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有益な会議、有害な会議

"なぜ、会議をするのか?"
"その時間を拘束し、非生産的な時間を費やすのはなんのためか?"
"会議に対するROI(投資対効果)は考慮されているか?"

みなさんはきちんと考えたうえで会議というものを開いていますでしょうか。

何も考えずに行われている会議は、たしかに開催者にとっては満足できる結果を得られるかもしれませんが、それはあくまで自己満足の域を出ず、業務全体やプロジェクト全体から見ると無駄が多く、また会議に参加させている周囲に迷惑ばかりかけていることも珍しくありません。

そういう会議は案外、ほんのちょっと自分から歩み寄れば「会議以外の方法でも解決できる」ものだったりすることも多いものです。

「何も決めない」会議は無駄

世の中には「何かを決めるため」ではない会議というものがあります。

冗長で無駄な会議と、短く生産的な会議の違いはなんでしょうか。

その要素は様々ですが、根本的な決め手は「目的が明確か否か」ということです。

会議の目的とは総括するならば「意思決定」に他なりません。
問題解決であれ、企画検討であれ、そこには例外なく「今後何をなすか」のアクションプランを特定する決定があります。会議をしてもしなくても未来にすることが変わらない場合、その会議は「無駄」といいます。

意思決定することが目的で、意思決定することが会議のゴールだと認識できていれば、メンバーの選定も否応なく適切になります。その件に関係ない人を多数呼んで拘束する、といった無駄もなくなるでしょう。

次いで「何をもって意思決定とするか」も重要なポイントです。

意思決定には、現場が迅速にアクションに移れる「速さ」とアクションを成功に導くための「精度(質)」が必要ですが、速さを求めすぎると質は50点くらいの拙速な意思決定になりますし、精度を極めようとすると質としては100点に近づきますが時間がかかりすぎてしまいます。

そこで大事なのは、両者の間の「70点」の精度を目指すこと。

できるだけ速く、かつ確実性ありと思える「7割方OK」な方向性が見出せれば会議の目的を果たせたと言えるでしょう。


提案書は「型」を作って前々日に共有

では、「70点の意志決定」に最短でたどりつくには何が必要でしょうか。

まず、何を決定するかを記した"アジェンダ"は必須です。会議の招集者は事前に提案を吸い上げ、議題を明記した文書を作成する必要があります。

提案者はそれに伴って資料を作るわけですが、ここでおススメなのは提案書のサマリーを標準化することです。1枚の文書に、課題・原因・解決策・効果・実行スケジュールとコストを明記したものです。言い換えるならば、「会議体」という1つのプロジェクト活動に対する「プロジェクト計画書」となるものがこのアジェンダになります。

日頃からプロジェクトマネジメントの重要性を正しく理解しているマネージャーや管理職であればまず間違いなく何らかのアジェンダを作成することでしょう。そうしなければ雑談や議題の脱線などによって「会議体」というプロジェクトは破綻してしまう恐れがあるからです。

形式はなんでもかまいません。
ExcelやWord、Powerpointなどで資料を作るもよし、メールの本分に列挙するもよし。

自分や部下、できれば会社全体でこの型を共有し、会議前に用意するというルールを作っておけば事前に会議の内容を周知でき、当日の議論の精度もアップします。

また、提案は複数あると良いでしょう。

比較対象があれば特徴が伝わりやすく、メリット・デメリットも明確に提示できます。
1案だけでは「これだけしか考えつかなかったのか?」という印象を与えることもあるので要注意です。2案以上あれば会議体に出席する人たちの心理も「GO/NO GOを評価する」と凝り固まらずに「いずれかを選択する」という前向きな発想にも変わりやすくなります。

また、アジェンダは会議の前々日くらいに出席者全員にメールで送っておきましょう。

出席者は事前に何を話すのか知ることができますし、2日あれば直前に急遽変更が出たときの修正もできます。


意思決定者の性格に合わせた工夫をしよう

このように、会議の時間を短縮するコツは『準備』にあります。
提案者は資料作りも含め、提案の質自体を高いものにしておきましょう。最初に提示する案がわかりやすくかつ説得力のある内容でないと、無駄な質疑や堂々巡りの議論を招いてしまうからです。

大事なのは「意思決定者の性格や価値観を把握しておく」ことです。

ついつい「自分が何を主張したいのか」ばかり考えてしまいがちですが、決定するのは自分ではありません。自分自身に決定する権限があるならば会議体など開く必要がないからです。あくまでも決定してもらう立場である以上、本当に必要なのは「どうすれば決定しやすい方向に誘導できるのか」を考えることです。

意思決定者がロジカルなタイプならば、サマリーの中の「原因」や「効果」のエビデンスとなるデータをしっかり作り込むのが効果的かもしれません。

熱意を大事にするタイプならば提案の際の口調に気を配る、他部署との兼ね合いを気にするタイプならば事前の根回しに注力するなど、相手に合わせて精度の「上げどころ」を変えましょう。

また、ファシリテーションを行うのであれば事前にイメージトレーニングをしましょう。「スタートからゴールまでの時間配分」「誰にコメントを求めるか」などを簡単にシミュレーションしておくのです。

会議には得てして「話を混乱させる人」が現れて、議論を脱線させるものです。

そんなときも、ファシリテーターがゴールを明確に描けていれば「その話はあとで個別にお聞きしましょう」というふうに軌道修正できます。

そして、最大の難関となるのは「否定"しか"しない(できない)人」

このタイプの人は、そもそも会議と言う場において「意思決定」を妨げる目的があって存在している…すなわち悪意しかないわけです。実際そこまでハッキリとした目的もなくただただ否定することが日ごろからの癖になっている人もいます。そうしないと気が済まないのでしょう。

