短編:【木の上の猫】
昨夜の雨も上がり、久々に日向であれば薄手のコートでも充分暖かく感じる、ある冬の昼下がり。たまたま入ったお店の、本日のランチが大正解で、満腹感プラスアルファーの満足感の中、公園の木々の間を歩いていた。
「あの~、あの、すいません…」
どこからともなく、中年男性の声がする。
自分の右手の方から聞こえた気もするし、後方からの気もする。
気のせいか?誰もいない。
「ちょっと、そこの旦那さん…」
やっぱり聞こえる。周りには人影はない。気味が悪い。それに私はまだまだヤングで、旦那と呼ば