【詩】蹴球生活

いつからか久しく
傾きが生活となってからはついに
玉蹴り遊びが日常となる日が到来したのです
 
いつまでたっても
家計の傾きは一向に改正されず
躯も傾いて蟹のごとくに歩行していたのでした
 
それでも家計の傾きはいっかな改善されず
傾いて傾いていつか
家屋の傾きにまで及びはじめ
 
風が吹き寄せるたび、波が打ち寄せるたび
おっとっと、おっとっと、と傾いた躯で
あちらこちらへ移動して
 
家屋の傾きはいつか家族にまで滲みて
かしいだ躯を四つ足でつっぱって
むなしい狩りへと猫も精を出し
 
家計と躯と家屋と家族の傾きはついに生活を支配し
波に揺れ浮かぶ家の中で二人と一匹
愛のようなボールも自然と動きだし
 
右に左に、前に後に、かしぎつづける部屋で
時にこわごわ、時にそわそわ、二人と一匹
傾いた躯でボールを蹴り合い
 
「まだ楽観してるんでしょ?生きていられるって」
女が転がして寄越すボールは時々形が歪んで
疑いや侮り、不安やあきらめのパスに見えたり、消えたりして
 
そのボールに猫は飛びついて奪い去り
前足を交互に繰り出してはドリブル
猫はいつでもわが家のエースなのです

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