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夏休みと一人旅

東京の生まれなのでお盆の行事をするのは7月だ。8月の旧盆は、一斉休暇を取る企業も多い。一斉休暇を取る企業に勤めた経験がないのだけれど、一緒に仕事をしている相手がお盆に休むという会社に所属していたので、お盆は休みを取ることが多かった。

航空券代が一番高いお盆にしか休めないから、と今だったらホテル代金こみでそのお値段で行けちゃうような旅をしたこもあった。お金もないのに、、、20代のころにイタリアに一人旅で、ポンペイに向かう途中のバスで隣り合わせた大学教授の女性に、「若いうちに借金してでも旅をして新しい世界をたくさん見なさい」そう言われたからだ。なぜかその言葉は強烈に残り、覚えていた。そのとおりに、夏のボーナスは毎年航空券に消えていった。時々銀行口座も赤字になる。いま考えてみたら、恐ろしいと思うけれど、若いっていい。それでも大丈夫だと思っていた。

その後も、時々一人旅をした。正直、一人旅はつまらない団体旅行で移動している日本人観光客とは移動時間も活動時間もずれているようで、日本人に会わない。上に書いたイタリアに旅した時には、初めて日本語を話したのはイタリアについて1週間後、カプリ島で青の洞窟に乗り入れる小舟ボートを探している時だった。カゴメに勤めていてトマトの買い付けをしていて「ちょうど週末にぶつかったから青の洞窟に来たんだよ」、という営業マンの気のいいおじさん2人組。一人でうろうろしているところ、3人で借りたら安くなるし、確かあの時、舟代を持ってもらった気がする(この人たちは大丈夫、となぜか思えた。カゴメの社員だしね)。 トマトの買い付けに出張に来るなんて、世の中にはな楽しい仕事もあるものなんだ、と思ったことを今も覚えている。 カプリ島からナポリ湾に移動する船がこれまたみつけられなくて、カプリ島に住むおじいちゃんが身振り手振りで教えてくれた。イタリア語と片言の英語で。そのおじいちゃんとは、日本に戻ってからも絵葉書で何度かやりとりをした。 

危険な目にもあうし、一人だとホテル代は割高だし、しゃべる相手もいないし、いいことがない。なんで一人旅をするんだ? きれいな景色をみて「ああ、きれいだねー」、そうつぶやける相手がどんな人だって隣にいたほうがいいじゃないか。それでも旅するのは、緊張して不便にに出会うためだった、そんなことを思っていた。海外に出ると緊張する。どうにもならないことや、困ったことが起こる。(もう来るんじゃなかった)と思うことも。それでも、そうした緊張を強いられることが日本では経験できない、そう思っていた。だから毎年、一人もしくはだれかと、海外に出た。

あれから、ずいぶんと時がたち、一人旅の雰囲気を味わうのは1年に1回くらいの出張の隙間時間くらいだった。 2月から世界が変わった。今となっては旅自体すら懐かしい。 

お盆。お盆になると、旅の計画を立てていたことを思い出す。また、旅に出たい。(いつか行こう)そう思って、棚の中にしまっておいた記憶を呼び起こして旅に出よう。ぼんやりとでなくて、鮮やかなイメージにしておこう。そうすればきっと実現できるはず。









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