基本的なスキルであるタイピングを上達させる
lTエンジニアにとって、タイピングはもっとも重要なハードスキルの1つです。タイピングか速いと、様々なトライ&エラーが速くできますので、他のスキルを身につけることにも役立ちます。それだけできてもエンジニアとして大成しませんが、これがないと大成するために必要な「時間」を効率的に取得することができません。
また不思議なことに、タイピングが速いだけで、
「できるエンジニア」
に見えるという効果もあります。まぁ、成果(アウトプット)が出なければ意味ないんですけど、スピードが上がれば時間的余裕が生まれ、その余裕を「品質向上」や「スケジュールの前倒し」にも使えるので、結果的に「できる」と思われていくことになります。タイピングスピードを向上することは、「できると囁かれるエンジニア」の近道なのです。
しかし、「別にできると思われなくてもいいし」と思っている人もいることでしょう。
本当にそうでしょうか?
客先で常駐する場合などは、最初から低く見られている状態よりも、多少下駄を履かせた状態であったとしても、良く見られておく方が何かと都合が良い場合があります。
たとえば、コミュニケーションの取りやすさなどがそうです。低い評価から始まるか、多少なりとも高い評価から始まるかによって、相手の姿勢が好意的か、懐疑的か変化します。ゲームで言えば、EASYモードで始めるか、HARDモードで始めるかくらいの違いが出ると言うことです。
ビジネスは人間関係によって成功率が変化しますので、少しでも良く見てもらうことは非常に重要なのです。
そもそもITエンジニアにとって、必ず最初に身につけるべき最も基礎的なスキルは何でしょうか?
私は、それがタッチタイピングだと思っています。
しかし、一方で意外と軽視されているスキルでもあります。たしかにエンジニアリング、ソフトウェア工学と言った"頭を使う"スキルとは一線を画します。それらに比べれば、軽く見られもするでしょう。
ですが、ソフトウェアエンジニアリングに精通した人や、ソフトウェア工学でまともに語りあえるような人なんて、みなさんの社内に何人いますか?どんなに優秀な人材をそろえているような企業でも、国内では10人もいないのではないでしょうか。
実際、新卒採用(22~23歳)と中途採用(35~40歳)の両方を採用していても、その時点で応募者のタイピングの速さなんてのは、意外なことにそれほど変わりないことがわかっています。長年、社会人をしていても学生と変わらないくらい、軽視されていることがここでもよくわかります。
最近は、学校でもコンピュータを使うのが当たり前になってきていて、学生のタイピング能力が上がってきたということもあるのかもしれません(いやどうだろう…最近はスマホだけで十分といってPC持たない学生も増えたと言うし…?)。それが、ただのネットサーフィンだとしてもです。
しかし、一方でIT業界の中で働いているエンジニアは、意外とタイピングやそれに類するハードスキルの高速化を軽視しているようです。
タイピングが遅いと損をする
タイピングが遅くて損をする事例は、挙げればキリがありません。
プログラマーであれば、当然ながらプログラムを作るのが遅くなります。事務方の業務の場合も、メールや文書を作成するのが遅く時間がかかります。
とにかく、効率がとても悪いのです。
「効率が悪い」以上に問題なのは、実践を踏まえたOJTにおいて、トライ&エラーで身につけられるはずのものが、なかなか身につかないということです。プログラミングやソフトウェアの設定方法などを身につけるためには、実際にやってみて、うまくいかなくて、やり方を変えて……というトライ&エラーが適していることが少なくありません。いわゆるPDCAの反復です。
しかし、タイピングが遅いと、このトライ&エラーができる回数が少なくなります。私たちの経験上、タイピングだけで生産性に5倍〜10倍くらいの差が出ます。トライ&エラーが5分の1の回数しかできなければ、それだけ得られるもの、身につくものが少なくなります。当然ですが、時間とともに人的価値も大きな差がついてしまうことになっていくでしょう。
効果的なトライ&エラーとは
①短サイクルでフィードバックすること
②多様な視点からの仮説を持ち、実行すること
③定量化できない変化をも捉えるために間隔を大事にすること
④常にポジティブシンキングを持ち、行動量を落とさないこと
⑤理念やビジョンを持ち続けること
また、人に教えてもらうときの印象にも影響を与えます。
技術の仕事をしていると、「ちょっと打ってみて」というような形で教えてもらうことが多いと思います。このときに、タイピングが遅かったり打ち間違いが多かったりすると、教えている相手はとてもイライラします。
タイピングが速いと仕事ができるように見える
タイピングが速いだけで得することもあります。
たとえば、お客様先でうまくいかないことがあって、呼ばれて作業に行ったような場合です。こうした場合には、技術者が作業をしている真後ろに立って、作業を見守っているお客様というのは意外と多いものです(今でも多いのかな…?昔は、システムテストや受入テストをする時、席の真後ろでお客さまに仁王立ちされて、妙に緊張してた記憶がありますが…)。
こうしたときに、タイピングが遅いと、何をやっているのかがよくわかります。ですので、お客様は、遅いことにイライラしながら、ずっと見守っているという状態になってしまいます。
これは、とても緊張します。打ち間違いが増えて、さらに遅くなるという悪循環にもなりやすいでしょう。
一方、タイピングが速いと、お客様は何をやっているのかわからないうちに、どんどん作業が進んでいるという印象を受けます。見ていてもわからないので、しばらくすると他のことをやるために離れていきます。タイピングが速いだけで「できる技術者が来た!」という印象になるのです。
お客様にじっと見られながら作業をしなくて良いので、緊張度も低く、仕事がうまくいく確率が上がります。タイピングが速いというのは、「できると攝かれる技術者」になる"一番簡単な"方法なのです。
余談ですが、私は新人の時…まだデスクトップPCが横置きで(A・Bドライブがありました)、CRTを上に置く環境で仕事をしていましたが、これを2台使わなければならないような状況でした(下はイメージ図です)。
日常業務はWindows95環境で行わなければならなかったのですが、当時初仕事として従事したプロジェクトは、Windows3.1環境で開発しなければならなかったので、それぞれ異なるPCを使わないといけなかったんです。
これを120cm幅の机に2台置くと、残り机に置けるのはキーボードは1台分が限界なんですよね。で、
机のこの引き出し部分?にもう一方のキーボードを置いて、右手と左手、それぞれ別々のキーボードを叩いて仕事をしていました。もう、ホームポジションがどうとか関係ありませんでしたね。ずっと腰を引きながら仕事していたら、3ヶ月でヘルニアになりましたけども。
ただ、おかげで片手でタイピングするのには慣れました。色々、身を削って手に入れたスキルですが、それは今でも非常に役に立っています。
どうしたらタイピングが速くなるのか?
