見出し画像

ダンバー数とスナック

2024年103日目。
柳瀬博一さんによるメディア論の講義「メディアの話をパワポも映像も使わずにやる夕べ」。
「全部で10回ぐらいやりたい」とのことで、どれぐらいの頻度でやるのかな?と思いきや、【その2】は今月とのことで、今回も参加してきました。

※【その1】はコチラ↓

今回はスナックの話からスタート。

スナックは通常、地元の常連客に支えられる小規模なビジネスで、開店から3年を超えるとママ/マスターが亡くなるまで閉店することはほとんどない。
その理由は、運営コストの低さ、つまり、必要最小限のスタッフで運営され、提供されるものも酒と乾き物や個包装のものが中心なので、食材の廃棄率も低く保たれている、ということももちろんありますが…それよりも重要なのは、スナックが「マーケティングされない場所にマーケティングされない人々がマーケティングされないままにいる」場になっている、ということ。つまり、伝統的な広告やプロモーションに頼らず、口コミや個人的な関係により客を集めているために、一度コミュニティが作られると、それがなかなか壊れず、店を支え続けることになるため、存続が容易なのです。

これって、佐藤尚之さんの書いていた『ファンベース』の話に近いような気がしました。そうか、あの本は大企業もスナックやりましょう、という本だったか。(違

いや、違うか。
水戸の商店街の古株の方に、過去に行われていた商店街対抗の仮装行列の出し物を決める際にどのようなプロセスだったのかを伺ったことがあります。曰く、「常連になっている店になんとなくみんながいて、祭りが近づいてくると、その場の話が盛り上がってきて決まる」。この「店」がスナックなのか居酒屋なのかはわかりませんが、そういう店が、地域コミュニティの中心にあること。
柳瀬さんの話の中では、このことはクドカンがよくわかっていて、だから「木更津キャッツアイ」や「あまちゃん」でもそのように描いている、という指摘もされていました。(どちらも未見なので私にはわからないですが。)

また、スナックは「(気持ちも身体も緩めて行う)コミュニケーションを売っている店」でもある。
そのことで思い出したのは、某飲食店組合の顔役の方がおっしゃっていた「夜の職人」。
東日本震災後、飲み歩きイベントの企画立ち上げに巻き込まれた際、企画する上でのポイントを掴もうと、比較的近隣で行われていた飲み歩きイベントに行ったことがありました。参加中、酔っていたこともあって、Twitterで実況と感想をリアルタイムで挙げていたところ、後日運営から呼び出され…その時に「かつて水戸の大工町は「夜の職人」がいっぱいいて楽しかった」(ので毎晩のように行っていたのだけど、それが少しずつ女子大生みたいな店員ばかりになって、それだと近所にもあるからいいや、と思って行かなくなってしまったんだ…と続くのですが、その話はまた後日)という話をされたのでした。この「夜の職人」を「コミュニケーションを売る」という「動詞」として解釈したわけですね。なるほど!

また、シャッター商店街であっても同様にコミュニケーションを売ることで存続している業態があり、それは「婦人用品店」と「理容室」とのこと。
「理容室」はともかく「婦人洋品店」が謎ですが、あの業態は、店主が、常連客の顔を思い浮かべながら浅草橋あたりで仕入れを行い、その常連客がお店にお茶を飲みに来た時に「◯◯ちゃん、これ似合うと思って仕入れておいたわよ〜」…こういうものだそう。
確かに、某商店街の顔役の方が奥様に運営させていたお店もそんな感じだったかも!

これらの業態の常連客数は、通常ダンバー数である150人より少ない人数になっているそう。
「ダンバー数」とは、一人の個人が安定的に維持できる社会的関係の人数を指し、およそ150人が限界とされています。この理論は、人間の脳の処理能力に基づいており、150人を超えると社会的な絆が維持しにくくなるとされています。
逆に言えば、スナック、婦人洋品店、理容室は、150人以下の常連客で存続していけるようビジネスモデルとして完成されているわけですね。

これを聞いていて、木下斉さんが中途半端にやっていたPodcastで聞いた、オガール紫波の岡崎正信さんが語っていた話とも通じるなと。(下記リンク、21分頃からの話。)
つまり、ビルの3階にある美容室の居抜き物件を家守として再生させる案件で、一席一席バラして、それぞれに個人事業主の美容師を貼り付けていくのですが、その際に入居できる美容師の条件で重視するものとして「連絡先を知っている客の数が100人以上いること」を挙げていたんですね。これも、ダンバー数に近い数だったなと。

こんな感じで、今回はこれまで見聞きしてきたことや商店街の皆さんから聞いた話といちいち合致していて、何か答え合わせをしているような回でした。

その他にも、コンパクトシティについての話もあり、この定義のはっきりしない謎概念についても言及があったのですが、これも書き出すと長くなるので別の機会に。

さて今回の余談。
仕事が終わってから講義が開始するまで時間があったので、改良湯という銭湯に行ってみました。

目印は巨大な鯨の壁画
中は外国人(主に欧米)が多数!

価格はもちろん通常の銭湯と同じで、風呂だけなら520円。若いスタッフが運営していて、サウナも充実、外国人や若者であやうく入場制限がかかるほどの繁盛ぶりでした。
昔ながらの銭湯もいいですが、こういう銭湯も悪くないですね。また銭湯巡りを始めようかなあ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?