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アイデアは判断するものではない

イノベーションとは、姿勢であり行動である。
特にそれは、トップマネジメントの姿勢であり行動である。

P.F.ドラッカー『断絶の時代』

イノベーションを行なう組織…すなわち停滞を止め、変化・進化することを選んだ組織では集団的な風土として継続学習の空気を生み出し、それを維持することに努めます。

そしてどんな成果を生み出したとしても、それを「ゴールに達した」と考えることは許しません。「学習を継続すべきプロセス」とします。もし「ゴールに達した」などと考えてしまうと、そこからのイノベーションを引き出せなくなってしまいます。

マイルストーン…いわゆる中間地点・中継地点として目標を定めるのはいいと思います。ですが、そこを最終ゴールと定めてしまったら、ゴールに到達した時点で組織の目標を達成してしまうため、そこで組織活動は終わりになってしまいます。

もちろん「次はどうしよう」と別のゴールを定めるのもいいでしょう。

しかし、おそらくはそうなりません。

なぜなら、当初の目的に賛同し、継続できるメンバーだけがそろった組織において、別の目的を掲げてもすべてのメンバーが同意できるとは限らないからです。途中で向かい先を大きく変えれば一気に求心力を失い、組織は空中分解を起こしてしまうことでしょう。

もちろん、こうした組織の実現のためには、なによりもトップマネジメントの行動が変わらなければなりません。

ただただ既存の事業をマネジメントするだけで内容は何も変化しない組織では「判断」することがトップの主たる仕事となりますが、変化/進化/成長を求め、イノベーションを行なう組織では「アイデアの奨励」が主たる仕事となってきます。

既存業務や過去の実績などのなかには答えはありませんから、適切な「判断」なんてできませんし求めていません。大事なことは組織において主体的なアイデアや提案などが飛び交いやすい環境を作ってあげることです。

もちろん絵に描いた餅を奨励しても意味がありません。

 「なんかない?」

みたいな知性のかけらも感じない質問ばかり投げかけていても、組織は何も動けません。トップの仕事は、テキトーにアイデアを出させればそれで終わりというものではなく、アイデアを具体的な仕事の提案に転換させることでなければビジネスとして失敗です。

トップを名乗る以上は、

誰よりも部下の声に耳を傾け
誰よりも部下のアイデアに価値を置き
誰よりも部下が声を出しやすい制度や体制を構築し
そしてなによりも主体的にアイデアが出せるよう動機づけをする

といった役割を十分満たさなければなりません。想像を理解に、直観をビジョンに、意欲を結果に転換するために、なによりもトップ自身が自ら率先して働かなければ実現は難しいでしょう。

さらにそのうえで、ただのアイデアを具体的なビジネスとして取り込めるかどうかはメンバーの仕事ではなく、トップマネジメントが率先して行わなければなりません。

ところが、今日のトップマネジメントたちの多くはアイデアを出しやすい環境を整えるでもなく、とにかく無理やり出させようとし、そしてせっかく出てきた数少ないアイデアを「判断」しようとします。

アイデアをひねり出す苦労も、そのアイデアを具体的なビジネスの形にするのもメンバーができるのであれば、そのメンバーは早々に独立して自らがトップになったほうがよほどいい仕事ができるはずです。イノベーションを生み出す組織において、それではトップマネジメントの存在価値などありません。

ドラッカーは、その結果としてユニリーバの掲示板の組織図に誰かが張りつけた紙の言うとおりになるという。

 「この組織図の、根から梢へアイデアは上り、ノーが下りる」

 口先だけでは、イノベーションは行なわれないのです。

判断することを仕事とするトップは、アイデアを拒否する。現実的でないとする。
イノベーションを可能とするのは、生煮えのアイデアを体系立った行動に転換することを自らの仕事と考えるトップだけである。

P.F.ドラッカー『断絶の時代』

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