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DeepLとChatGPTの出現で、翻訳家は失業するか?

私は英語ができないのが悩みの英日翻訳家。
主に、オンライン・メディアの翻訳を仕事としている。
こんな私が仕事をいただけているのは奇跡のようなものなので、納期が厳しくても、基本断らず、ありがたくお引き受けしている。

さて、翻訳家なら誰でもChatGPTの存在が気になっているだろう。
すでにしばらく前から登場している機械翻訳サービスDeepLだけでも脅威だったが、そこにChatGPTが加わり、いっそう翻訳家の将来に影を落としている。こうしたAIツールの発展によって、他の多くの仕事と同様、翻訳の仕事も奪われてしまうのだろうか?

ところで私が気になっているのは、現在プロの翻訳家が実際の仕事にこの2つのツールを利用しているのかどうか。私には翻訳家の仲間がいないので、実態がよく分からないのだ。

「翻訳大好き。こんな面白い仕事をAIにやらせるなんてもったいない!」という人ももちろんいるだろうし、「間違いや抜け漏れがあるから信用ならない」と、利用を全面拒否している人もいるだろう。逆に、新しいツールはどんどん取り入れて業務の効率化を図っている翻訳家も確実にいるはずだ。

私はどうかといえば、もちろん使っている。しかも、がっつりと。
DeepLは比較的こなれた訳文を提案してくれるので、自分で考えた表現がイマイチの場合、DeepLの訳を参考にしている。
そしてChatGPTは、文法的解釈が曖昧な場合や、文化的・専門的な背景知識が必要な場合に利用している。今のところ8割以上の確率で助けになっている感覚がある。ChatGPTがなければ誤訳していたかも、というケースもあり、もはや我が師とも呼べる存在である。

もちろん、あまりにもニッチで専門的なことを尋ねると、とんでもない誤情報を答えてくるケースはあるので完全に信用はできない。
でも、普通の調べ物をするだけなら、Google検索よりずっと楽だし、役に立っているのは事実だ。

それでは、職業的な翻訳家は不要になるのか?
私の印象では、残念ながらその可能性が高いと思う。
すでに、機械翻訳した後の訳文を正しい翻訳に修正する「ポストエディター」という職種があるようだが、やがて、すべての編集者が翻訳者も兼ねるようになるのだろう。

それにしてもChatGPTは素晴らしく、そして恐ろしい。
知的労働を肩代わりしてくれる存在がこんなに早く現れるとは。

自信に満ちあふれている方々からは、「ChatGPTに雑用仕事をおまかせして、人間はクリエイティブな仕事に集中できるようになる。そう思うと、可能性が広がってワクワクする」というポジティブな意見を聞くが、「クリエイティブな仕事って何?」と思う。
世の中に、クリエイティブな仕事をしている人が、果たしてどれくらいいるのだろう? 逆に、クリエイティブな仕事はAIがするようになり、人間は雑務や肉体労働だけするような未来の方が現実的に思える。

人類の滅亡が近づいた、と思うのは悲観的すぎだろうか?
まあ、AIの凄まじい進歩ぶりを目の当たりにするのは、恐ろしくもあるが、ワクワクするのも確かである。

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