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馴れ合いは、時に恐ろしい毒となる

「馴れ合い」と聞いたときにどんなイメージを持ちますか?

言葉だけ聞くと、十中八九悪いイメージがあるかと思います。

私も「よくない」というニュアンスで使うことの方が多いと思います。

私自身が「よくない」イメージしか抱いていないというのもあるかもしれません。ことビジネスに関しては、私は少なくとも「馴れ合い」でしたいと思っていませんし…。

たとえば、ブラックあるあるですが、求人に

 「アットホームな職場です!」

というキャッチコピーが踊っていれば「十中八九ブラック企業」と言われていますが、それでも「馴れ合いのある職場です!」というコピーを使う企業はありませんし、見る側としても惹かれる人はまずいないでしょう。

それくらい「馴れ合い」という言葉は、一般社会の間でネガティブな印象が浸透しているような気がしています。

そんな「馴れ合いのある職場」でイメージされるのは、

 言語化されていないルールが横行し、
 権力を持つものの好き嫌いで物事が決定され、
 問題点があっても「まぁ、今のままでいいじゃん」と流される

ような、事なかれ主義的な「馴れ合う」人々にとっては居心地がよく、そうでない人たちにとっては地獄のような職場です。ですが、そこまで言っても「馴れ合い」にどっぷりつかってしまった人たちは、その居心地の良さという既得権益を決して手放そうとしないでしょう。

あああ

しかし、ここまで悪印象がある「馴れ合い」ですが、そもそもの意味はなんなのでしょう。国語辞典で確認すると「馴れ合う」の意味は下記のように記載されています。

1.互いに親しむ。
2.あらかじめ示し合わせて事を運ぶ。グルになる。共謀する。
3.男女が情を通じ合う。

1などはポジティブなニュアンスを感じますが、2はネガティブな印象があります。3は、現代で日常的に「馴れ合う」という単語を使うときに指し示す意味とはいい難いかもしれません。

冒頭に記載したように「馴れ合いのある職場」というワードに反射的に「NG」と思うのは、2の「あらかじめ示し合わせてことを運ぶ」という構図が想定されるからでしょう。

 「親しい間柄の人たちが、お互いに示し合わせて、
  暗黙の了解で物事を進める」

ということが横行する職場は、明文化・言語化されたルールよりも、親しい人同士の阿吽の呼吸が重視され、仕事上のトラブルに繋がる可能性があります。なにより、"親しい人同士の阿吽の呼吸"と言う時点で、「馴れ合い」の中にいない人から見れば、コソコソと良からぬことをしているようにしか見えません。

やましいことが無ければもっと堂々とオープンにしているべきですから、そうしない時点で「馴れ合い」が人目を憚られることだということがわかります。

ビジネス上の取り決めや線引きがなく、人の「仲がいい、悪い」で物事が進行する職場。子供の仲良しごっこと精神的なレベルが同じと考えるとゾっとします。

とはいえ、職場のコミュニケーションは重要ですし、全員がストイックに仕事だけをする職場よりも親しく会話したり付き合えたりする職場のほうが快適な気がします。しかし、ビジネスシーンと言う状況をわきまえず"親しき仲にも礼儀あり"すらできないまま、それが「馴れ合い」になった瞬間に様子が変わります。

暗黙の了解が増える

本来、ビジネスのほぼすべてにおいて必ず手順(フロー)があります。仮に属人的な仕事の仕方に身をやつしていても必ず手順はあります。なければ、何を以って企業統治できていると言えるのか証明できません。ガバナンスが機能せず、重大な『コンプライアンス違反』となる可能性も出てきます。

なかでも上場企業およびその関連会社は金融商品取引法(J-SOX法)により、内部統制を評価して「内部統制報告書」を提出するとともに、監査を受けることが求められています。

そもそも内部統制とは、『経営目標』を達成するために社員が遵守しなければならないルールや仕組みおよびその運用のことを指しており、業務やコンプライアンス、財務報告にかかわるもの等様々なものを含みます。

このうち、財務報告にかかわる内部統制がきちんと整備・運用されなければ適切な決算書が作成されない恐れがあります(つまり、不正会計、粉飾決算の温床になると言うことです)。

そのため、この『内部統制報告書』では財務報告にかかわる内部統制の整備・運用に対する評価が求められています。

そんな内部統制を把握するためのツールとして

 「フローチャート」
 「業務記述書」
 「リスクコントロールマトリックス」

があり、これらを総称して「3点セット」と呼んでいます。これら3点セットは、業務におけるリスクを把握すること、それに対する統制(コントロール)を見つけるためツールです。

ソフトウェア開発で言えば、テスト工程のチェックリストを作るためのインプット情報…すなわち、当社の業務運営の設計書群と言えるでしょう。よって、手順が明確でない「馴れ合い」業務と言うものが本来は存在すること自体を許されていません。

しかし、手順を踏むべき事柄でも馴れ合いが横行することで、暗黙の了解として済まされてしまうことがあります。

たとえば経費精算などで、本来はきちんと経理で処理するべき仕事を、部門間の馴れ合いから

 「いいよ、処理は後回しで。Aさんに言えばなんとかなるから」

などと、規定外の馴れ合いで仕事が進んでいるとどうでしょうか。

たとえば、自分たちがするべき仕事のはずなのに、馴れ合いから

 「○○さんにお願いすれば(やらせておけば)大丈夫」

と言って、自らの役割と責任で行うべき仕事を放棄して、業務が回っているとどうでしょうか。

現場のメンバーとしては「楽ができる」「すぐに回る」などの個人的なメリットがあるかもしれませんが、なにか問題が起こった場合や依頼された側で処理できなかった場合に、正規の手順を守られないリスクが高まります。

トラブルになったときに責任の所在がわからず、想定以上の大事になる可能性があるのです。

まさか、

「Aさんに言っておいたので」
「○○さんにやらせておけば大丈夫と言われたので」

と言って、自分たちの責任が回避されるとは思ってもいないでしょう。
こういう人たちを、世の中では"無責任"と言いますね。

役割に従事し、責任を果たすことで、権限や待遇をを与えられているわけですから、その責任を放棄するのであれば、さっさと権限や給与を返還すればいいのです。


特定の人のみが居心地のいい職場になる

いわゆる、"私物化"によって一部の人たちにとっての天国になるのです。

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