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生産性向上においてまずやるべきこと

それは

 「すべての従業員がROIを意識する」

ことです。

ROIとはReturn On Investmentの略で、"投資対効果"といいます。
直訳すると成果 (Return)が 投資(Investment)の上(On)にあるということです。つまり分数を表しています。R/I=ROIということです。

たとえば、「10000円投資 (Investment)したら、いくらの成果 (Return)があるのか?」これを考える指標とするのがROIです。

20000円のReturn(成果)があれば、ROIは2/1=2ということです。

みなさんは1時間あたりいくら会社から投資してもらっていて、いったいいくらの対効果を出しているのでしょう。

これが"1"を下回ると赤字と言うことになります。もしもチーム全員が"1"を下回れば、プロジェクトそのものが赤字になります。利益を生み出すと言うことは、このROIが常に1以上でなければならないということを意味します。

「プロフィットセンター」という言葉があります。

プロフィット(profit)とは"利益"のことを指しますが、一般的に企業そのものが利益を生み出すことはありません。

「およそ企業の内部には、プロフィットセンターはない。
 内部にあるのはコストセンターである。
 技術、販売、生産、経理のいずれも、
 活動があってコストを発生させることは確実である。
 しかし成果に貢献するかはわからない」

P.F.ドラッカー

企業は、コスト(経費)を生み出すだけです。
顧客がお金を支払ってくれて初めて売上が生まれ、その売上とそれまでにかけた経費の差額がプロフィット…つまり利益になります。

ゆえに、プロフィットセンターは常にお客さまの中にあって、私たちがかけるコスト(経費)に対してお客さまがどれだけ支払ってくれるのか?でプロフィットが決まると言うわけです。

そのためには、常にROIを意識していかにコストをかけずに成果をあげられるかを考えながら業務に取り組む必要があります。


ROIは生産性の指標でもあります。

たとえば「1時間投資したらいくらの成果があるのか?」という事を導き出せます。1時間の会議をしたときに参加者の時給を合計したり、その会議時間に営業活動ができた場合の期待売上などから投資が計算できます。

そして成果は、その1時間の会議の内容から計算できます。

重要な決定ができれば、その会議の成果は大きかったといえるでしょう。それを金額換算してROIの値が大きければ大きいほど投資対効果、つまり生産性が高いということです。

逆に小さければ小さいほど、生産性が低いということになります。

投資が10000円で成果が10000円未満、たとえば成果が9000円とするとROI=0.9になります。10000円投資すると9000円しか返ってこないので1000円損をします。

投資したお金が減るので、投資したくないですよね。
このような会議などはしないほうがいいということがわかります。

 「すべての従業員がROIを意識する」

ということは、自分の1時間の労働時間はROIが1以上であったのかを常にチェックして仕事をするということです。

ROIは分数なので、R(成果)を大きくすることとI(投資)を小さくすることのうちのいずれか1つあるいはそれらの両方を行うことで、ROIの値…つまり生産性が向上します。

具体的には、

 同じ1時間を使うのであれば、より成果を出せないか。
 同じ仕事をするのであれば、より短い時間でできないか。

を従業員1人ひとりが意識して、実行するということです。

 

考えてみてください。

実力が未だ身についていない新人であればともかく、必要な実力が伴っているベテランであれば給与水準に見合ったパフォーマンスを出すことは最低限の条件となっているはずです。

基本的に給与水準の大半は、労働時間に比例して支払われることになっていますので、同じ役職・役割でROIが0.5の人と1.5の人が同じ給与となることは不公平感を生み出します。

あまつさえ、部下に「あれもやっとけ」「これもやっとけ」と言って自分自身のROIは大してないのにどんどん評価されていく上司を見て、まともに働いている部下は何を信頼して仕事をすればいいのかわからなくなるでしょう。

対策としては、ROIの成果に着目するところから始めます。

なぜなら仕事の成果は、必要なスキルのうち最も低いスキルに影響されるからです。

たとえば、コンサルティングなどの提案上級職には「ヒアリング力」「プレゼンテーション力」「クロージング力」という3つのスキルが必要だとします。

それぞれ10点満点中5点レベルのスキルレベルが必要だとします。あるメンバーのスキルレベルが、ヒアリング力3点、プレゼンテーション力5点、クロージング力8点だとします。