そういう人は、組織に属していることも、会議体に参加させることも問題なのですが、なかなか役職等の肩書きが隠れ蓑になってあらかじめその可能性を特定することができません。

せめて対案や改善案なども発言してくれるのであれば、より建設的な話もできるのですが、とにかく「否定」したいだけなのでそんな前向きに考えてもくれません(悪意だけしかないのか、本当に適切な理由があって否定しているのかは、「根拠が論理的かどうか」「建設的な対案があるかどうか」などで測れます)。

「他人の邪魔をしたい」
「自分の思い通りに動かしたい」
「どんなに内容が良いものであっても、自分が中心になって決めたものでなければ受け入れたくない」

という自我の強い子供のような性格が、社会的な場における活動を大きく阻害するのです。こういう人が1人いるだけで、チームや組織の成長は著しく停滞します。

また他人や他部署との連携にも支障をきたすようになり、いずれ関係する周囲はボロボロになっていきますので、チームの中核を担う担当者を決める際には能力や実力だけでなく、性格や人格(品格)も考慮に入れる必要があります。


上の立場の会議にあえて部下を出席させる

会議には大人数から少人数まで様々な規模があります。
大規模になれば拘束される人数は増えて時間もかかるものです。
また大規模になると、日程調整だけでも非常に多くのコストがかかってしまいます。

ゆえにマネージャーや管理職は、日ごろから少人数や1on1の比率を高めていけるよう工夫することが必要です。盲目的に「全員参加」型の会議を推進する人は、よほど自身の能力に自信がないのでしょう。


工夫するにはまず、

 ・自分が出る「大きな会議」の数を減らすこと
 ・「大きな会議」にしないこと

が重要です。

たとえば、「案件の全体像をつかむために初回だけ顔を出し、そのあとは部下に出席させて報告を受ける」とすれば、できた時間は部下たちとの少人数会議や報連相に使い、自分のレベルでできる意思決定の数を増やせます。

これは部下育成の視点から見ても重要です。

部下はポジションの高い人々の会議に出ることによって「上が考えていること」について学べます。出席させる際は「君が私の立場ならどうするか」と考えるよう促しましょう。

そして報告時には事実関係だけでなく部下当人の見解や提案も確認します。
これで部下は端的に情報をまとめる力と、「自分の頭で考える」スキルを得られます。
ときには自分も「自分より上の人たちの会議」にオブザーバーとして出てみるのも良いでしょう。トップや役員クラスの話し合いに触れ、自分ならどんな意見を述べるか考えさせるのです。

こうして1つずつレベルの高い場に身を置いて思考の鍛錬をすれば、部下一人ひとりの提案力が上がります。それは会議の質の向上はもちろん、組織の生産性を確実に押し上げることへとつながるでしょう。


最も費用対効果が低い会議目的は「情報共有」

会議の本質を理解していないリーダーやマネージャーは「情報共有」することを目的としがちですが、当然ここまで説明してきたように会議自体の目的にそう言ったものは最初から含まれていません。

  • 口頭で伝えるだけの手法は「記憶」「認識」に依存しかねない

  • かといって議事録ですべて賄えるなら「議事録」だけあればよい

ということにもなりかねません。そうなると、最初から「会議体」など無意味であることがわかります。議事録相当の文書・記録ですべてが賄えるのであれば、最初から文書化あるいはメール、チャットなどで済むことも多いのではないでしょうか。

つまり、

 主催者が
 個人的自我によって
 手前勝手な都合で
 費用対効果など何一つ考えず

開催しているにすぎないのです。

ただの情報共有であれば世の中に多くの手法が確立されているにも拘らず、それでも会議を情報共有の場にしたがる理由は、ただ一つ

「文書化したくない(作りたくない、面倒くさい)」

からに他なりません。

議事録等の記録に残せばそれを展開することで共有できるにも拘らず、巻き込んだ全員の生産活動時間を奪ってまで会議に呼び寄せるその理由の大半が「自分が文書を作る」ことが面倒だからなのです。

議事録を作成しているにも拘らず、それでも情報共有のための会議をする人もいます。

こちらは、おそらく「慢性的に」「形骸化した」状況を盲目的に実施しているからでしょう。考えることを止めてしまっていて、既に目的そのものが消失されています。本当に参加することに意味があるかも知れませんが、その価値を見出す努力が無い時点で十中八九ハズレと呼べるでしょう。すでに会議そのものの目的すら明確になっていないはずですから出席する価値もありません。


最後に

「無駄を省く」ことはとても重要です。

 無駄を省く = 企業コストを下げる

ことに直結するのですから当然です。一人ひとりの効果は大したことがないかもしれませんが、会議体に参加させる人数 × 年間の会議体数を計算してみてください。そしてそこに参加させるメンバーの時間当たりの単価を掛け合わせてみましょう。

ちょっと信じられないほどのコストが失われて行ってることにビックリするでしょう。

みなさんは本当にそのコストに見合った成果を出していますか?

仮に個人に課せられた売上目標が1億だとして目標達成すればそれでOKとはなりません。コストは利益率低下に直結するものだからです。しかも会議体は自分個人だけでなく他人をも深く巻き込みます。巻き込んだ人たちの利益目標に害を与えているようであれば、それはあなたのせいで企業貢献を阻害している可能性もあるわけです。

このことを理解できず、会議体を膨張させるだけ膨張させた企業…というのは多々ありますが、いずれもどこかで損益分岐点の限界を超え、事業を大きく縮小し、リセットしなくてはならなくなっています。

そうならないためにも無駄を徹底的に排除し、余計な苦労やコストを助長させないよう、一人一人が意識しながら取り組んでいく必要があるのです。 

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