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仕組みでミスを防ぐ

人がやる以上、「必ずミスは起きる」と自覚しましょう。

起こさないように注意することはできても、"絶対に起こさない"と言うことはあり得ません。残念ながら人間が不完全な生き物である以上、今後もミスを撲滅することはありません。

だからこそミスを無くす、あるいは減らすため、『人』に依存しなくて済むように『仕組み』をつくることが大事なのです。

これを否定する人は、その人も周囲からありとあらゆるIT環境を取り除いた状態をイメージしてみてください。IT…なかでもソフトウェアは、この人間が構築した『仕組み』を体現させたもののことを言います。それらITシステムの存在そのものを否定するようなものだと考えてみましょう。そもそもシステム(system)という言葉には「しくみ」という意味も含まれていますしね。

仕組みに頼らず人の能力や気力に依存するのは、過信か堕落のどちらかでしかありません。だから、それがわかっている

 頭がいい人は、仕組みでミスを防ぐ

ことを最優先にします。「人」に依存しません。
これに対して

 普通の人は、「ミスはない」「ミスは根絶できる」と思っている

という差が付くことになります。

では、たとえば次のようなシチュエーションをイメージしてみてください。

「ある男性が、気の迷いで浮気をしてしまいました。
 もちろん本気で裏切ろうと思ったわけではないのかもしれません。
 本気かどうかは他人の私たちからは窺い知ることができません。
 ですが、ことが発覚し、男性自身も心底反省しているようです。
 『もう二度と浮気しない』と皆の前で断言しています。」

この経緯に紆余曲折はありません。シチュエーションはこれだけです。みなさんは、この男性は「今後絶対に」「100%の確率で」異性からいかなる誘惑があったとしても「二度と裏切ることはないだろう」と断言できますか?

いかなる誘惑であってもです。

世界一の絶世の美女からアプローチがあるかも知れません。そうでなくても彼にとってどストライクの異性だったらどうでしょう。「黙っていれば大丈夫」なんて悪魔のささやきがあるかも知れません。それでも、彼は絶対に浮気を二度としないと信用することはできるでしょうか。

裏切られても後悔しない…というつもりで『信頼』はできるかもしれません。ですが、裏切られないことを確証できる『信用』は得られないでしょう。

そう、「人」の意識を根拠とすると、ミスは再発する可能性をゼロにできないのです。


常にどんな時であってもミスや不慮の何かしらが発生することを想定して、そのリスクへの対処法を予め考えておくことは大切です。

しかし、一つひとつの仕事に対処法を用意しておくのは大変です。すべて頭のなかに入れておくには限界がありますし、メモに残していても何か起きたときにすぐ探し出せるとは限りません。

そこで、頭がいい人は対処法を『仕組み』に組み込むことを考えます。
仕組みに組み込むというのは、

 ・ルールや制度を変える
 ・暗黙の了解を明文化する
 ・帳票を見直し、入力ミスをなくす
 ・手作業で行っていたものを自動化する
 ・プログラム上でチェック機能を追加しミスを防止する

といったことです。これによって確実に失敗を減らし、自分以外の他のメンバーにも役立ちます。社会が、国が、企業が、ルールを策定し、手順を明確にし、その中で人が生きていく環境を構築していく姿を見てもわかるように、「人」に依存した方法は決して採りません。

たとえば、私たちの日常行っている「仕事」に焦点を当てた場合、ちょっとした入力ミスを減らすためにはそもそもミスが起きにくいシステムを構築することが重要と言われています。

お客さまに提出する「見積書」をつくるような場合を考えてみましょう。

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ExcelやWordのような汎用ソフトで、商品名、型番、価格などを毎回手入力していたら、ミスは必ず起こります。

 ・過去の見積書を流用して、見積日の日付が過去のままになっていたり
 ・品名に略式名称を書く人がいたり
 ・「〇〇一式」とまとめてしまって、元の商品が分からなくなったり
 ・単価欄に誤字脱字があったり
 ・金額欄の計算が間違っていたり
 ・"数値"欄にカンマ区切り文字を入れたり入れなかったり
 ・合計金額の計算が間違っていたり
 ・合計金額欄は税込みか税抜きかで人によってまちまちだったり

こうしたミスが絶対に起こらないようにするのを、一切の仕組みに頼らず実現することは可能でしょうか?

