見出し画像

信号待ちのとき、横から来たチャリンコ小学生の通り道を空けるために1歩後ろに下がった、あのお姉さん。

タイトル通り、今日の出来事。

今日のお昼、街中で信号待ちをしていた時のこと。
僕と同じく、3メートルほど離れたところで信号待ちをしていた「お姉さん」の横から、自転車に乗った小学生が。
進路を先読みするに、おそらく「お姉さん」の前を横切って通過するつもりだろう。
「お姉さん」もそれを感じ取った。
すると「お姉さん」、小学生の通る道を広くするために、1歩下がったのだ。

『いや、タイトルを長く書いただけじゃねえか』
一応、情景を細かく書いただけです。
もう少し待って、ブラウザを閉じる手を止めてください。

なんでもないような出来事に思えるが、僕はこの瞬間から、この「お姉さん」のことがとても魅力的な女性に思えて仕方なくなったのである。

何が僕をそう思わせたのか、ズバリ、「お姉さん」が小学生が通る道を「広くする」ために1歩下がった、と考えられたからだ。

正直、別に「お姉さん」が1歩下がらずとも、小柄な小学生が通り抜けるスペースは充分にあったように見受けられた。
事実、充分なスペースがあったから、小学生もそのスペースを狙って自転車を走らせたのだろう。

同じ状況なら、多分僕はわざわざ1歩下がるまでのことはしないと思う。

でもその「お姉さん」は1歩下がった。
そこから、僕の頭に1つの仮説が浮かんでくる。

”このお姉さん、チャリンコ小学生に「ここ通っていいよ」という意思表示を示すためにわざわざ1歩下がったんではないか?”

だとしたら、である。

このお姉さん、なんて「気遣いの人」なんだ!!!!
ス、ステキだ……!!!!

と、僕は思ってしまったのである。
男(僕)の想像はさらに進む。

公共の場で、
自分も仕事中(オフィスカジュアルだったためそう推察した)でカリカリしてるかもしれない時に
9月になったとはいえまだまだ30度をゆうに超える昼下がりに
コロナウイルス予防のために暑い不織布のマスクをつけて
「お姉さん」は1歩下がってみせたのである。

男(僕)の妄想はさらに深くなっていく。

あれだけの気遣いを見せる女性だ。
プライベートもきっと、気遣いと気品に充ちているだろう。
お付き合いしてる男性がいるかもしれない、いや、「お姉さん」ほどの気遣いを見せる女性を放っておく男性はこの世にいるはずがない、杞憂!

同棲している家でだらしない彼氏をしっかりとしつけながら(自分も働いてきて疲れてるのに)、それでも彼氏の両親の前では2歩引いて彼氏を立てる、みたいなこともやってのける。

だからといって、別に彼氏に依存しているわけでもなく、会社では大きな案件のプロジェクトリーダーを任せられる主任、人望も厚い。
なのに高圧的な態度はとらない、部下の仕事に対して、「フィードバック」はするけれど、決して「非難」はせずに「改善」へとつなげていく。
なんなら流行りの音楽などは、その部下たちから聞いたりしてコミュニケーションを図るような、理想の上司の距離感を心得ている人。

身につけている物もいたってミニマル。
20代前半までは流行りのブランドを身につけてたけど、「長く付き合っていけるものを」という考え方になって物の選び方が変わった。
派手派手しい柄ではなく、10年先、20年先でも使えるような、今は少し物足りなく感じるかもしれないけれどそれが潔い、シンプルなデザインを選ぶ。
最近の嬉しかった買い物は、腕につけている80年代ヴィンテージの「ヴァシュロン・コンスタンタン」の革ベルトの時計。
別にブランドのロゴがついているわけでも、ギラギラしたデザインでもないけれど、お洒落だった祖母が着けてた時計だったから、きっと間違いない。ずっと愛せる相棒になると思って、夏のボーナスでちょっぴり自分へご褒美。
でももちろん、人には見せびらかさない。彼女は「自分だけが知っている」というちょっとした秘密さに、自分でワクワクしている、少女のような無邪気さを持っているから。

ここまで読んでくださった皆さまはきっとわかってくれただろうと思う。

「お姉さん」の魅力、
をここまで自分勝手な妄想で練り上げる男(僕)の気持ち悪さを。

でも不思議と、こういう妄想をしていると面白い気分になる。
まぁ、人に迷惑をかけずに自分の頭の中であれやこれやと巡らせている妄想だし、良いじゃねぇか、と。

ハッと我に帰ると、「お姉さん」もチャリンコ小学生もいない。

信号は、また、赤。
妄想は進んだが、足は進んでなかった。

あーやっちゃった。

でも、まぁいいか、と。

台風が過ぎてから、少し湿気が和らいで、暑いけど過ごしにくさが無くなってきているな、などと思いながら、
また信号が青になるのを待つ。

すると、何やら大学生の男の子らしき若者が、
電話で喋りながら信号へ近づいてくる。
声のトーンから察するに電話口で何やら揉めている雰囲気。

まぁ、そんなに2回も頭に引っかかるようなことは起きないだろう、と思っていたところ、僕の横まで来た男子大学生がひとこと。

「なんで一緒に写真写ってんの!?」

……んっ?

「なんで一緒に写真写ってんの」?もしかして彼女が?他の男と写っている写真を?インスタグラムの共通の知人のアカウントでうっかり見てしまった?

あーーーーーーーー。終わった。

僕はいつ家に帰れるんだろうか。

今日の出来事でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?