コンサルティングの結果はどうなるでしょうか。

プレゼンテーション力は5点なので問題ありません。
クロージングは8点なのでかなりのレベルです。
しかし、ヒアリング力3点に足を引っ張られてお客さまから聞き出すべきことも聞き出せず、結果的に3点レベルの売上しか出せない…ということになりかねません。

これはビジネス書のベストセラー『ザ・ゴール』で有名なエリヤフ・ゴールドラット教授が提唱している「制約条件理論」によります。制約条件理論では、プロセスの最も弱い部分(制約条件)を強化することで、成果を高めることができます。

上記の例でいえば、「ヒアリング力」のスキルが5点まで強化できれば、売上を効率的に上げることができるのです。制約条件理論に従って、強化すべきスキルに絞り、そのスキルを向上させることができれば、成果が大きくなり、ROIつまり生産性が高まるのです。

プロジェクトチームでも同じです。

大抵は最もスキルの低い人にフォーカスして基準やルール、標準化などを検討します。最もスキルの高い人に基準を合わせても誰もついてこれないからです。

だからといって、最もスキルの低い人に基準やルールを定めていては、スキルの高い人のパフォーマンスが最大値化できず、コスパが良くありません。

ですから平均と最も低い人との間に基準を設け、その基準より低い人は教育や育成などを通じてスキルを底上げしてもらうとともに、全体的な平均値があがればあがるほど、基準も見直していくのが理想とされているわけです。


もう1つ、ROIの成果に着目して生産性を高める大切なポイントがあります。

それは「やらないことを決める」ことです。
つまり、ROIが低い…効果が小さい仕事をやらないということです。
よくある話と思われがちですが、本当にこれを実践できているでしょうか。

目の前にたくさんの仕事がある。
どれから手をつけてよいかわからない。

あるいはある仕事をしている途中で、別の仕事がやってくる。
どれを優先するのか決めかねているうちに、時間だけが過ぎていく。

「あぁ……1日が48時間くらいあればいいのに」
「私の仕事の優先順位、誰か決めてくれない?」

そのようなことを思った経験はないでしょうか。

ところが周りを見渡すと、段取りよく仕事をこなす先輩社員や同僚社員がいることに気づくかもしれません。そこで段取りのよい先輩に相談してみると「仕事の優先順位をつけなさい」とアドバイスをしてくれることが多いようです。やるべき仕事をリストアップして、優先順位の高い仕事から取り組むようにアドバイスされるわけです。

ちなみに、私は常に思っています。
しかし、私は改善できた試しがありません。

なぜなら、私の仕事は1ヶ所から降りてくるものではなく、あるいは1ヶ所から降りてきたものだとしても、そのどれもに対して他に抱えている仕事などおかまいなしにすべて依頼する人や指示する人が期限を設定し、優先順位を勝手に決めて持ってくるからです。

きちんと、依頼する仕事を管理してくれる人がいれば、あるいはそれらの優先順位をこちらで決めさせてくれればこうした問題は起きません。

しかし、依頼者や指示者が勝手に決めてくるのです。これでは私自身にコントロールする権限を与えていないのと同じですから一生改善できません。

ですが、私のように指示系統が乱立しているような立場でない限りは、たいてい仕事の優先順位をほんの少し調整するだけでなんとかなります。

もし仕事が重複したとしても、顧客・上司・間接部門のいずれか、あるいは上司と調整するだけで基本的に解決できるはずだからです(上司には、ヒト・モノ(ヒトの仕事)・カネを管理・コントロールする責任が与えられているため)


大半のビジネスパーソンは(正しく)優先順位をつけれずに仕事をしています。

「そんなことはない」と思うかもしれませんが、概ね事実です。
もちろん本人独自の優先順位があるケースもあります。

たとえば、「依頼を受けた順番」「急ぎの順番」などを優先順位として仕事をしている人です。これらもある意味優先順位ですが、これは正しい優先順位でしょうか。

もちろん、あなたが新入社員や派遣社員であれば、依頼を受けた順番で段取りよく業務をこなすことで十分かもしれません。

しかし、あなたが社会人歴数年以上の若手~中堅社員で「依頼された順番」「思いついた順番」「やりたい順番」などに仕事をしていたとすれば、それは順番をつけただけで本来の意味での正しい優先順位はつけられていないといえるでしょう。

