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視界不良!中国市場に日本アニメのチャンスはまだあるのか?

2010年代の日本アニメビジネスの持続的成長に、「配信」そして「中国市場」の役割は見逃せません。

国内外の配信ネットワークの急拡大が番組需要を呼び起こし、アニメの配信ライセンス価格を上昇させました。さらに視聴が手軽な配信の普及で、アニメの人気も上昇しました。
なかでも中国の配信はコンテンツの正規化と同時進行したことで、それまでの海賊版天国のイメージを一変させました。日本アニメの巨大市場に一挙に浮上したのです。

ところがそれからわずか5年ほどで、再び中国市場が変調しています。きっかけは政府の動画配信番組への規制強化です。
まずは表現です。政治的にデリケートな部分だけでなく、暴力や品性に問題があるとされた作品が規制されます。そうした表現でより自由だった日本の深夜アニメには打撃です。
また配信前の事前検閲も厳格化される方向です。日本アニメは日中同時配信で人気を呼んだだけに、これも苦しいところです。
さらに海外番組に限定した規制も浮上しています。配信番組の総量に対する海外作品の割合に上限を設けるものです。これも日本アニメの配信数減少につながると見られます。

規制に阻まれて日本アニメは衰退してしまうでは、という危機感もあります。ただ政府の支援があってもなくても、中国国産アニメがやがて成長し、日本アニメの存在感が小さくなるのは長期的には避けられないのではないでしょうか。
そしてそれでもなお、中国での日本アニメへの関心がなくなるとは思えません。特に「ドラえもん」「ドラゴンボール」「名探偵コナン」「NARUTO」といった定番の強力なブランドはますます強さ発揮すると思われます。広く知られている作品は、みんなが知っているとの理由でより強くなるのです。少なくなった日本アニメの配信枠にも必ずラインナップされるはずです。

情勢が見えないのは、よりトレンドの影響が強い深夜アニメのような作品かもしれません。こちらは中国資本の日本進出がいま注目されています。
日本アニメのライセンス購入や、製作委員会への出資を飛び越えて、日本で中国資本のアニメを作るものです。
中国の原作で、100%中国資本、しかしアニメーション制作は日本といった具合です。これであれば映像や表現は日本アニメだけれど、国内で配信する際には中国アニメに分類できるからです。
 
しかしこれは日本側からは、アニメーション制作における日本の下請け化にもみえます。また制作のノウハウの流出が指摘されることもあります。
さらに中国側からは国境を越えた日本での制作へのクオリティコントロールに課題が少なくありません。
そこでさらに一歩進めて、中国企業自身が日本にアニメスタジオ設立する動きもあります。ただ国内スタジオでも人材確保が難しいなかで、中国系のスタジオが充分な人材を集めるのはなかなか高いハードルです。この試みがうまくいくかどうかは不確かです。
いずれにしても、2019年の中国とのアニメビジネスは極めて流動的。どの方向に進んでも不思議でない状況です。

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