ちて、毎日ワクワクして生きられたら幸せだろう。
「生き生き」という言葉は「生きる」を2つ重ねて作られている。
誰しもが生き生きとして生きたい。

どうしたら、生き生きとして生きられるのだろう。
長く生きて、たくさんの経験をすれば?
好きなことをしていれば?
人のために尽くせたら?

生きるって、なんだろう。死ぬとは?
人が生きて、死ぬ、この営みは何?

このように、深く掘り下げれば限りがなく、100万回味わえる本なので、ぜひお手元に置いてほしいです。

一文字、一文字、指でたどって、じっくり何度でも読んでほしい。

大人になるほど、気づきが増え、味わいの豊かさが広がる、すばらしい一冊です。

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