正しい優先順位をつけることができれば仕事の生産性は少し向上します。

しかし、それだけではその効果は限定的です。
もちろん優先順位をつけないよりはつける方が生産性は向上します。

とはいえ、繰り返しになりますが、

 優先順位をつけるだけでは、生産性は大きく向上しません

優先順位を決めるだけでは、優先順位の低い仕事も結局は「やる」からです。つまり、優先順位の低い仕事に対しても限りある時間を使ってしまうのです。

たとえば、「今日は時間があるので、優先順位の低いこの仕事を片づけてしまおう」といった具合です。そうするとやった仕事とかかった時間は、順番を変えただけで結局は当初の計画と同じになってしまいます。生産性はまったく上がっていないことになるのです。

正しく優先順位を決めることに加えて「やらないことを決める」、そして「その仕事をやらない」のです。

そうすると、その「やらない仕事にかかる時間」をほかの優先順位の高い仕事に振り向けることができます。

ただしやらないことを決める際、思いついた順番に「やらない」というのでは困ります。大事な仕事なのに、思いつく順番が遅かったのでやらないというのでは生産性向上以前の話です。

仕事の生産性を向上させるためには、やらないことを決める。そして「やらないと決めたことは、たとえ時間があっても絶対にやらないこと」です。

ここまで話をすると、少し反応が分かれます。
「絶対にやらないのは難しい」というのです。

不思議なことですが、自分だけ暇にしていたり、定時になって早く帰ったりすると周囲に対してバツが悪いと感じるようです。そして時間があると、優先順位が低くて「やらない」と決めた仕事もついついやってしまいがちです。そうすると前述したように生産性は絶対に上がりません。


ところが、一部の人に「そもそも優先順位の低い仕事などない」という考え方があります。

ある側面では正しい意見かもしれません。

そもそも大抵の仕事というものは「やったほうがよいかやらないほうがよいか」と聞かれれば、大半の仕事は「やったほうがよい」ものが多いでしょう。この点に疑う余地はありません。

しかし、この反応をする人は重要な観点を忘れています。

 人一人にあたえられる時間も、
 そして会社の資源もすべて有限である。

ということです。限られている人、モノ、金、時間を重要な仕事にだけに集中して取り組む。これが時間の有効な使い方の最大のポイントです。

これが理解できない視点の人は、

 「財布の中には1000円しかない。
  しかし、ステーキも食べたいし、すしも食べたい。
  天ぷらだって食べたいに決まってるし、
  デザートがなければ話にならない」

と言っているのと変わりません。

人・モノ・金・時間とはすなわち『リソース(資源)』です。しかし限られたリソースを最大限有効活用するという観点が抜け落ちているのです。そしてこの観点が抜け落ちている人が無理にマネジメントをすると、足りないリソースの中でそれでも成果を上げさせようとして、一番簡単にコントロールできる"時間"を無いところから打ち出の小槌のように増やそうとします。

そう、つまり残業です。

会社側(上司側)が指示して課す残業と言うのは、会社側(上司側)が限られたリソースの運用・監視を見誤ってしまい、コントロールを失敗させた結果として発生するもの(個人が、失敗や日頃の努力が不足したことによってその挽回のために費やす残業、あるいは生活残業などは別)です。

「やらないよりはやった方が良いかもしれない。
 しかしROIは1未満である。
 本当にやった方が良いのか?」

本当に重要な観点はココです。

どんなに聖域化された仕事であっても常に見直し続けなくてはなりません。

ROIが1未満と言うことは、確実に会社にとって投資対効果が低い…場合によっては赤字化している業務になっていると言うことです。ROIを1以上に引き上げる努力や改善も無しにただただ押し付けるだけでは、実施者のモチベーションもあがらないうえに逆に損失しか出てきません。

従業員やメンバーの負担や不満を無視してまで、指示した人の自己満足のためだけに延々と同じ方法で続ける意味はありますか?

仕事そのものには意味があるのかも知れませんが、今実施している方法・手段に固執する意味が無いであろうことはわかると思います。どんな仕事であっても自分にとってやりたい方法・手段を選択するのではなく

 ①常にROIを意識すること
 ②ROIに着目して制約条件をコントロールすること
 ③そしてROIに着目して「やらないこと」を決めること

この3点をしっかりとおさえておけば、自ずと生産性は向上することになるでしょう。

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