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短編:【スエトモの物語】

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短編小説の物語はこちらです。 ◉毎週1本以上、継続はチカラなりを実践中!これらの断片がいずれ大蛇のように長編物語へとつながるように、備忘録として書き続けております。勝手に動き回…
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2023年12月の記事一覧

短編:【昨日と同じ年末と、今日と違う新年】

幼い頃。実家ではコタツが出ていて、新年用のおせち料理を作る煮物の薫りが立ち込めていた年末。大掃除をして片付けを終えると、すぐに新年の用意をして、その新年のために使ったたくさんの食器や飾りなどを片付けてと、当たり前のように、またはそれが誰もが行う行事のように行われていた。 会社員となって、年末が来ると忘年会があった。会議室に集まって、関係各社から届いたお歳暮の缶ビールと、近所のスーパーで購入して来た乾き物、あるいはデリバリーのピザを数枚並べて、みんな笑顔で、真っ赤な顔をしてい

短編:【なんでそうなる?(レタス篇)】

車通りの多い交差点。その一角にあるガードレールの上に陳列されたレタス。置いてある、と言うよりも陳列、つまり誰かに見てもらいたいという感じでディスプレイされている。 2つの仮説が浮かんだ。 ひとつは大量にお買い物をした奥様が、一度エコバックの中を整頓したくてちょっとそのスペースをお借りして、ひとまず置いたことを忘れて放置されたもの。 もうひとつは、素直に誰かが落としたモノ。それを親切な方が拾い、見えるようにディスプレイした状態。ただその場合、通常レジ袋に入っていたレタスが落ち

短編:【安心を担保する】

保険というモノは、余裕がないと準備ができない。 「もしものための保険ですから…」 いま必要なモノではないからだ。 しかし保険は必要なのは理解している。 「医療保険と死亡保険がありまして…」 医療保険は、もしもケガや病気の際に貰える保障。死亡保険は、もしも死んだ際に頂けるお金。 もし死んだ時に貰えるお金…? もし死んだら、誰が貰えるお金? 「はい亡くなった方のご家族様やご契約者様が指定された方がもらうお金です」 いやいやいや、毎日ひいひい言いながら死んでるように生きているんで

短編:【無駄がある贅沢】

「ご存知ですか…電線って3本で1セットなんです…」 男性がゆっくり語りだした。 「電線、ってあの…空中にぶらさがっている電話線ケーブルの?」 「結構勘違いされがちですが、電線は電気などの電力と、通信電話にも使われているんです」 午後のこぼれ陽が差し込む昔ながらの喫茶店。向かい合う男女。 「そうか電話って電気の電に話すと書きますもんね。でも最近は家電話がめっきり減って…」 「それでもまだ、現役ですよね」 「3本1セットなんですか?」 「そうなんです、1本は上り用、1本は下り用