見出し画像

生産性を上げられない人は「ちょっとやってみる」から始めよう

マネジメントと実務の両方を行う「プレイングマネージャー」と言う役割が世の中にはあります。私も、いつまで経っても実務を離してもらえないので、その一人かも知れません。

プレイングマネージャーのことを「実務しかできない人」を指す言葉と誤解している人もいるかもしれませんが、マネージャーと言う名目がついている以上、管理・監視・コントロールをするのは大前提であり、必須技能です。マネジメントを一切しないでプレイングだけしかしないのであれば、「マネージャー」職である必要はありません。

通常のマネージャーとの違いは、マネジメントするスコープの差や、あるいは規模、対象の違いにあるのかもしれません。この辺りは絶対的な解答がなく、企業ごとに都合のいい使い方をしていると思いますので、良くも悪くも、現場ごとに「何をマネジメントしているのか」「どの程度マネジメントしているのか」には差異が出てきてしまいます。

ちなみに、会社のマネジメントを行っている経営者でも、市場や経済の変化、国際、政治情勢などを知ったうえで、資源投資を見直したり、あらかじめ対策を講じたりしますよね。「マネジメント」であれば、それが

 セルフマネジメントでも
 プロジェクトマネジメントでも
 課や部などの組織マネジメントでも
 企業マネジメントでも

基本は同じです(じゃなかったら、未だに多くの企業でよく見かける「マネージャー→管理職→経営層」…なんてキャリアパスになるはずがありませんしね)。

セルフマネジメントでいえば、「体調管理」などがわかりやすいのではないでしょうか(他にも、アンガーマネジメント、ストレスコントロールなど色々ありますけど)。決められたスケジュール内に、与えられた仕事を達成させなければいけない中で、体調不良やインフルエンザなどに罹ったときに与える業務や会社、顧客への影響を考えて、「マスクをつける」「手洗いやうがいをする」「体調に変化を感じたら、すぐに病院にいく」など、あらかじめ対策を講じておきますよね。

役割ごとに求められている、こうした当たり前ができない人は、マネージャーとしては一人前とは言えません。

しかし、プレイングマネージャーは、通常の実務に、さらに何かしらのマネジメント業務が加わるわけですから、通常通りの仕事の進め方を効率よく改めようとしない限り、忙しさが増すばかりです。

このようなとき、マネージャーと言う立場として絶対にやってはならないことは、自分自身がボトルネックとなって組織的業務の流れを止めてしまうことです。たとえば、

 「あの人がいないから、承認印がもらえない」
 「あの人にお願いしていた資料が送られてきていない」
 「聞きたいことがあるのに、忙しそうで聞くに聞けない」

と言ったケースを考えてみてください。

もちろん、「部下への権限委譲により判断・決断機能を分散する」など解決策はいくつかありますが、他人ありきの対策では、制約条件がいくつもありすぎてなかなか思うようには進みません。

このような時、どうしても自分のタスクから離せないようであれば、ちょっとした習慣によって仕事のスピードを上げ、時間的余剰を生み出すことも選択肢のひとつとなってきます。

たとえば、複数の仕事を大量に抱えているにもかかわらず、さらに新しい仕事が容赦なく飛んできたとします。これは、「限定的な時間枠の中に、すべてのタスクが入りきらない状態」と言うよくあるシチュエーションです。こんな時に、依頼者から

 「いまの仕事の目途がついてからでいいから」

等と言われてしまうと、これ幸いとばかりに新しい仕事をいったん横に置き、内容をよく見もしないうちに優先度を下げてしまって、いまやっている仕事をとにかく片づけてしまおうと考えがちですが、実はこれはNGです。

本当に生産性の高い人、すなわち単位時間当たりのアウトプットの質が高い人は、異なるやり方をします。それは

 「新しい仕事が来たら、どんなに忙しくても、
  とりあえずちょっとだけやってみること。
  (どうせやらなきゃいけないのは同じだし、無駄にはならない)
  そして、ちょっとだけやってから横に置く」

「ちょっとだけやってみる」となぜ高速で仕事をまわすことができるのでしょう。これには論理面、心理面ともに納得のできる理由があります。

①難易度が把握できる

個人的には、これが一番大きいと思っています。

まず、「ちょっとだけやってみる」ことで、その仕事の難易度がわかります。難易度がわかれば、

 ・スケジュール的な規模感の目安になる
 ・優先度付けに正確性が出る
 ・予め売っておける準備の手に目安がつけられる

と言ったメリットを享受できるようになります。

横に置いていいものなのかどうかも判断できるようになりますし、「仕事側の絶対的な難易度が高いのか」、「自身の相対的な実力不足によって難易度が高いのか」、理由はともかく、手こずりそうであればほかの仕事とのスケジュール調整を行い、早めに時間を確保しておく必要がある…と言うことに気づくことができるようになるでしょう。

