すどうみやこ

大阪を中心に活動するシンガーソングライター。 noteでは小説(らしきもの)など長めのテキストを発表していこうと思っています。 オフィシャルサイト→ http://sudoumiyako.s1001.xrea.com/

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最近の記事

世界のおわりと彼女のはじまり

1 最初に星がひとつ消える夜空にかがやく星・星・星。 白いの、赤いの、オレンジの。 それぞれの色で輝く星・星・星。 あるものはひとりぼっちで。 あるものは群をなして。 空の端には半かけの月。 夜空をかたちづくる星たち。 それがひとつ―― フっと消えた。 「あっ――」 小さな口からこぼれる小さな叫び。 「星が消えたわ」 夜空を見あげる彼女と彼。 「星がひとつ消えたわ」 彼女の瞳に夜がひろがる。 「ねえ、あなたも見たでしょ?」 「ああ、ぼくも見た」 彼が答える。 「たしかに星が消

    • ギャグ大名

      第1章  萩之茶屋猿公おそろしく面白くない落語家がいた。芸名を萩之茶屋猿公という。「猿公」と書いて「エテコ」と読む。その名前からもわかるように、浪花の爆笑王の異名をとる萩之茶屋小猿の五番目の弟子である。もっとも兄弟子のうち、ひとりは若くして亡くなり、ひとりは破門になったので、現在の序列は三番目であった。ちなみに弟弟子は二人いる。高校を出てすぐに入門して十二年、この春でちょうど三十歳になった。 他にやりたいことがない、というか、普通に就職するのが嫌だったので、落語家にでもなった

      • 血のしたたる坂道

        1〈くだる〉少し疲れたし喉も渇いてきたので、おれは脚を止めた。ゆっくりと身体の向きを変え、ゆっくりと腰を下ろす。目の前にはおれが上ってきた坂道が延びていた。この坂道はおれの背後にまだまだ続いている。目測でざっと三分の二ぐらいは上ったか。 おれは背中からリュックサックを降ろし脇に置き、ワークパンツのベルトに挟んであったタオルを抜き取り顔の汗を拭った。リュックから魔法瓶を取り出す。蓋をはずしてそれにアイスティーを注ぎ、一気に喉へ流し込む。砂糖を入れすぎたようで少し甘かったが、よく

        • 夢列車正月行き

           もう 正月は 来ましたか――? すぐ背後からそんな声がした。まさかこんな時間にこんなところで声をかけられるなどと思ってもいなかったし、ちょうど煙草に火をつけ一服目を大きく吸いこんだところでもあったので、少し噎せてしまった。煙を吐きだし気分を落ち着かせてからゆっくり振りかえると、そこには黒い山高帽をかぶった小柄な男が立っていた。背は私の肩のあたりまでしかない。にこやかな表情を浮かべている。私と同年代ぐらいだろうか。見たような顔だったが、誰だかは思いだせなかった。傍らに小学生