タイピングを速くするには、練習あるのみです。一般的には、
「ホームポジションに指を戻すこと」
「正しい指でキーボードを押すこと」
が基本と言われています。自己流でタイピングを覚えてしまった人は、ぜひ基本に立ち戻ってみてください。指の運び方を変えるだけで、かなり速くなるはずです。
逆に、人それぞれ個性がありますので、「一般的な方法に固執しない方が早い」と言う人もいます(個人的には、私もそのタイプですが)。そう言う場合は、無理に標準に合わせる必要はありません。自分にとって最も効率が良いと思われる方法をチョイスするのが最短の近道です。
こうした基本を教えてくれるタイピングソフトは、インターネット上に無料で出回っています。特別なことをする必要はありません。私が新人の頃は、あまりそういうものがなかったので(あっても有料でした)、同期の何人かに声をかけて毎日、頻繁にメールを出し合うようにしました。
もちろん、仕事に支障がない範囲で…ですが、メールを多用することで、不良や欠陥などに影響も与えず、レビューなどで指摘を受けることもなく、キータッチの機会を増やしていったのです(やりすぎて、周囲から「遊んでる」なんて言われていた時もありましたが…)。
中には、キーボードの一つひとつのカバーをランダムに並べ替えて、キーボードを見ずに打つ訓練をしている猛者もいました(「N」キーと「M」キーを交換したりとか)。
そうした方法を活用すれば十分に成果があがるはずです。
タイピングの練習は、毎日することが基本です。
基本的な指の運びができるようになったら、人と競いながらタイピングができる環境があると楽しく練習することができます。タイピングのスピードが出たり、ゲーム形式で点数を競うようなタイピングソフトがありますのでこうしたもので仲間と競い合いましょう。
ソフトウェアを選ぶときには、日本語入力をするタイピングソフトよりも、
ローマ字入力の練習ができるソフトを選ぶのが良いでしょう。私たちITエンジニアは、プログラミングやコマンドラインを入力するときに、英語表記の文字を入力することが多いからです。
ちなみに、これまでたくさんの技術者を見てきましたが、タイピングの練習をしても全然成果があがらなかった人は1人もいません。
練習をすれば、必ず速くなります。
これまでの経験では、普段からのんびりしているというような人でも、練習次第でかなりタイピングを速くすることができました。性格などが影響するようなことは、あまりないようです。
コンピューターを用いたデスクワーク仕事の場合、一つひとつの仕事に対する「速さ(時間効率性)」に関わる作業は、大別すると
①準備する(情報をそろえる、考える(整理する)、決定する)
②キータッチする
③不良や欠陥が多く、修正する(手戻り)
の3つしかありません。それらにどれだけ時間を費やすかによって、完了時期が変わってきます。
①は、最初に整理してから着手するか、着手してから都度考えるかで全く異なります。後者の方がスタートダッシュできている感に包まれ、なんとなく進んでいるように見えますが、最後に先着するのは前者…と言うことも多いので気をつけましょう。ウサギとカメの童話と全く同じことが起こりやすいのです。
②は、上記に書いた通りです。訓練次第でどこまでも早くでき、訓練していない人と比べると5~10倍の差がつくこともあるスキルです。
③は、仕事の品質にかかるものです。キータッチの打ち間違い、誤字などもそうですが、間違えると、間違えるまでにかかった時間+「やり直し」「修正」と言う作業が発生するため、二重に時間を費やすことになります。できるだけ品質が高い状態を維持することも、仕事の速さに直結するのです。
どれくらいのスピードが必要か?
どれくらいのスピードが必要かという客観的な指標はなかなか難しいですが、世の中にはタイピングの資格試験などもあるようです。
たとえば、日本商工会議所が実施している「ビジネスキーボード認定試験」の基準では、10分間に日本語900文字、英語3000字が入力できれば、最高のS評価になると書いてあります。だいたい、1秒間に5文字程度の入力スピードです。
実際には、入力ミスなどもありますので、倍の1秒間に10文字くらい打てるのが理想だと思います。
これくらいのスピードで入力すると、後ろから見ていて何をやっているかわからないくらいだと言えます。10文字程度のコマンドなら1秒以内で入力が完了しますので、実行結果が多ければ画面が流れてしまいます。
また、結果を読み取って、次のアクションをするのが数秒でできれば理想的です。数秒単位でめまぐるしく凹面が変わっていくと、周囲からは何をやっているのかわからない状態になります。
こうなると、「あいつはできる(ヤツなんじゃね?)」と喝かれるような状態になるはずです。
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