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テレビCMの効果を左右するオフライン編集・オンライン編集は、マーケターの終着駅だ

テレビCMの制作現場には、終盤にオフライン編集・オンライン編集というプロセスがあります。簡単にいうと、制作関係者や広告主が一緒に確認しながらその場で編集することで、オフラインで画面の合成やスーパー(字幕)、音響などを仮編集し、オンラインで各種調整した素材を全て繋ぎ合わせて本番のCMとして完成させます。

私は10年以上デジタル畑で、ここ1年でテレビCMなどのマスのコミュニケーションに携わっています。なので、この独特な現場に立ち合い、経験が浅く、まだ新鮮な気持ちでいられるうちに、思うことを書き留めておこうと思います。

私は広告主として参加していますが、どの立場であってもマーケターとして求められることは、まさにサイエンスとアートの究極の融合。今のところの結論は、マーケターの終着駅のような場所だと捉えています。

最後の仕上げは職人任せ。ではダメ?

「戦略の大枠の要件を満たすことはもう分かった。あとの表現はクリエイティブの専門家の皆さんにお任せます。」

自分は、上流の全体戦略を描く重要な役割。だから現場の職人技には口を出さない。と言う考え方もあるでしょう。違うところで汗をかいてるんだ、役割分担だ、と。

テレビCMに限らず、広告バナーなんかも同じです。クリエイターへのリスペクトがあるからこそ、細かいことはあまり口を出すべきではないと思います。

しかし、その最後の作業、表現のほんの僅かが自分の心の奥底にある消費者感覚と「何か」がズレたまま、かつ、期待通りの結果を生まなかった時は悔しいものです。要件を提示するマーケターの中にある、もう一つの人格=消費者としての感覚に刺さらないアウトプットは、大体は失敗してしまいます。

最後のプロセスはマーケター脳と消費者感覚を同時に発揮する

最後のプロセスは戦略性と消費者感覚を同時に発揮しないといけません。まさに、マーケターとして培った全てを出し切る場。そして、この場では新卒の意見も超ベテランの意見も平等。みんなが視聴者に最も近づいている瞬間だからです。立場に関係なく、自分がその場に居合わせる当事者ならば、妥協なく意見し、突き詰めるべき場です。

テレビCMの例でいえば、こんな会話が飛び交っています。

「自分はこのシーンで(意図せず)この部分に気を取られてしまった」
「前のコマで目線が左にあるから、このコマでは左にブランド要素を強くしたい」
「あれもこれも訴求を入れ過ぎていて全体的に忙しいから、ここは削ろう」
「なんとなくこの表情がしっくりこない、他のカットなかったっけ?」
「こっちを強くしたらこっちが薄まるな・・どっちを優先したいんだっけ」

こんなことを2時間くらい、長い時は何時間も、マーケター、クリエイティブディレクター、代理店さんや監督で喧々諤々とやるのです。

自分の感覚が先にあり、その理由を自分や周囲が納得できるように、サイエンスでロジカルに説明することもあれば、戦略的狙い(ロジック)が先にあり、その要件を満たすための表現技法を当て込むこともある。右脳と左脳が高速で行ったり来たりして、非常に疲れます。

自分のロジックと感性を信じ、そしてお客様が受ける印象を極限まで想像して想像して、心の底からの正直な声に耳を澄ます。そうして仕上がっていきます。

テレビCMのオフライン編集・オンライン編集は、マーケター共通スキル

そしてこれは、マーケターの大半の仕事に共通することではないでしょうか。プロダクトやサービスを作る、広告クリエイティブを制作する、値段を決める。これらは構想から企画の細かい段階までに、それぞれのプロセスやフレームワークが業界ごとに体系化されています。

私はそれら全般的になんとなく業務経験があるので、ゴールまでの山の登り方や使う言葉は結構違うよな・・と思いながらも、最後の最後はやはり顧客、お客様がどう思うか?を想像して憑依して修正を繰り返すという点では共通しています。

プロダクト開発もプライシングも、お客様になったつもりで、初見のつもりで見て、どう思うか?好きになるか?買いたいと思うか?が大事です。ここをおざなりにすると、ここまで構築してきたロジックや社内調整などの積み重ねが水の泡になります。いや、水の泡にしたくないから直視しないで失敗することもあるでしょう。

そして、最後は意思決定。えいっ!と決めます。そして世に送り出します。マーケターの仕事は一旦はここまで。終着駅。お疲れ様でした!となります。

もちろん出したら終わりではないですが、出し終えた瞬間、次のアクションがスタートするわけです。

まとめ

テレビCMのオフライン編集・オンライン編集の場は、お客様に思いを馳せ、戦略性と消費者感覚を同時に発揮すべきマーケターとしてのクライマックスなんだ、集大成を見せる場なんだ、ということをお伝えしました。

テレビCMに関わる方は多くないかもしれませんが、マーケターであればどんな業務でも、お客様の手に渡るその直前の作業の瞬間に立ち会うことはあるはずです。今回紹介したテレビCMのオフライン編集・オンライン編集という場は、まさにその象徴なのです。

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