見出し画像

映画興行上位にジブリ、「君の名は。」「AKIRA」 旧作アニメの力とは?

■前年比99%減も、映画興行の助っ人に「千と千尋」や「ナウシカ」

新型コロナウイルス感染症が拡大するなか自粛営業を余儀なくされたエンタテイメント産業は、大きな打撃を受けました。映画興行もそのひとつです。最も打撃の大きかった5月には主要12社の興行収入が前年同月比99%減少と、売上げがほぼなくなりました。映画興行の営業休止・営業時間の短縮などの影響です。
6月には営業再開しましたが、急な決定や座席数の制限もあり、新作映画の公開も再開されないままでした。この意外な救世主となったのが旧作アニメです。

スタジオジブリが6月26日より全国372館で、旧作『千と千尋の神隠し』『もののけ姫』『風の谷のナウシカ』『ゲド戦記』の4タイトルのリバイバル上映をしたのです。
サプライズは続きます。6月第4週の週末観客数ランキングで、1位から3位までを『千と千尋の神隠し』『もののけ姫』『風の谷のナウシカ』が独占、9位には『ゲド戦記』も並びました。3作品は8月第2週までベスト10にとどまり続けました。7月末までの4作品の興行収入は合計24億円に達しました。
4作品合計とはいえ、この環境で大ヒット並みの20億円超は大きな成果です。同時に新たな製作費をかけることなく、大きな収入を得たスタジオジブリのビジネスの巧みさにも驚かされます。

■TOHOシネマズ池袋のオープンに京アニ作品が活躍

興行を助けた作品は他にもあります。営業自粛が拡大した5月、6月に、シネコンは積極的に旧作上映をしました。その結果、興行ランキングに『君の名は。』や『天気の子』、さらに『AKIRA IMAX版』などの名作アニメが並んだのです。

7月3日には厳しい環境のなか、10スクリーンを持つ大型シネコン「TOHOシネマズ池袋」がオープンしました。新宿や日比谷に続くTOHOシネマズの新しい旗艦施設です。
しかしこの時期に公開する新作はごくわずか、そこでスクリーンを埋めるため駆り出されたのもアニメです。TOHOシネマズ池袋は、いくつもアニメ特集を組みました。今年50周年の「ルパン三世」シリーズや京都アニメーション制作の数々の作品を打ち出しました。
こちらも大きな成功になりました。「『もう1度見たい』アニメーション映画」とした特集は大好評で、当初予定の7月9日終了を7月16日まで延期したほどです。

DVDやブルーレイで多くの映画がリリースされ、さらにいつでも手軽に映画を鑑賞出来る配信が普及しています。それなのになぜ多くの人たちが劇場に足を運ぶのでしょうか。
アニメには映画館のスクリーンで作品を観たいと思わる力が特別強いのかもしれません。テレビ放送が何度も繰り返され、国民のほとんどが見ていると言っても過言でないスタジオジブリの作品からもそれは伝わります。映画館ならの魅力とは、映像クオリティや音響だったりします。さらにわざわざ映画館で観る体験そのものかもしれません。

■アニメ映画のリバイバルは数年前からの潮流

実際にリバイバル上映の成功は、コロナ禍だけが理由でありません。過去の傑作アニメの新たなかたちでの劇場公開は、昨今の潮流です。
期間中のヒット作のひとつ『AKIRA IMAX版』は、もともとコロナ禍とは別に上映予定をしていました。近年でも『ルパン三世カリオストロの城 4DX』や『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 4DX』『サマーウォーズ 4DX』といった企画がいくつもあります。今夏上映中の『機動警察パトレイバー the Movie 4DX』もそのひとつです。
応援上映や爆音上映など、昨今劇場アニメ興行のライブイベント化が指摘されます。敢えて劇場で旧作を鑑賞するのもそうした流れのひとつです。

そう考えるとコロナ禍の救世主となりましたが、その影響を強く受けたのも旧作劇場アニメかもしれません。
3月から8月はアニメ映画は公開延期で新作が減少しましたが、9月以降は逆に延期タイトルが続々と公開されます。劇場のスクリーンの取り合いは激烈です。旧作映画のリバイバル上映も暫くは減ることになりそうだからです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?