…無理ですよね。

紙やExcel、Wordと言った入力形式であることはあまり関係ありません。「人」がフリーフォーマットの様式に手入力すること自体が問題なのです。

ミスをしないためには、商品を予めデータベース化(マスタ化)しておいて、品名を(入力ではなく)選択形式にし、人が選択さえ行えば、型番や価格が自動で入力され、計算も自動で行われるようなシステムをつくっておくのが一番です。

なぜ世の中でIT化が求められ続け、その恩恵として私たちが仕事にありつけているのか、それは

 ・楽をする(自動化する)=効率化を図る
 ・ミスを減らす

ためです。
その結果、生活を豊かにするためです。

そのために豪邸がいくつも建つような高い金を払ってまで、私たちにエンジニアリングを希望しているわけです。この本質を忘れた時点でITエンジニアとしての死を迎える…と言っても過言ではありません。

もちろん専用のシステムを構築すれば一番確実ですが、時間もコストもかかりますので現実的ではありません。しかし、「Excel」や「Access」といった一般的なソフトでもデータベースはつくれますし、マクロや関数などを駆使すれば多少工夫するだけでミスを防ぐことはできます。

頭がいい人は、手の届く範囲のものを駆使して様々な仕組みを構築していきます。

安易に「〇〇使えばいいじゃん」と口先だけで取り繕ったりはしません。普通の人はどうしても目先の仕事が優先になるので、こういった手間を避けがちです。過去の進め方や文化、風土を継続することが仕事だと思っています。過去の実績にすがって仕事の進め方を見直すことすらせず、仕組みを軽視するのも一般的に「普通の人」の特徴と言えるでしょう。

ただ、暇をみながら一度つくればラクになるし、すでに社内でそういうシステムが存在していることもありますので、上司などに聞いてみるといいと思います。

そのうえで上司のチェックを経て承認をもらえば、単純なミスはなくなります(ただし、上司が何も見ずにハンコだけ押すことが日常になっている場合は、要注意ですけど)。


次に、仕組みだけで対応できない部分です。

今日では複雑な計算や処理はほぼコンピューターがやってくれますので、私たちが直面する私たち自身のミスの多くは「ケアレスミス」ということになります。

頭がいい人はこのケアレスミスを防ぐために、「人」を過信することなく、たとえば次のようなチェックを習慣づけています。

ダブルチェックをする

基本的なことですが、

 「仕上がった仕事を、元データとつき合わせるなどして自分で見直し、
  さらに自分以外の人が見直す」

という手法です。厳密にはダブルチェックでなくても構いません。ただ作成した人が主観的な思い込みのまま進めなくてもいいようにすることが求められます。通常は何度か丁寧にセルフチェックを行えば誤字・脱字といったミスは防げますので、簡易な社内文書などではそんなに神経質にならなくてもいいかもしれません。

しかし、絶対にミスが許されない案件や公式の社外文書、お金が関わる書類など、ちょっとしたミスが損害につながったり、会社の信用を落としかねないようなケースではセルフチェックには限界が来ます。

そこで「自分以外の人にも客観的にチェックしてもらう」という方法が出てきます。

作成者本人のチェックではどうしても"思い込み""解釈誤り"によるミスを見つけることができませんので、ダブルチェックのような手法が有効になってくるのです。ただし人に見てもらう時間を捻出しなければならないので、余裕をもって仕事を進めることが必要となります。

