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Wild Flowers まえがき

いよいよ発表になりました。2020年10月7日(水)
sugar me3枚目となるアルバムの発売が決定しました。(パチパチパチ...)
タイトルは、

Wild Flowers

野生の花、野の花という意味です。気づけばオリジナルアルバムは5年ぶり。しかも自主レーベルのセルフプロデュースで12曲入りという大作(?)になりました。この5年間で世界も私もずいぶんと変化し、制作には長い時間とエネルギーを要しました。周りを見渡せばリリースの回転スピードはどんどん上がっていて、どうしてそんなに速くたくさん曲が出来るのか。みんなすごいな〜と思いつつ、とにかく私は5年かかりました。マイペースですみません。いやはやお待たせ致しました。

今日からリリースまでの約1ヶ月、Wild Flowersが咲くまでの思い出をnoteで少しずつ振り返ろうと思います。音楽だけを純粋に楽しみたい人にはオススメしませんので、あしからず。信州暮らし通信を楽しみにしていた人も、すみません。しばらく音楽のお話が続きます。初回はタイトルについて、ちょっと語ってみようかな。

時を遡ること5年前。前回のアルバムをリリースした2015年、当時29歳。色々と迷いの中にいた私は、サイコロを振るみたいな気持ちでタイトルをつけました。「AROUND the CORNER」曲がり角、曲がったらどんな景色が待っているのかと。不安半分・期待半分。ちょうどその直後くらいから音楽のサブスクリプションサービスが始まって、コンテンツビジネスを取り巻く環境が大きく変わった頃でした。その後カバーアルバム6 femmesを出す頃には大きな失恋をしたこともあり、長く暮らした東京を離れて北海道の実家に身を寄せ、自分を見つめ直す時期もありました。本当にこのまま音楽を続けていて良いものか、でも後戻り出来るような器用な生き方もしていないし...そんな思いを抱えながら悶々としていました。一度空っぽになったそんな時に、ラジオ番組のオーディションがあり、J-WAVE STEP ONEのアシスタント・ナビゲーターとして出演が決まりました。気づけば私はもう一度東京へと向かう飛行機の中にいたのです。

その頃からなんとなく次のアルバムタイトルは「Wild Flowers」にしようと考えていました。花瓶に飾られた上品な花ではなく、大地に根付く野の花。当たり前だけれど彼らも生きているんだよなと、その姿に妙に納得したものでした。美しいものの根元にある生の力強さ。住む場所も定まらないような根無し草の私は、そんな力強く美しい野生の花に憧れていたのかもしれません。Flowersと複数形にしたのは、そこに現代女性の在り方みたいなものを無意識に感じていたのかな。これは私のストーリーであると同時に誰かのストーリーであるかもしれないから。

そこからはとにかくがむしゃらに過ごしました。初めてのラジオの仕事、素晴らしい先輩たちの背中を見ながら、周りに助けられながら、ダメダメながらもなんとか2年間務めることが出来ました。思い返せば毎日音楽に浸りながらも自分の表現とは少し距離を置いて、色々なことを学べる貴重な時間になったと思います。そして結婚を機に信州・松本へと移住した昨年、暮らしが落ち着いてきた頃、その時は突然訪れました。「そろそろ音楽を作ろう」と。
それは春の熊が冬眠から目覚めるような、自然な直感でした。創作意欲が湧いて曲を作りたくなったとか、そういうのともちょっと違って、グラスの水が溢れるように今まで心に溜まっていたものが音楽になって溢れ出したみたいな終始不思議な感覚でした。昔のデモを聞き返したり、ギターを片手に歌い始めたり、誕生日に買ったシンセサイザーで遊んでみたり、一旦アウトプットの回路ができるとスルスルと曲ができて、3ヶ月ほどの短い間に気づけば12もの曲の種が出来ていました。私の5年間が詰まった12曲。

デモが出揃ったあたりで、元々お世話になっていたRallye Labelを離れる決心をしました。色々な環境が変化する中で、音楽について知らないことが多すぎるなと、自分の足りなさをずっと実感していました。ラジオの仕事をしたことも影響したかもしれませんが、音楽を届けるということについてたくさん考える中で、「自分の音楽に最後まで責任を持って向き合いたい」と思ったのが大きな理由です。ずっとお世話になってきたラリーの近越社長に独立を報告した際は、祝福と励ましの言葉を頂きました。ラリーのそういうところ大好きだぜ、と思いつつ、1人で歩く決心を新たにしました。若い頃は誰かに見出されることや、チャンスをもらえることがとても大切で、それは「きっかけ」という言葉に置き換えられるかも知れないけれど、そこからどういう道を歩いて行くのかは、やっぱり本人次第なのだろうと思います。こうして私は自主レーベルWILD FLOWER RECORDSを立ち上げました。

制作予算やスケジュールの管理、誰とどの曲をどうやって仕上げて行くのか、全てを1人で考えなければなりません。特にコロナ禍で色々な予定を変更を余儀なくされたここ数ヶ月、私の小さい頭では抱えきれないこともたくさんありました。愛する人の支えと信頼できる仲間に知恵を借りながら、それでも現実と向き合いつつ前へ進んで行きました。ソロ・プロジェクトである以上、すべて自分の表現であることに代わりはないけれど、ソロだからこそ良い仲間が必要だし、チームなんだよなと実感することばかりでした。ご協力いただいた皆さん、本当にありがとうございました。これから曲ごとに思いを綴っていこうと思うのですが、合わせてクレジットも記載していきたいと思います。配信で音楽が聴かれることが多くなって、手軽にリスニングできる良い時代になった反面、その裏側にいる人の顔が見えづらくなって来たなと思うことがあります。全ての音にはそれを発している人間がいて、エンジニアリングの的確な仕事があって、それぞれのストーリーがあるのです。だから血の通った良い音楽になるのだと私は信じています。noteではそこにある手触りみたいなものも記録していけたら良いなと思います。

こうして文章を書いている今、ようやく、ゆっくりと、完成した実感が湧いて来ました。本来なら最後はマスタリングに立ち会って、ちょっと豪華な出前でも頼んで、みんなで新しい音楽の誕生を祝いたかったけれど、コロナ禍でそれも叶わず。しかし、こんな時代に生まれたからこそ一生忘れられない作品になりそうです。

「自分がWild Flowers足る存在でいられるか」

これから私は何度も自分に問うことになるでしょう。
力強く地中に根を張り、飾らず、おごらず、美しくいられるように。


2020年9月1日 
sugar me  寺岡歩美

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