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報連相をしない人の理由

業務の先に、あるいは後ろに誰か(お客さまやメンバー、部下、上司等)がいる以上、仕事を円滑に進める上で関係するメンバー間のコミュニケーションは必要不可欠です。

コミュニケーションとは、決して「話すこと」や「聴くこと」ではありません。
それらはコミュニケーション手段のごく一部でしかないのです。

そして、ビジネスにおけるコミュニケーションを体系立てているモノこそ、

 "報連相(+確)"

です。
報連相はすべてのビジネスコミュニケーションの基礎であり、根幹をなすものです。どんな形のコミュニケーション手段を取ろうとも、かならず報連相のいずれかに属することになります。

たとえば、設計書などは作成者の頭の中を知るべき人に共有するために伝達する情報という観点から「連絡」というエッセンスを色濃く受け継いでいます。そのことを理解しない人が作成した設計書は第三者が読んでもわからないものになっていたり、齟齬を起こすように作られているはずです。

報連相を真の意味で駆使できていれば、大きな問題が起こる前に事態に気付きトラブルを未然に防止することが可能となったり、上司が正しい情報に基づいて判断できたりするなど、もたらす影響は非常に大きくなっていることでしょう。

私は、ITのI…すなわちinformationとは、こうしたコミュニケーションツールとしての『情報』のことを指していると思っていますし、その筋のプロとして磨く技術こそがITなのだと確信しています。

けしてプログラムやソフトウェアなどといった狭い見識に限ったものだけの話だとは考えていません。その証拠に、世界で最もプログラミングのスキルを有していたとしても、それ以外の能力…なかでも他人との意思疎通を図る能力が皆無であればその人は社会的に生きていくことはできないでしょうし、どこのプロジェクトチームでも厚遇されることはないはずです。意思疎通が図れないのですから、プロジェクトマネージャーやリーダーの指示や依頼も聞けない、アーキテクトの意図も解さない、好き勝手なことしかできない可能性すら高くなってしまうからです。

ビジネスの成否は、報連相の有無と直結していると言っても過言ではありません。

しかし現実は、報連相をしないことに頭を悩ませている上司や部下がたくさんいます。
ではなぜ、そう言った人たちは報連相をしないのでしょう。

まずは報連相の意味からあらためて定義します。
報連相とは、報告、連絡、相談のことをいい、それぞれの意味は以下の通りです。

・報告:指示や命令を受けたことに対し、現在の状況や結果などを伝えること
    (応答、フィードバックともいう)
・連絡:仕事の関与者に対して互いに知る必要のある情報を伝え、共有すること

・相談:解決したい問題、課題等に関して、意見を求めること
    (質問、確認も含む)

いずれもビジネスシーンでよくあるコミュニケーションです。

お客さまの要求を聞き取るだけでも"相談(質問)"は必要ですし、設計書に記載して次工程以降の担当者と情報を共有するためには"連絡"が意識できていなければなりません。提案活動1つとっても、"相談(質問)""連絡""報告"の組合せで行えているにすぎません。

逆に言えば、報連相もまともにできない人というのは、何歳になってもロクでもないビジネスパーソンである可能性が高い…ということにほかなりません。

たとえば、コンサルティングを行えるエンジニアがほしい、エンジニアになりたいと言った場合、"十分な専門知識"を修得すればあとは最適な報連相を組み合わせられるかどうかで決まります。

 ・お客さまが真に求めていることを引き出すこと(相談/質問)
 ・お客さまの求めている情報を適宜提示できること(報告)
 ・お客さまが求めている課題に対して解決できる案を提示すること(連絡)

つまり、コンサルティングができないと言うのは、

 ・お客さまが求める専門性を持っていない
 ・報連相が高い次元で使いこなせていない

と言うことに他なりません。

また、これらが円滑にできていない組織やチームは仕事のミスやトラブルが多発する恐れが大いにあるため要注意です。にもかかわらず、報連相をしない人の理由には次のようなものが考えられます。

叱られたくないから報連相をしない

完全に、他人への迷惑よりも自己保身に走っているケースです。

人間は誰しも、自分のミスで失敗したことを上司に報告するとき、相手から叱られることをイメージしてしまいます。もちろん、叱られることが好きな人間など(ノーマルな人であれば)この世に存在しません。

そのため自分にとって都合の悪いことほど、意識的に報連相することを避けようとしてしまいます。それがどんなに背信行為であったとしても、自己保身に走っている以上はどうしようもありません。

しかし、現実問題として失敗を放置し続けることでより問題が大きくなることが多くあります。プロジェクトなどが炎上し、どうにもならないトラブルになるケースも突き詰めればこの問題が見え隠れします。

都合の悪いことであっても報連相をしてもらうためには、日頃から相手に対して共に考え行動するという姿勢を打ち出すことが必要です。


責任を取らされたくないから報連相をしない

責任は、請け負った瞬間から負うものですから、その責任を最大限果たさなければ責任を取るのは当然のことです。それを嫌がるのは、無責任である証拠です。

仕事でミスをした場合、責任を取らされる場合があります。ミスを報告した後はこれ以上問題が大きくならないようにするための行動をし、また迷惑をかけた人たちに対して謝罪をすることはもちろん、場合によってはペナルティが科せられてしまいます。