とはいえ、ダブルチェックそのものは完璧な対策ではありません。

もし、同じ会社、同じ組織、同じチームのメンバーとダブルチェックを行う…と言うのであれば、それは「1人でやるよりは多少マシになる」程度と考えてください。

なぜなら、同じ部署の同じような仕事をする人たちの間で行われる場合、チェックの仕方や観点が似通ってしまうからです。

チェックの順番、チェックの観点、チェック対象箇所、etc.…個人としてもある程度のルールがあるかも知れませんが、最初に配属され、初めてチェックをするときに学んでから、多くの人は同じ方法でチェックしていると思います。しかしそうなると、ほとんどの人のチェックの質が同じように似通ってしまうのです。

こうなってしまうと、ダブルチェックをしても致命的なミスを完全に防ぐことはできません。


違う方法でチェックをする

計算ミスなどのチェックは、やり方を変えて同じ答えになるかチェックするとよいでしょう。仮にダブルチェックをしたところで、まったく同じ確認方法になっていれば2人でやっても3人でもやっても結果は同じです。複数回チェックをするのであればチェックの仕方を変えなければなりません。

たとえば、

 「電卓で行なっていた計算を表計算ソフトで行なう」
 「表計算ソフトの計算式を別の関数を使って計算する」

あるいは、単純な計算式なら「結果から逆算して同じになるか確認する」もいいでしょうし、上から順番に確認していたものを「下から順番に確認する」というだけでも目線が変わって精度がグッと向上するはずです。

思い込みにとらわれているときは、何度やり直しても同じ結果になってしまうことが起きがちです。ですから、違うやり方でも同じ結果になるかを確認したほうが速くて確実です。


チェックシートを活用する

決められたルーチン業務に関しては、確認すべき項目をチェックシート化…すなわち機械的にチェックしてしまえるようにすることです。「人」に依存したままだとどうしてもチェックそのものの品質にムラが出ます。

 「前回の方が集中力が持続した」
 「今回は冴えていた」

と言った気分、体調などが複雑に関与してしまって仕事の質が一定化しないことが予測されます。こうした課題を克服するには、簡素的であっても「しくみ」化してしまうのが一番です。

その中でも最も簡単で最も効果が高いのが、チェックシートを用いる手法です。これだけでチェックシート上の確認事項であれば、漏れをなくすうえに再利用性が高く、毎回同じ品質を保つことができるようになります。

しかし、チェックシート自体が属人性を助長させるような内容では意味がありません。「正しく記載されていること」なんてチェック項目があると、それを見た読み手の読解力・理解力次第でなんとでもなってしまうからです。

「再利用性が高く、毎回同じ品質を保てる」チェックシートにするためには

 ①具体的であること(形容表現を用いないこと)
 ②測定、または監視できる内容であること
 ③複数人が読んでも、同じ解釈となる表現であること

が求められます。そう、つまりは高い「文章能力」が必要なのです。

逆説的に言えば、普通の人というのはこうした仕組みを検討することもなく、何度も何度もケアレスミスを続けている人、あるいはケアレスミスが続く組織を容認している人…ということになります。


仕組み化すると、楽になる

たとえば、お客さまと会議をしたとします。
私の場合、お客さまと何かしら「決定事項」を作る場合は

①必ず議事録を書きます。
 (「議事録を書く」と言うルールを自分に課します)
②およそ1日待って、相手が議事録を送ってくれれば、それを精査する。
 送ってこなければ、こちらが作っておいたものを送る。
③議事録を送る場合は、必ずTOで送る相手(会議に参加した人)より、
 上位の役職者をCCに添える(できれば部長以上)。
④メール本文には、
 「内容ご確認いただき、ご指摘等ありましたらご連絡下さい。」
 「期日迄にご連絡がなければ、議事に従って進行させていただきます。」
 等を添えて、返信の有無に関わらず、合意形成される証跡を残す。

といった仕組み(ルールと手順)に基づいて、実施しています。

①は、作りたいわけではなく(むしろ面倒くさい)、あえて記憶を探って記録化することで、記憶の定着率の確認と再定着を図ることを目的としています。そのため、相手が先に送ってきて、結果的に不要となったとしても問題はありません。

