見出し画像

視野を広げてピンチに強い「頼れるエンジニア」になろう

想像してみてください。

納期が遅れてユーザー企業の担当者に対応しなければならない。

あなたは、そんなときどうしますか?

なかには「サービスです」といって10〜20ページ程度ですむような取扱説明書を、必要以上に詳細にして数百ページにも渡る超大作につくりかえて納品するエンジニアがいます。

しかし「それって読まれるの?」というような分厚い取扱説明書が本当にお客さまに喜ばれるものなのでしょうか。

受けとったお客さまは「スゴイですね」というお世辞のひとつはいうかもしれませんが、机に積まれた(しかも″いいわけ″のためにつくられた)分厚い書類を見つめ、「さて、どうしたものか」と困るのが関の山でしょう。

しかし、当のエンジニアは

「相手も喜んでくれているし、
 お詫びとしてはお釣りがくるくらいの出来だろう」

と悦に入っているかもしれません。

このように、ただの自己満足と言うことにも気づかず自分の固定観念という「枠」にとらわれすぎると、相手や周囲を置いてけぼりにしたサービスになってしまいます。

私は、研修やOJTの様々なシーンで説明することがあります。

テーマのひとつに「コミュニケーション」の実習があるのですが、なかなかその効果や意義に気付いてくれる同業者がいないので最近はあまりしなくなりましたが、以前行っていた

 「多数の事実と視点の存在」

について説明します。

たとえば、1円玉を見ないで描く実習。

たいていの人は数字の書いてある裏面を描きます。
木の模様が描いてある表面はなかなか思いだせないようです。

ところが50~100人にひとりくらい長方形を描く人がいます。

1円玉を真横から見た図を描くのです。1円玉はひとつです。普通の人は裏と表の2面までは気がつきますが、側面に気がつく人は非常に稀です。

このような「枠」にとらわれない視点を持っている人は緊急事態に強いという特徴があります。ものごとを複数の視点からとらえることができるということは、問題が起きたときに複数の代替案を思いつけるからです。

しかも、周囲でも考えるようなことだけでなく、まったく別の視点から新しい解決法を見つけ出すかもしれません。

一歩間違えれば「屁理屈」と言ってバカにされてしまうようなことですが、世の中の殆どの人が他人を蔑むときに用いる「屁理屈」とは要するに"一般論しか考えられない自分たちの体裁を整えるために用いている"ケースの方が多いのです。

なぜなら、「屁理屈も立派な理屈で、道理としては筋が通っている」…と言う点をまったく見ようとしていないからです。

確かに、その場において「屁のような」理屈かも知れませんが、それはあるシチュエーションにおいてのみ有効な言い回しであって、多角的に見れば屁理屈も立派な理屈の一部であると言うことを見ようとしません。

「自分たちが気付けなかったものだから」と言う自尊心の側面もあるのでしょう。

トランプの七並べやUNO、大貧民などを思い起こしてください。

あの手のカードゲームと同じく「対処できるカード」をたくさん持っているといざというときたくさんのカードのなかから状況に合わせてチョイスできるため、そういう人は常に有利に行動できます。

逆に閉じた常識に捉われて、自分たちの選択肢を狭める人はそれが有効な井の中であれば必要十分なのかもしれませんが、一歩社会の外に出ると対応ができません。

ビリ人生まっしぐらと言えるでしょう。

たとえば、このままでは納期に間に合わないという問題が発生したとき。
視野が広い人は

  • 残業をいとわず絶対に納期に間に合わせる

  • すぐに使う機能だけに限定して稼働させる

  • 運用面でカバーする

  • スケジュールの組み合わせを再配分する

  • 納期そのものを見直す

といった程度であれば即座に解決策を提示できるのです。

しかし、カード(解決策)のなかにはほかのカードと組み合わせなければ使えないものもあります。

たとえば、残業をして納期に間に合わせる場合は、

 「協調して仕事をするためにメンバーを説得する」

というカードと組み合わせることが必要です。
また、そのカードを有効に使えるようにするためにも日頃から

「メンバーとは信頼関係が築けるように、
 普段からコミュニケーションを心がける」

と言ったカードを事前に手配しておく必要もあるでしょう。

機能を限定して対処する場合にも、お客さまが何を必要としていて、何が不要なのかを判断するために「お客様の心を察する」「お客様の最重要課題を理解しておく」というカードとの組み合わせが必要です。

このように多彩なカードを持っていれば、組み合わせを変えるだけでさまざまな問題に対処できるはずです。視野の広いエンジニアならプランをいくつも用意できるようになるのも容易なことでしょう。

こうした観点は、

 「ヒト(状況や想い)」
 「モノ(案件の状況と確度の高い見込み)」
 「カネ(収入と支出)」
+「時間(残り時間と要する時間)」

という多角的な側面で見ようとしない限り、絶対に身につきません。

絶対。

100%です。

システムトラブルの対処法は、答えが「たったひとつしかない」ということなどまずありえません。状況に応じてさまざまな答えがあります。

 「ああ、そんなやり方もあるのか」

と、普段から狭く見ることが仕事だと思い違いをしているエンジニアには対策が思いつかないことでしょう。

こうしたカードを増やすには自身の経験に加え、経験者の話を聞くことが大切です。飲み会などがあったらできるかぎり参加して、ほかのエンジニアの武勇伝を聞けばいいのです。

 「そのときどのように対処したのですか?」

と質問すれば、相手は喜んで教えてくれます。

もし飲み会にいかなくても、「日経コンピュータ」などの雑誌でよくやっている

という特集や関連書籍を読んだとき、サラッと流し読みするのではなく、

 「このトラブルが起こったとき、自分だったらどうする?」

というシミュレーションをしてみることもいいでしょう。

そして何か気がついたことがあれば必ずメモを取る。
メモは読み返さなくてもかまいません。

人間の頭は優秀ですから、書いたことは忘れても気づいたことは頭のどこかに残っていて必要なときにハッと思いだせるようになっています。それに書いた内容も情報の永続化が行われるわけですから、いつでも確認可能になりますよね。

私の場合、こうしてnoteに書いたりするのもその一環です。

このような努力を続けていれば自然と視野が広くなり、問題が起きたときも冷静に対処できる「頼れるエンジニア」になれます。

特にこういう能力は、現代のIT業界全体を見回しても保持している人はゼロではありませんがあまりいるものではありません。かと言って、頼れないエンジニアがリーダーになっても当然リーダーシップをとることはできません。

だからこそ、こういう

  • 誰でも身につけられる(才能に依存しない)

  • いつでも身につけられる

  • コツコツと積み重ねるだけで身につく

  • 何度でも再現できる

ような能力は、誰にとっても敷居が低いのでオススメです。
(しかも、かなりレアな能力なうえに、ほぼ永続的に再利用可能です)

いただいたサポートは、全額本noteへの執筆…記載活動、およびそのための情報収集活動に使わせていただきます。