短編:【策士策に溺れる】
「ヒロくん、お夕飯何食べたい?」
「ハンバーグ!」
「ハンバーグかぁ…」
息子にヘルメットを着用し、自転車の後ろに座らせる。幼稚園に迎えに行った帰り道。まっすぐ前を見て家路を急ぐ母親の顔に笑顔は無い。ペダルを漕ぐ足取りも重く、早く電動アシストが欲しいと思いつつ、先にヘルメットを買わなくてはと心の片隅では考えていた。
「お肉が食べたいのかなぁ」
「お肉が食べたいけど、ママのハンバーグが食べたい!」
「ママのハンバーグかぁ…」
今日は疲れてしまって、気分的にはあまり面倒な料理をし