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備えなければ憂いてコーヒー

コペンハーゲン中央駅周辺から出ているバスに乗って目的地までいくために5時半に起きて準備。時差ぼけが功を奏して、自然と起きてしまう。日本にいるときのような早起きの苦痛はない。シャワーを浴びて化粧をして着替えるとパッキングをする。同室の人がいるとやっぱり気を遣うなあと思いながら、こういうこともいい共同生活の前練習だった。北欧の朝は、特に遅い。

デンマーク人の友人から「少なくとも15分前には駅に着いてと書いてあるから気をつけて!」と、メッセージでかなり念をおされた。勝手なイメージではあるが海外で15分前行動を念押されると、10分前についたとしても置いていかれるような恐怖に駆られる。

恐怖に駆られた結果、バスの出発時刻の1時間も前についてしまった。薄々感じてはいたものの、私の体はタイム感のバグがある。

1時間、何をしていたかと言えば、ひたすら雨風に打たれていた。外の気温はて4度ほど。体感気温はとにかく極寒だった。真っ赤になった手がかじかんで動かなくなってくる。この季節のデンマークの天気の悪さには定評があるはずなのに、屋根のあるスペースが小さすぎて、屋根の下集まった人全員でびしょ濡れになるほどで、この土地の人々が、雨に抵抗することを諦めた感じがもはや清々しかった。

待つこと45分ほど。予約していたバス会社のロゴのついたバスが来た。バスが来たのが出発の15分前だったんじゃないかと思う。多少腑に落ちない。

歓談中のバス会社のおじさまたちに、予約表を見せると、この後くるバスが私のバスだと言う。おじさまがもう一人のおじさまを指差して「この人についていけば大丈夫。なんでも聞きな。こいつぁなんでも知ってるんだ。」というと、もう一人のおじさまがにやりと胸元につけた缶バッチを指差して「これをみな。なんでも聞いてくれ。」的なことを言われたので、寒さでかじかみながらやっと出た言葉がかろうじて「Yay!」だった。あとおじさま、ごめん、缶バッチのデンマーク 語、意味わかんないや、と思いながら、陽気なおじさまの言う通り待つこと10分ほど。ようやくバスが来た。


そろそろお気づきだろうが、そもそも15分前にバスなんかきてない。

雹が降ったり風が強かったり、土砂降りだったり、とにかく冷えまくった体を温められたのは、乗り込んだバスがフェリーに接続したあとだった。

北欧にくると必ずと言っていいほど船に乗る。安くて居心地がいいところが北欧の船移動のいいところ。今回は首都コペンハーゲンのあるシェラン島から第二の都市オーフスのあるユトランド半島までをフェリーで渡ると再びバスが道を走り目的地まで向かう。

バスの案内はデンマーク語だけなので、船長のような佇まいのおばさまにフェリーを降りた後にデンマーク語アナウンスがわからなかった旨を伝えると丁寧に英語で教えてくれた。

船の中はすでに人でいっぱいで、窓際やボックスシートのいい場所はあっというまに賑わっていた。カフェの隣のカウンター席は簡易なシートではありつつ電源と机があったのでそこの席を確保した。

寒さの残る体に耐えかねて、コーヒーをオーダーして席に着くと波が荒れ始めた。大きな船がこんなに揺れるのかとおもうくらいに揺れて、あっという間に船酔いした。

船酔いの最中に考えることは「船酔いって英語でなんていうんだろ。」
まずはGuessしてみよう、などと思ったところにデンマーク人の友人からのメッセージに気づく。
「I don't hope it will make you seasick」とかいてある。

なるほど、Seasickというのか。ちょっとはきそうだな、などと思っているうちに無事に船が停留所にとまった。再びバスに乗りこむと、三箇所程度停車しては何人か降り、また乗り込み、を繰り返しようやく目的の場所にたどり着いた。
時間にして6時間ちょっと。そこからまた電車で30分ほど揺られる。また荷物と合流することがとにかく億劫だが、とにかく着くしかない。

1時間に1本の電車を目の前で逃し、さらに待つこと1時間、電車が来た。
荷物が多いため、駅に着いてから降りようとすると遅い。グーグルマップを開いて、位置を見ながら駅に着く3分ほど前から降りる準備をし始めた。

「すんません、すんません」と荷物の周辺にいる人たちをかき分けながら、大きな荷物を背負い上げると、隣にいたおばさまが肩の紐が絡んだのをすっと直してにこっと笑ってくれた。こういうさりげない優しさに時々でくわすことも、この国が好きな理由でもある。

ついつい口慣れしてしまって「Thank you」と言ってしまうけれどちがうんだ「Tak」って言いたかったんだ。

また再びトドメのような雨に濡れながら学校までの数百メートルの道をゆく。

移動時間や荷物の重さに余裕をなくしていても、静かに灯る街の小さな明かりが、いい街にきたかもしれないと思わせてくれた。映画Big Fishにでてくる不思議な街、スペクターをなぜか思い出す。

学校についてからは怒涛。

おお、来たね、来たね。君は誰だい?ああだよこうだよ、君の部屋はあっちで、あと1分でミーティングがあって(1分!??)それでこれで、、、、よしとりあえず踊るよ!!!

出た!!!すぐ踊るんだから!!!!なにかにつけて歌うし!!!!そゆとこすき。

あれやこれやと、ここに半年落ち着くための怒涛が押し寄せる。

ルームメイトにも会うと、いろいろなことを話したり一緒に荷解きをしたりした。とても面白くかわいい、親切な女の子で、心底安心した。
知らないもの同士、ましてや文化の違うもの同士が一緒に暮らすのは、とてもコツがいる。初日だからペースを飛ばしすぎずに、けれど、最初だからこそ話しておかなければ話すタイミングを逃すことを、お互いに伝えられたとおもう。

「とにかくいつでも、なにか居心地の悪いときにはなんでも言ってほしい。どんなことでも、いつでも。」と言うと
「私たちいいペアかもね」と言ってくれた。


前の学校とは驚くほどにいろいろなことがちがう。集まった人たちの雰囲気も、ペースも違う。面白い。


どんな日々になるんだろう。



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