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モチベーション低下の兆候を見逃すな!

私の体感ですが、おそらくは一度低下してしまったモチベーションを元の状態に引き上げるのは簡単ではないのは誰にでも共通できるものではないでしょうか。それどころか相当に至難の業だといえるでしょう。

とは言え私は、感情と思考を切り離す訓練をずっと続けてきたので、よほどの「怒り」や「諦め」に支配されない限り、モチベーションや感情の起伏によって、行動のパフォーマンスが大きく変化しません。イライラしていても、ソワソワしていても、俯瞰した自分が活動そのものをコントロールしてくれます。

ですが、それでも一度モチベーションが下がったり、マイナス感情に支配されると、それらを払拭するのは簡単ではありません(あくまで、仕事のパフォーマンスに影響が出ないだけで、精神的にはつらいですし、コントロールできているわけではないのです)。


通常は、そう言う状態に陥ってから何とかしようとしても、相当難しいと思います。そこで、モチベーションが実際に低下してしまう前に、その低下を防ぐようにしなければなりません。

そのためには、モチベーション低下が始まる兆候を見逃さないようにします。

プロジェクトの進行に伴い、チームには内部(社内の他部署、同じ部署内の他グループ、上層部など)からも、外部(顧客や関係者など)からも様々なストレスがかけられます。正直、「みんなが一番楽して、それでも要求を達成できる」ようにちゃんと考えているので、邪魔しないでほしい…と思っているのですが、どうやらそうは問屋が卸さないようです。

結果、多くの場合で、そうしたストレスが原因でモチベーションが低下しかねない状況になります。こうした状況をそのままに放置していると、当然ですが、実際にモチベーションが低下してしまいます。そうなると、普通の人であれば、スケジュールや品質に致命的なダメージを与えかねません。

なので、そのあたりをうまくコントロールするのが、管理職やマネージャー、そしてリーダーの対人スキルの見せ所です。

もしも、チームやメンバーにストレスがかかっている状況だと(間違っててもいいので)認識したなら、モチベーション低下の兆候がないかどうかを仔細に観察し、たとえ小さな兆候であっても見逃さないようにします。すなわち

 「ヒト・モノ・カネ・情報」の「ヒト」

を管理(監視・コントロール)するということです。

仕事を依頼、指示、命令する側の人は、される側の人に対して、その状況の把握と調整を行う義務があります。そして、それを行わないことを、無責任な『丸投げ』と言います。そうはならないようにしなければなりません。また、それ以上に重要なのは、される側の『納得』を引き出すことです。

人は納得しさえすれば、大幅にストレスを低下させます。ここで必要になってくるのが「なぜ、そうして欲しいのか」と言う論点を軸にした説明責任(アカウンタビリティ)を果たすことです。これを行い、おおよその納得が引き出せれば、大抵の場合は精神的摩擦が低減されていることでしょう。

また、監視と言っても、別に四六時中、ずっと張り付いてみていなければならないわけではなく、マイルストーンを設けて、定点観測をおこない、状況を評価すればいいだけです。お互いの人間関係にあらかじめ危険性が無ければ、週1程度の観測で充分です。評価も、本人たちに報告を求めるのではなく、あくまで静かに観測するだけ。

他には、定点観測のほかに機微をモニタリングする意味で、コミュニケーションを増やしておくといいでしょう。依頼した側から接点を持つとしても日々他愛のない雑談などを用いて、彼らの反応や表情を伺うだけでも色々なことがわかります。日頃から、お互いの考え方を理解しあえるように、些細なことでも会話コミュニケーションを成立させておくと、

 「〇〇さんは、こういう時には□□する人」

と言った、人格や思考の理解がお互いに深まるようになります。様々なシチュエーションごとに行動予測ができるようになると、ストレスを与えない仕事の降り方だけではなく、接し方や励まし方、喜ばせ方なども見えてくるようになります。退陣スキルの高い人ならば、接した初日のうちにある程度は相手のキャラが読めているのではないでしょうか。

そして、メンバーの誰かのモチベーションが低下しそうな兆候を見付けた場合は、素早く「ストレスと切り離す」or「ストレスを克服させる」対応策を考えて実行し、実際に低下するのを防ぎます。

