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マンションの新たな課税を考える

さて、今回は相続税における
マンションの新たな評価方法について、
例を用いながら紹介します。

今回の改正案で、
一部のお金持ちだけではなく、
マンションに実際に住んでいる方でも
対象になり得ますので
注意が必要です。


現行のマンションの評価方法

現行のマンションの評価は、
以下のように計算します。

国税庁資料より

① 建物
 固定資産税評価額 × 1.0

② 敷地
 敷地全体の面積 × 共有持分 × 路線価等

③ ① + ②

まずは、建物部分ですが、
「固定資産税評価額」より計算します。

一般的に、固定資産税評価額は
公示価格の7割程度に調整されています。

よって、相続発生時に
現金で持っておくことに比べ、
3割程、資産を圧縮することができます。


次は、土地の価額です。

基本は、「単価×面積」となります。

まずは、単価は路線価
用いることが多いです。

この路線価は、
公示価格の8割程度とされています。

面積については、
マンションの敷地全体から
所有している敷地権の割合となります。

ここで一つ問題なのは、
マンションの敷地全体を
自分自身の持ち分で計算する訳ですが、
タワーマンションなど、
高層建物になると
持ち分を按分する人数も増え
結果として一人当たりの面積が
小さくなる傾向
があります。

このような状況から、
マンションの評価額は
低くなる傾向から
改正が行われています。

https://www.nta.go.jp/about/council/idenshi/20230622/shiryo.pdf


新たな評価方法

新たに令和6年1月1日以降の
相続又は贈与については、
以下の算式が用いられます。

ここで新たに出てきたのが
「評価乖離率」です。

評価乖離率は、以下の①~⑤を
足して計算します。

① 築年数 × △0.033 +
② 総階数 ÷ 33(1.0超は、1.0) × 0.239 +
③ 所在階 × 0.018 +
④ 敷地利用権面積 ÷ 専有面積 × △1.195 +
⑤ 3.220

上記の乖離率が1.67を超える場合に
新しい基準が適用されます。



では、一つづつ見ていきます。

築年数

築年数は、古くなればなるほど
マイナスが大きくなり
評価額が下がる傾向にあります。

1年あたり、3.3%減少する計算です。


総階数

33階を超えると、一律23.9%加算です。

逆に、33階以下だと
1階あたり約0.7%減少する計算です。


所在階

1階ずつ上がるに連れて
1.8%ずつ上昇する計算です。

よって、低層階である程、
加算率が抑えられる計算です。

敷地持ち分狭小度

マンションの敷地に対して
自分の持ち分が小さければ小さいほど
マイナスが小さくなっていきます。

自分が所有している部屋の広さに対し
敷地が何%かの割合により変動し、
割合が1%変動するごとに
約1.1%評価が増減する仕組みです。

よって、敷地に対して
総戸数が少なければ
マイナスが大きくなり
評価額が下がる計算になります。


ここからは、簡単な例を見てみます。

築年数:3年
総階数:45階
所有階:30階
マンションの専有面積:100㎡
敷地利用権:5㎡

① 3年 × △0.033 = △0.099
② 45階 ÷ 33階(1.0) × 0.239 = 0.239
③ 30階 × 0.018 = 0.54
④ 5㎡ ÷ 100㎡ × △1.195 = △0.05975
⑤ 3.220
=  3.84025

上記の例では、
最終的には「3.84025」という
乖離率が算出されました。

よって、仮に相続税評価額が
5,000万円だった場合、
5,000万円×3.84025×0.6=1億1,520万円
となってしまいます。

金額にして、倍以上となって
しまう計算です。

注意が必要なのは、
これは富裕層が節税目的で
買った場合だけでなく、
居住用で済んでいる場合でも
階数や築年数によっては、
影響があることです。


今後は、どうするか

乖離率の計算式から
変動するのは「築年数」のみです。

1年あたり、0.033下がるだけですので
1年経過する度に
乖離率を0.033ずつ下げれば
よいことになります。

よって、現状での乖離率を計算し、
1.67を超えるかどうか
試算してみましょう。


また、もう一つの変動要素は
「路線価」です。

単価の部分も変動しますので、
路線価の変動推移をチェックする
ことも重要です。

路線価は、以下の国税庁サイトより
確認する事ができます。


相続税が発生しそうなら

もし、相続税の発生が見込まれる場合は、
生前贈与や生命保険を活用して
財産を減らす等の対策が必要になってきます。

この、対策は
個々の事情により、様々です。

個々の事情にあった方法を
複数の専門家にアドバイスを受けるなどし、
対策を考えていきましょう。


まとめ

今回は、マンションの課税の
改正案を紹介しました。

一部のお金持ちだけではなく、
都市部のマンションに住んでいる場合も、
対象の可能性があります。

今後、マンションの購入を
予定している場合も、
33階未満のマンションの
比較的低層階を選ぶなどの
工夫も必要かもしれません。

いざという時に困らないよう、
早めの試算を行ってみましょう。


#日経COMEMO #NIKKEI

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