見出し画像

東南アジアで日本アニメ配信、どうやって見てるかちょっと整理

映像配信プラットフォームの普及が、海外での日本アニメの人気拡大につながったと言われています。メディアでの配信の話題は「Netflix」や「Amazon プライム ビデオ」などの米国のグローバルプラットフォームに傾きがちです。
ただ世界の国は様々。国ごとにアニメファンが利用する映像配信プラットフォームも異なるのでないか?

と、思って調べ始めたら、これが大変……。
NetflixやAmazonプライム ビデオ、アニメ専門の「クランチロール」以外にも、海外で利用されているサービスが次々にでてきます。どうやら2020年のいま、世界のアニメ配信は一大活況を呈しているようです。
世界全部は無理と判断、今回は東南アジアに絞って日本アニメを届ける映像プラットフォームの動向をまとめてみました。

■東南アジアでも強い「Netflix」

東南アジアの人口は、ASEAN10ヵ国だけでも軽く6億人を越えます。これはヨーロッパやラテンアメリカとほぼ同じサイズ。経済成長が高いこと、日本カルチャーの受け入れ素地があることから、アニメ業界には急激に魅力的な市場になってきました。
ただアニメ配信については、国境と言語が多いいっぽうで、既存の企業も新規参入も多い激戦地です。寡占化が進む米国や中国に較べると趨勢が決まっておらず、しばらくは主導権争いが続きそうです。

現時点で有力なのは、やはりNetflixです。どの地域でも名前が挙がってきます。全世界(中国・北朝鮮を除く)で定額課金見放題の同じフォーマットで展開するのが強みです。Amazon プライムビデオも世界展開していますが、Netflixのほうがより強く感じます。
クランチロールはアニメ専門で世界展開していますが、東南アジアではアメリカやヨーロッパほどの存在感はないようです。アニメの海外配給権は地域ごとに分けて販売されることが多く、クランチロールは北米や北中南米限定のタイトル数も多いことに理由がありそうです。

■人気急上昇、台湾資本「Muse Asia」評価される理由

東南アジアで長年日本アニメの配給ビジネスをしてきた企業が配信事業に進出するケースもあります。なかでも存在感が大きいのが「Ani-one」です。香港を拠点にアニメ配給をするメディアリンクが東南アジアの広い地域に展開します。『僕のヒーローアカデミア』や『呪術廻戦』『D4DJ』などのタイトルがあります。
ここ1、2年で急に注目を浴びているのは「Muse Asia」です。運営は台湾の木綿花国際。長年、日本アニメビジネスを手がけてきましたが、2019年からシンガポールに拠点を設けて東南アジア向けに配信ビジネスに進出します。

「Ani-one」と「Muse Asia」の特徴は、自前のプラットフォームを持たずYouTubeチャンネルを活用することです。毎シーズンの最新作が全部とは行きませんが、全て無料で視聴できる正規配信としてファンから支持を受けています。
ビデオ・オン・デマンド(VOD)では、「AniPlus Asia」が存在感あります。グループ本社は韓国の放送局、シンガポールに拠点を置き東南アジアでアニメの放送事業を展開してきましたが配信ビジネスにも関心を寄せているようです。『進撃の巨人』、『カードファイト!! ヴァンガード』といったタイトルが見られます。

■アニメ専門で1ヵ国のみの事業は厳しい?

アニメ配信サービスには様々なタイプがあります。分類方法のひとつは、幅広いジャンルを広く揃える「一般サービス型」とアニメに特化した「専門型」です。
アニメがジャンルのひとつである一般型に較べて専門型のほうがファンニーズに密着したラインナップが多いのが魅力です。一般型はより広い層にリーチできるでしょう。

配信地域による分類もできます。世界中にサービスを提供する「全世界型」、東南アジアの複数の国で展開する「リージョナル型」、ひとつの国・地域に特化した「ローカル型」の3つになります。
例えばNetflixは「グローバル/一般サービス」、Ani-oneは「リージョナル/アニメ特化」になります。

ただ日本のバンダイチャンネルやdアニメストアのような、一ヵ国でアニメだけを専門にする「ローカル/アニメ特化」のサービスは東南アジアには見当たりません。一ヵ国だけでアニメに特化したサービスをするには市場がまだ小さ過ぎるのでしょう。

■ローカル資本健闘するも、厳しい現実も

「ローカル/一般」では、東南アジア地元企業の配信サービスも活発です。ベトナムでは大手映画会社Viet Film Company 傘下の「Danet」、タイでは「MONO max」やアプリを使った「FLIXER」、マレーシアでは「ASTRO GO」「DimSum」といったサービスがこれに当たります。いずれも広いジャンルを取扱いますが日本アニメも少なくありません。

ただし競争は厳しいようです。インドネシアでは地元大手の「HOOQ」が2020年に経営破たん。マレーシアから東南アジアに広く展開していた「iflix」も2020年に経営に行き詰まり、中国資本のテンセントに売却されました。

■中国大陸系プラットフォーム、東南アジアを目指す

中国大陸系ではテンセントだけでなく、愛奇芸(アイチーイー)もiQIYI internationalを通じて、東南アジアに進出済です。配信タイトルには多数の日本アニメが含まれています。香港のコングロマリットPCCW資本の「Viu」も東南アジアで存在感があります。

アニメ関係者に注目されそうなのが、中国で日本アニメ配信を得意としてきた「ビリビリ」の動向です。2020年12月にタイとマレーシアの進出を発表しました。日本アニメビジネスの豊富な経験とニューヨークと香港での株式上場もあり資金力も豊かで、今後台風の目になりそうです。

こうした結果、東南アジアでは現在米国系、中国大陸系、東アジア系(韓国・台湾・香港)、地元資本が入り乱れています。サービス形態も定額課金、無料配信、都度課金と多様で、有力タイトルは散らばっています。どの作品が、どこで、どういったかたちで配信しているのか情報をまとめるのに、アニメファンはかなり大変そうです。ただひと昔前の、見たくても見る手段がないといった状況ではなく、充実したアニメライフを過ごしているのではないでしょうか。

■出遅れる日本、逆転するには

こうしたなかで残念なのが、配信ビジネスにおける日本企業の存在感の薄さです。日本アニメに特化した配信サービスでは欧米での出遅れを指摘されてきましたが、東南アジアにおいても主導権を握れていないのは残念です。

そのなかで各国のファンサイトで、サンライズの運営する「GUNDAM.INFO」の海外向け動画配信がしばしば言及されているのに気づかされました。またファミリーアニメに特化した日本の「Animelog」の名前も挙がっています。
いずれもYouTubeを活用した無料視聴が評価されているようです。YouTubeの活用は、急成長を遂げている「Muse Asia」と「Ani-one」とも共通します。現在の課題の解決の糸口のひとつなのかもしれません。

思わず長くなってしまいました。
世界の配信サービス動向はかなり複雑かつ変化が激しく、理解に不十分なところがあるかもしれません。
こんな情報があります! ここ違うのでないか!といったご指摘ありますとありがたいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?