人の心にも鮮度のようなものがあるので、極力見つけた瞬間から即行動に移さないと、こうした精神性の問題は、進行が表面に現れにくいうえに、その速度は圧倒的で、気付いた時には腐りきって手遅れ…と言うことも珍しくないので注意が必要です。

たとえば、チームのメンバーが、リーダーに不信感を持ったとします。

説明もなく命令だけしていたのかもしれませんし、説明はあくまで一般論や周囲、顧客の事情だけであって、メンバーへの気遣いが一欠けらもなかったのかもしれません。あるいは、いくらリスクを提言しても聞き入れられず、大きな問題が起きたら、メンバーの責任にし始めたのかもしれません。

しかし、この一度抱いてしまった不信感は、即日解消しないと、1日…2日と経過すればするほど、頑なで深い溝になってしまうことでしょう。しかも、1人そうした現象が発生したら、他の人にも伝播している可能性まで出てきます。精神性の負荷が重い環境というのは、「GKBR」と同じで

 「1匹見つけたら、10匹はいると思え」

と言うような存在です。ストレス源となる人物がいたとして、それがある特定の誰か1人だけにとってのストレスになっている…と言うことは原則として起こりえないのです。必ず、同じ被害者があちこちに派生しているはずです。

学生時代のいじめであれば、ひょっとすると特定の1人だけに限って被害が及ぶ…ということがあったのかもしれません。神戸教員のいじめ問題でも、やはり特定の誰かだけが被害に遭っていたと思います。いじめはターゲットを極端に絞ってコソコソと行われるものですから、そう言うものかもしれません。

ですが、通常のビジネスにおいては、同僚同士であっても、上司と部下の関係であっても、特定の誰かだけがストレス被害を受けると言うことはまず無く、ストレス源となる人物を中心に関わるメンバー全体に蔓延してしまっている可能性が高いですし、被害を受けている当人だけでなく、それを傍観している人にもストレスを与えることだって珍しくありません。

こうした問題は「気長に」と言う選択肢が存在しません。

それに手遅れになるまでの病状の進行速度もとても速いものです。もしも兆候を認識してしまったら、即、モチベーションを低下させる原因をつきとめ、次にそれを解消するための対応策を考え、ただちにその策を実行しましょう。

そもそもストレス源と言うのは、大抵の場合

 人間関係による、言ってみれば「人災」

が原因となりますので、もしもメンバーにモチベーション低下の兆候が見られた場合は、その前後の密接な人間関係を洗い出すといいでしょう。

このとき、当人やチームには原因を明示し、その後の方針や展望を伝え、その上で対応策を実行します。また、当のメンバー同士だけではどうしても対応できないと判断すれば、チームとして(チーム全員で、または一部のメンバーで)対応することも必要です。

対応策は、一般論的、抽象的、あるいは精神論的なものではなく、常に具体的で実際に実行できるものでなければなりません。手っ取り早いのはジョブローテーションによって、メンバーの入替えや席配置の変更、あるいは任せる仕事の内容を変更するといった手段ですが、組み合わせを変えたから確実に被害が無くなる…と言う保証もありませんし、ストレス源となる人はローテーションでも同じ問題を起こす可能性があるため、よほどの勝算が無ければ、実行しない方が良いかも知れません。

他にも「評価方法を変え、メンバーに周知する」とか、「役割と責任を与え、ストレス源となる人の日頃の行動を改めさせる」とか、「ルールを設け、ストレス源となる行動の自由を奪う」とか、方法は色々あると思います。

ただし、こうした対策を講じる際に、ストレス源から被害を受け、ストレスを溜めているメンバーに一方的に(説得などを用いて)我慢を強いることも、ストレス源となる人だけにターゲットを絞って何かを改善させることも、原則NGです。

一般に、ストレスは内的なモノではなく、外的な要因で発生するモノです。当該メンバーではなく、メンバーを取り巻く環境や仕組みを改善しなければ、根本的な解決には絶対に辿り着きません。理想は全員巻き込み型の施策なのです。

とは言え、全体的、大雑把な対応策ではなく、状況に応じたきめ細かな対応策となっていることが大事なので、巻き込む範囲が大きければ大きいほど難しくなっていく…と言う問題もあります。

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