マガジンのカバー画像

短編:【スエトモの物語】

126
短編小説の物語はこちらです。 ◉毎週1本以上、継続はチカラなりを実践中!これらの断片がいずれ大蛇のように長編物語へとつながるように、備忘録として書き続けております。勝手に動き回…
運営しているクリエイター

#あの選択をしたから

短編:【思考する時、人は上を向く】

いつ誰に聞いたのか。 何かで観たのか。 『上を見れば果てしない。下を見たらキリがない』 たしか上を目指して自分なりに今を頑張れ、そんな言葉だったか。下を見て努力を怠るなという戒めだったような、そんな格言だった気もする。 近頃の鯉のぼりは、屋根より高いことはあまりない。川沿いで大量に吊るしていることもあるが、風が強い日にはくるくると紐に絡まってしまい、あまり美しくない。外国人観光客は珍しい光景だと必死に写真を撮っていたが、個人的にはどう撮影しても風情が感じられず、またその

短編:【後悔先に立たず】

人生には、少なからず後悔することがある。 僕に至っては後悔だらけの人生である。 あの時こうしていたら、あんなこと言わなければ、何でこっちを選んでしまったか… そんな後悔を忘れるには、リセットボタンを押せば良い。ゲーム機にもあるだろう「Reset」と書かれたボタンが。 人生のリセットボタン。 それは何だろう。 すべてを一度失くしてみる。シガラミというモノから解放されることで、少なからず救われることもある。仕事を辞める。旅に出る。すべての人間関係を切る。一旦、橋の上から飛

短編:【金網ごしの別世界】

一年で最も陽の長い季節。もう7時を回っているのに夕焼けが空を赤く染めていた。 片手にアルコール度数高めのロング缶チューハイを持って、飲みながら帰宅途中。ナイター設備のあるグランドから大きな声が聞こえて来る。仲間と野球練習をしており、笑いながら全員服装もラフな感じだった。 「チッ、なんで平日のこんな時間からフラフラ遊んでるんだよ!」 中の選手には聞こえない声で毒づく。 散々な一日だった。小さなミスをグチグチとグチグチとしつこく追求してくるお客対応が終わると、そのミスについて

短編:【営業電話は受け付けない】

さあ今回は私が実践している営業方法をご紹介しましょう。 「あいにく担当者は在宅ワークでして…」 近年、代表電話に連絡を入れても『担当者に直接連絡して欲しい』だの、『個人情報は教えられない』だのと、結局は知っている人間同士しか連絡を取り合うことが出来ない、負のスパイラルに陥っていると感じませんでしょうか。 一部の個人情報を違法ギリギリの手法を使って抱え込んでいた会社が幅を利かせ、公務員が持ち出したUSBメディアが泥酔と共に紛失してニュースになる世の中。個人情報が違法な高値で売