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問題は現場から解決する

現場のソフトウェア開発者は

 「やらされている感」
 「顧客に振り回されている感」
 「自分の仕事が何の役に立っているのかわからない感」

といった目に見えにくい問題に悩んでいることが多々あります。

もちろん、そこには主体性なく自己啓発もなく、ただ漫然と作業するだけで良しとする開発者もいたりするのでしょうが、それはそれとして開発者に仕事のやりがいや楽しさを感じてもらうこともマネージャーを名乗るものの重要なミッションの1つだと考えます。

しかし、それ以前にソフトウェア業界全体に漂うマイナスのイメージや雰囲気の悪さ、一種の閉塞感が気になります。昨今では新3K(きつい・帰れない・給料安い)などと言われ、業界全体に活気がありません(旧3K:汚い、きつい、危険)。

これらの問題点を解決するのに、

 「日本のソフトウェア業界の構造問題であるから
  もっと受託開発の比率を下げるべきだ」

などと言われてもどうしようもありません。
口先だけの評論家はお呼びでないのです。

問題解決のためには、もっと現場からアプローチしなくてはいけません。プロジェクトにおける主役は現場の開発者一人ひとりなのです。まず、なによりもマネージャーを過信してはいけません。

とても良い働きをして、心から現場のことを考えているマネージャーであっても、人間なのですからできることとできないことがあります。

本当に優秀なマネージャーであれば、必ずこのことをわきまえています。自分がやるべきことは自分や行い、あなたがやるべきことはあなたにやらせるでしょう。誰かに仕事を集中させるような愚は犯さないかもしれません。

しかし、優秀なマネージャーがいつもあなたのプロジェクトにアサインされるとは限らないのです。

だからといって、会社や管理職に過度な期待をしてはいけません。明確なビジョンと戦略を持つ経営者は会社を良い方向に導く可能性が高いでしょう。あなたのところの経営者はいつか理想の職場を作り上げるかもしれません。でも、今あなたのプロジェクトのためだけに手を差し伸べてくれる理由はないのです。

全てが完璧に上手く回る経営やプロジェクト、組織運営と言ったものは、どこの世界を探しても存在しません。常に課題や問題と立ち向かいながら徐々に改善していくのが組織運営です。改善するものがなくなってしまったら、その会社は存在意義をなくしてしまいます。

そして最も大きな問題は、

 体制とか、組織とか、社会とかそんなものを理由にして
 従業員、すなわち開発者自身があきらめてしまうこと

です。

「受託開発だから」
「下請けだから」
「お客さまや上司の言うことだから」

などといった受け身の姿勢が問題を大きくします。

図23

上図は30,40代ビジネスパーソンから見た『仕事ができない社員の特徴』に関するアンケート調査結果結果だそうですが、まず受け身の姿勢を変えなくてはいけません

人に振り回されて悩むくらいであれば、こちらから攻め返してやりましょう。きめ細やかなサービスで顧客満足をコントロールするのです。顧客満足を十分に得られれば、それは相手から「振り回される」被害に対する抑止力になり得ます。

また、信頼を得てリピーターになってもらえれば、慣れによってお客さまの「癖」がつかめます。これにより振り回される前に手を打つことも可能になるでしょう。

そのためには、「お客さまの問題を解決してあげること」がソフトウェア開発の本質であり、その質つまりは満足度こそが企業の競争力になると認識しなくてはいけません。

自分たちが作ったソフトウェアやシステムだけが、あなたやあなたの組織に対する満足度を決めるわけではないのです。

図22

顧客満足は品質・コスト・期限(納期)といった「結果として評価できるもの」(「測る」評価)だけでなく、人としての信頼感・組織としての安心感・共に頑張っている感などの「過程を通して評価を感じられるもの」(「感じる」評価)からも得ることができます。

品質・コスト・納期にはバランスが必要であり、一般的にはトレードオフが発生します。つまり最高の品質の物を、最短の納期で仕上げ、さらにコストを度外視して実現することは不可能なのです。

しかし、「感じる」評価にはトレードオフは発生しません。それぞれ青天井に伸ばすことができ、その分だけ顧客満足を高めることができます。


またお客さまは結果だけでなく、途中経過にも関心があります。結果的に成功するかどうかの安心感は、途中経過からしか読み取れないからです。

ゆえに、問題解決に臨むあなたという人間の立ち居振る舞いもサービスの一部であり、重要な競争力なのです。技術力や結果だけでなく、過程も重視しましょう。

これを「サービス中心主義」と呼びます。

そもそもIT企業とは、正式(日本標準産業分類)には情報サービス産業と呼び、サービス業の1種です。サービス中心主義とは、結果としての評価はもちろんのこと、過程としての評価をさらに重視し、顧客満足度を高める考え方です。

そしてなにより、仕事を全部自分でやりたいと思う。やってみる。この姿勢が重要です。「やらされている感」をなくすには自分たちでやるしかありません。

 「自分の任されている作業ではないから関心を持たない」
 「まだ若いから今は知らなくていい」

このような気持ちを切り替えてみましょう。
やるからには、うまくいくやり方を学ぶ必要があります。

見積りから保守・運用といった開発者の仕事を説明するのはもちろん、お客さまとの接し方やチーム内でのコミュニケーションについても同様です。

もちろんやり方を学んでも、実際に自分や自分のチームで全部やれるかどうかはわかりません。下請けで一部の工程を請け負っているのであれば、現実問題としてそれをはみ出した仕事をするのは難しいでしょう。

しかし、自分たちの請け負っている仕事・成果物がどうつながってお客さまに価値をもたらすのか、そしてほかのチーム・会社との関係はどうなっているのか…この部分に着目できないと、いつまでたっても自分の仕事が何の役に立っているのか思い悩むでしょう。

そして誰かにやらせるのではなく、自分で始めてみることが最も重要です。今はできなくてもいつか自分の手で全部やってみればいいのです。今のままの組織や会社でできないのなら、あなたがそれを変えていけばいいのです。

自分を変える。組織を変える。

重要なテーマです。
自分と向き合い、自分をより良く変えていくこと。
そして仲間を増やし、良い文化を培っていくこと。

これが組織の改善であり、楽しくやりがいある仕事を実現する一番の近道です。

 「Social Change Starts With You」

は、XP(エクストリームプログラミング)開発手法の提唱者、ケント・ベックの言葉です。訳すなら

 「人との関わりはあなたから変えていくのだよ」

といったところでしょうか。彼がこの言葉に込めた意味は「私ではなく、あなたが変えるのだよ!」ということです。変化とは、自分から始め、そしてまわりの人へと広げていくものなのです。他人から影響を受けるのはかまいませんが、依存してはいけません。

人は他人を変えることができません。

現状に不満を持ち、何かを変えたいと願うのであれば、まずあなたから変わり始めるしかないのです。

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