ミスをした人はそのことが頭に浮かび、プレッシャーに押しつぶされてしまいます。そしてプレッシャーから逃げ出すために臭いものにふたをし、報連相を避けるという行動に出てしまいます。

このようなことを起こさせないためにも、指示者、依頼者は最終責任は自分にあるのだという姿勢を見せる必要があります。

実際、指揮命令を行った上司が部下の行動を管理する責任を負っているわけですから、部下の起こした行動をコントロールできず、出てしまった結果に対して責任を負うのは当然のことです。


自分の評価を下げたくないから報連相をしない

失敗は、記録としても記憶としても長く残ります。
さらに、昇格や賞与査定などの評価にも影響します。

評価を行うときに過去の失敗が減点材料となるのも一般的です。失敗をした人は「評価が下がる」という形で責任を取らされることを真っ先にイメージしてしまうのではないでしょうか。

しかし、失敗によるリスクを最小に抑えた後に「失敗したこと」を成功に結びつけて結果を出すことが、失敗による減点を補ったうえでお釣りが出るほどの加点につながります。

実際、1度目に起こした問題と言うのは「出来れば起こしてほしくない」という本音はあるものの、初回だからこその経験もあって仕方ないと言う側面もあります。だからこそ「2回目以降にどうやって再発防止するか」「どうやって周囲にも起こさせないようにするか」という取組みを行い未来の成果に結びつく活動ができる人間はとても貴重なのです。

逆に、どんな些細な失敗であれ、公にしようとせずに何度も繰り返す人は自身を改善する気が無い人と言うことです。そういう人は、問題を起こすたびに周囲や上司、企業に損害を確信犯的に与えていると言うことですから、評価が下がるのは当然のことです。

たとえば上司は、部下にそのことを言って聞かせ、なんでもかんでも減点を恐れて報連相をしないようなことが起きないように働きかける必要があります。


自分で解決できると思っているから報連相をしない

たとえば、責任感の強いタイプや自意識過剰なタイプの部下は、上司の手を借りずとも自分で仕事を完結できると考える傾向があります。

 「自分で何とかしなければならない」
 「こんなこと自分だけで何とかなる」

という気持ちになり、自己完結してしまおうとするのです。

その部下は、失敗の裏に大きなリスクが潜んでいることをちゃんと理解できていないケースが多いかもしれません。

ミスが周囲にも飛び火してその結果大勢の人に迷惑をかけてしまう、会社に大きなダメージを与えてしまうようなことに気付かずに突っ走ってしまいます。あるいは、同じようなミスを他でも起こしかねない情報を共有しようとしないと言う側面も持ち合わせています。

自己完結しかしない人と言うのは、周囲とのコミットメントをとっていないということですから、実は独りよがりとなっていて周囲に対して何も良い影響を与えない可能性を有していると言うことでもあるのです。

そうならないためにも、上司は

 「相談することは恥ではない」
 「報連相も重要な仕事なのだ」

ということを言って聞かせ、部下が報連相をしやすい環境を整えてあげる必要があります。

実際、私も20代の後半…30にもなろうかというころには、上司が面倒くさがっていたとしてもありとあらゆることをエスカレーションする癖をつけました。20代のころにそれで苦労した…というのもありますが、その姿勢はいまだに薄れていません。

若年層の頃からそこそこ自分で調べ、できるだけ他人に頼らず自ら解決することばかりしていましたが、自分がリーダー/マネージャーをするようになってからは解決できなかった時のインパクトや解決するまでの流れを早期に周知・展開することで、上司が判断しやすく、動きやすくするようにしたり、周囲が同じ危機にさらされないように最大限配慮するようになりました(まぁ、それでも何もしてくれない上司や、何も得ようとしない同僚はたくさんいましたが)。


報連相をするほどの問題ではないと考えている

報連相が大事ということは分かっていても、この程度のことまで報連相をする必要があるのかと迷うのも事実です。

「些細なことまで報連相をして忙しい上司の手を煩わせたくない」
「こんなことまでいちいち言ってくるなよと言われてしまうのではないだろうか」

という気持ちになり、極力報連相をするのを控えようとしてしまうのです。

しかし、報連相をするべきなのかどうかを判断するのは、上司の役目です。本当は必要だった報連相を部下が個人の勝手な意思で「必要ない」と判断して上司の知るところになく、その結果として大問題に派生してしまったりすると目も当てられません。

判断や決断には相応の責任と権限が伴うのだということを一人ひとり理解するべきです。

報連相がなかったがために取り返しのつかない事態を招き重い責任を背負わされるよりは、些細なことまで報連相をされ時間を取られる方が上司にとってはマシなことです。上司は判断する責任は自分にあるのだということを部下に理解させる必要があります。

ちなみに私は「考える/悩むくらいなら、反射神経的に報連相する」と決めているので常に考えそうになった時点で思考を止めて報連相するようにしています。それもまたリスクマネジメントの一環ととらえているからです。