②は、議事の証跡を残し、後で「言った/言わない」問題を発生させないようにすることを目的としています。私も20代前半には同じようなミスで失敗したことがあります。それ以来、相手に1㍉も言い訳させないように証跡を残すようにしています。

③は、相手にとって「読んでいなかった」「すっかり忘れてた」と言った言い訳をさせず、ビジネスとして速やかに進行させるために実施しています。特に大手企業やメーカー様の場合、部長あたりの役職を超えるとそのキャリアパスに泥を塗られたりすることを怖がって、保身に走ろうとする人が増えます。その心理を利用するのです。

たとえば、相手の担当窓口が課長であれば、やり取り自体は窓口の課長でいいのですが、その人任せにしておくと、仮に問題が起きた場合、窓口の責任に転嫁することも可能です。

しかし、メールでCCに部長も加えておくと、その部長は知らなかったことにできず、ここで放置して窓口の課長が失敗をすると、自分にも監督不行き届きの責任がついて回りキャリアに傷がついてしまいかねません。それを嫌がって、課長に「ちゃんと返信しておけよ」「確認したか」等のフォローが入り、窓口の課長自体も無視することができなくなると言う寸法です。

④は、「見てなかった」「知らなかった」が使えそうな場合でも、それによって業務進行ができないケースを緩和するためのものです。責任を回避したがる担当はメールでこうしたやり取りに証跡を残したがらず、結果として返信しない…と言うことが多々あります。

それでも最低限、口頭や電話で「OKです」と言う人はまだマシですが、完全にスルーする人もいます。大抵は③によってスルーしっぱなしができない状況に追い込むのですが、念のためスルーされてもYESと言ったという判断基準を作るようにして、事後に問題とならないようにしているわけです。

ちなみに、口頭や電話で「OKです」などと証跡の残らない責任回避策を講じてきたときは、あとでメールでCCに色々なステークホルダーを巻き込みつつ

「先ほどの架電の件ですが、〇〇日にお送りさせていただいた
 メールにつきまして、ご了承いただいたと言うことで、
 改めてスケジュールに従い進めさせていただきます。
 速やかなご返答ありがとうございました。」

みたいな、お礼メールの体裁を整えながらも、証跡を残して逃げ道をふさぐようにします。まぁ、本当に返信も回答もなければこちらから電話してその場で回答を得るようにしたうえで、上記のようなメールを配布しますが。

これらは、都度思い付きで実施するものではありませんし、人によって変えるようなこともしません。少なくとも私の場合は、「『決定事項』に関するコミュニケーション」のアルゴリズムとして、完全に確立されており、必ず実施する仕組みの1つとなっています。

誰に対しても、基本的には同じ「仕組み」で問題ありません。いちいち考えなくていいし、人によってカメレオンみたいに大きく変化する必要もないので、結果的に、超絶楽になります。


もちろん、これらは最初からあったわけでもなく、また誰かに教わったわけでもなく、過去の失敗や苦い思いから、再発させないために試行錯誤した結果です。

結果、細かい改善は随時実施しているものの、この核ができてから、仕様、活動、方針、etc.なんでもそうですが、決定事項に関するコミュニケーションにおいて、相手に後れを取るようなことは1度も発生していません。少なくともコミュニケーションで相手に迷惑をかけるようなことも起きていません。

正直…私を相手にすると、嫌がる(面倒くさがる)お客さまは多いかも知れません。

ただし、多いのは『ずさんな仕事しかできない担当様』だけで、きちんとビジネスをしようとしてくださるお客さまにはすこぶる好評です。もし、ここで「お客さまにも色々いるのだから…」とやり方を大きく変えてしまって、相手に合わせたずさんな管理方法をとってしまうと、最初の客ウケはいいかもしれませんが、後々大問題を起こして、自分にも企業にも、そしてお客さまにも大きな損害を与えてしまうことになるわけですから、当然ですよね。

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