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負荷のない機会から学べるものは小さい

ビジネスパーソン、特にリーダー育成の考え方に、

能力開発は「機会 × 機会に学ぶ力」と、
その「積み上げ」で決まってくる

というものがあります。
つまり、

 ①良質の機会を得て、
 ②そこから学ぶ力を高め、
 ③それが適切なインターバルで、低下しないうちに積み重なる

という三拍子が必要ということです。これらはそれぞれがバラバラに存在しているわけではなく、関連し合いながら相乗効果を発揮します。

これは何も大それたことを言っているわけではありません。
人間の『記憶力』の基本と同じことを言っているにすぎないからです。エビングハウスの忘却曲線では統計上、どの程度で人が忘れてしまうかをグラフ化しています。

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そして、忘れにくい体質にするために「忘れるより前に、反復して記憶する機会を作る(復習する)」ことが有効と言っています。③はまさに、このことを言っているのと同じですね。

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①②③この3つすべてに絡む要素で、能力開発を高めるものに非常にストレッチした課題をこなす体験、卑近な言葉でいえば「修羅場体験」があります。

たとえば、

 ・業績が右肩下がりの子会社に出向する
 ・製品リコールなどの危機対応をこなす
 ・大型システム開発のトラブル解決に当たる

などは、典型的な修羅場体験です。

修羅場体験は集中的に勉強もしなくてはなりませんから、特定のスキルをあげる上でも効果的ですが、効用はそれだけにとどまりません。

それ以上に重要なのは、通常は変わりにくい価値観を変えたり、昨今重視されるようになってきたレジリエンス(復元力、しなやかに適応して生き延びる力)を高める効果です。

修羅場体験は待っていてもなかなかやってきません。

リクルート社の旧社訓

 「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」

の精神で自ら志願することも時には必要になってきます。常にぬるま湯に浸かった状態で能力が劇的に向上する…なんてことは決して無いからです。いきなり困難な仕事がこないような職場であれば地道に結果を出し、信頼の残高を積み上げることも大事になることがあるのです。でないと、いざ大変な状況が目の前に迫った時、何一つできることはないかも知れません。

「若い頃の苦労は買ってでもせよ」

という言葉がありますが、抱えきれないほどの苦労まで経験する必要はありませんが、己を成長させてくれる適量な負荷であればまさしくその通りだと思います。

これは"自己投資"です。

別に金銭的負担でもかまいません。時間的負担でも、肉体的負担でも、心的負担でも、許容できる範囲内で、かつレジリエンスが機能する範囲内で苦労(負荷)はあった方が良いし、飛び込んだ方が良いと思います。まぁ、若いうちだけの話じゃないよってところだけは、同意できませんけども。それでも若いうちからやっておけばその後の長い人生を楽にしやすくなるのは確かでしょう。

このあたりは筋トレと同じですね。負荷を与えなければ鍛えられないのは、脳にとってもまったく同じ理屈なんです。


ただし、修羅場に飛びこむことのリスクには注意しましょう。

過度に身の丈を超えた修羅場は、心身ともに負荷がかかりすぎて文字通り「つぶれる」こともあるからです。最悪の場合はメンタルヘルスを損ね、生命にも危険がおよびます。

「これはまずい」と感じたら、過度に我慢するのではなく早めにSOSを出すことが必要でしょう。幸い、昨今はWEB上に簡単なストレスチェックのサイトなどもありますのでそれらを適宜活用してもいいかもしれません。

自分の実力を正しく認識し、適度なストレッチとなる修羅場を判別するバランス感覚が必要です。


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