報連相のやり方が分からないから報連相をしない

どのタイミングで、どんな風に報連相をすればよいのかが分からず、スムーズに報連相を行うことができない部下もいます。特に新入社員や転職したての社員にそのようなケースが多いのではないでしょうか。

この原因は、上司や先輩社員と部下の圧倒的なコミュニケーション不足です。
あるいは企業に人材育成の重要性を理解している人がいないのかもしれもしれません。

上司から必要なコミュニケーションを取り、日常の中で報連相をするパターンを確立してあげることが必要です。

部下が勝手に報連相を学ぶことはできません。

仮に外部セミナーや書籍などでノウハウを手にしたところで、実際の上司やリーダー、先輩社員との情報共有が密に行われていなければどの程度までを報連相すべきか、判断できません。それを新人や若年層に「空気を読んで行え」と言うのは酷と言うモノです。


上司のことが嫌い・信頼できないから報連相をしない

報連相の重要性は十分理解していても、上司との関係性が悪ければ報連相をしてくれないケースがあります。まぁ、そんな感情論で情報連携をしない人がまともな社会人とは絶対に呼べませんのでそのまま放置する組織もどうかと思いますが、実際にそういう人もいます。

これは仕事の進め方やマネジメントの方法に、部下が不満を持っていることが原因です。この状況を放置してしまうと、関係性は更に悪化していき、確実に仕事に支障をきたすので注意してください。

このようなケースに陥ったときは腹をすえて部下とよく話し合い、不満の素となる問題点を解消し、信頼関係を再度構築していくしかありません。

そもそも部下のパフォーマンスを最大値化できる環境を整えるのが企業や上司の至上命題のはずです。売上や利益を伸ばすことではありません、というか経営層や上司自身が売上や利益を直接上げることはありません。それらは部下たちが上げてきてくれるものです。

にもかかわらず、部下に不満を持たせるような…言い換えるなら部下の邪魔になるようなことしかできない企業や上司に存在価値はあるのでしょうか。

ただ話し合いをしただけでは収まらないことの方が多いでしょう。また、話し合いの場では売り言葉に買い言葉とならないよう冷静に話をし、喧嘩にならないようにしましょう。

そして、そのためには『主観的』な発言は極力避けることです。

 「(俺は)○○だと思う」

では話になりません。個人的感情に従っているだけではそこにお互いが納得できるような根拠がないために必ずもう一方に妥協を強いることになります。これでは、一方的に従わなければならなくなるだけで、部下としてはさらにボルテージが上がるだけです。余計関係が悪化するだけですので、オススメしません。

こうした話し合いの場では、常に冷静な論理的な会話が求められます。

 「〇〇してくれないと困ります。××が起きているからです」

と言ったように、事実に基づいた客観的な原因特定が必要になります。そうすることで、問題を生み出している側も「そうだったのか」と冷静に受け取ることができるのです。


最後に

報連相は、ビジネスの根幹をなすものです。
報連相のエッセンスを抜きにビジネスが成立すると思っている人は、まだまだ「仕事」すらまともにできていない人ではないでしょうか。普段やっているのはおそらく「仕事」ではなく「作業」です。

報連相の本質を理解していないと、殆どの業務は有効に機能しません。

実際、私がかかわってきたトラブルプロジェクトのトラブルの原因の大半が

 ビジネスコミュニケーション上の問題

ばかりだったことを鑑みれば、それがどれほど信憑性の高いことかわかると思います。

報連相は、ほとんど高いスキルを必要としません。
報連相は、新人教育で学ぶ程度の超基礎修得スキルです。
報連相は、ビジネスコミュニケーションを体系立てた1つのフレームワークです。
報連相は、優秀な社員であれば、おそらくは
     「できて当然」「できない奴がおかしい」と思っているものです。

しかし、実際には中堅やベテランでも『しない人はしない』『できない人はできない』からこそ問題がいっこうにゼロになることがないのです。

ビジネスパーソンが真っ先に修得すべき基礎中の基礎でありながら、多くのビジネスパーソンのなかで軽視しすぎるがために、正確に使いこなせていない人が多いスキルでもあります。

ナメてかかっていいスキルではありません。
というかビジネスコミュニケーションで失敗している人って傍から見ているとかっこ悪いですよね。それだけでできている人の何倍も出遅れることになります。

報連相でやり取りされる内容を、相互認識向上のための『情報』だと考えれば、IT(Information Technorogy)…すなわち、

 "情報を取り扱う技術"

のプロ集団である私たちIT業界の人間は決して疎かにしていいスキルではなく、常に磨き、常に最上級の成果となるよう働きかけていく必要があるのではないでしょうか。

もちろんITに関係のない業界でも同様のことはあると思います。

もしみなさんが部下や上司、あるいはステークホルダー(関係者)の報連相不足/誤りに頭を悩ましているのであれば、相手とよく話をし、報連相をしない(できない)理由をはっきりさせたうえで解決に導いてあげてください。

それもまた報連相を相応に修得した人にしかできないことです。


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