しかし、まったく手をつけずに横に置いてしまうと、いざ取り掛かったときに、

 「思った以上に時間がかかりそうだ。
  期限には間に合いそうにない」

といった状態に陥ってしまいかねません。「わかりました」と言って引き受けておきながら、何日も経ってギリギリになってから「やっぱり無理です」と言う人の多くがこれに該当します。実際にやりながら無理と思うのではなく、手を付けるのが遅いから難易度に気付けないのです。

これでは、最悪の場合「無責任」になりかねません。そうならないために、ちょっとだけやって、その経験則から予測をたてやすくするのです。


②スタートダッシュの準備ができる

「ちょっとだけやってみる」ことで、自分自身がどの程度、依頼された仕事の内容を正確に理解しているかどうかがわかります。もし、あやふやな理解だったり疑問が出てきたりしたら、即座に依頼者に確認してあらかじめ問題を解消しておくことができます。

画像2

私なら「質問票」や「課題管理表」を作っておいて、気づいたことだけとにかく列挙し、依頼者に

 「一応、〇日から取り掛かろうとかと思うのですが、
  ざっとすぐにできそうなのは8割程度でした。
  とりあえずパッと見でわからないところだけ書き出したので、
  それまでに回答欄、埋めておいていただいてもいいですか?
  細かく説明するのが面倒なところは、参考になるURLを張り付けるとか
  他に回答できそうな人の名前とか書いてくださるだけでも結構です」

とお願いしておきます。

そうせずに、手をつけてはじめて、「あれ、これどうだっけ?」と理解不足であることに気づいても、もしも依頼者が出張中や休暇中だった場合は連絡がとれるまで待たされたり、疑問を抱えたまま進めてあとから修正を行わなければならないなど、無駄な時間を費やすことになります。

 「そんなことにはならないはず」
 「そうなったら…コマル」
 「そうなったら、そうなったときに考える」

なんて言ってしまう人は、マネージャーとしては失格、あるいは未熟と言わざるを得ません。こうした取り組みを「リスクマネジメント」と言いますが、起きうる可能性と、その際の影響度を鑑みたときに、どのような手段を講じておくか?を検討するのは、マネジメントの基本中の基本です。

また、内容について理解できたら、本格的に活動するまでの間に、裏で必要な準備を進めることができます。

たとえば、必要な資料やデータが手元にないことがわかったら、それを持っていそうな人にメールや電話で依頼しておくと、仕事に取り掛かる頃には届いているでしょう。これで、自分がその仕事に本格的に手をつけるまでの時間を無駄にせずに済みます。

他にも、サーバー内のとある資料を閲覧するとか、ある拠点に伺わなければならないなんて時には、事前に閲覧のアクセス権や拠点入館の申請手続きをしておかなければならない場合もあるでしょう。そういう手続きも先に済ませておけば、いざ活動を開始しようと思った時に足止めを食うことはありません。

また、関係者との打ち合わせが必要だと思ったときには、その時点で早めにアポを入れておけば、間際になって日程調整/時間調整でドタバタしなくて済むでしょう。

「準備力」は生産性効率向上の第一歩です。


③情報への受信感度が高まる

さらに「ちょっとだけやってみる」ことで、必要な情報、関連する情報に対する受信感度が高まります。少しでも手をつけてみると、仕事の内容に興味が湧き、それ以降、関連したニュースや情報に対して「そういえば、確か…」と言うように、脳のセンサーが反応するようになります。

私は現在、品質保証と言う立場と専門的業務の傍ら、

 ・QMSやISMS、PMSなどの規格取得や更新の推進や段取り
 ・社員教育にかかる全部署との調整、および実施
 ・内部統制にかかる各種社内手続きおよびフローに定義、見直し
 ・社内業務の各種チェック(内部監査部門が他にあるのに…)
 ・外注の管理や適正価格運用の確認
 ・ソフトウェア開発プロセス体系の作成や検討

なども取りまとめているのですが、そういった作業を次から次へと押し付けられる度、ニュースの情報、官報、各社サイトのニュースリリースなどにも敏感に反応するようになりましたし、社内の目の届かないフロアや拠点の様々な噂や情報も色々入ってくるようになりました。

実際、こうしたキーワードに関連する情報は常に目端に引っかかるようになりました。

最近では、私の中で

 私「風の噂で聞いたけど、〇〇なんだって?」

が口癖になっていて

 相手「なんで知ってんの!?」

と言う掛け合いがほぼ毎週行われています。噂好き?耳年増?違います。受信感度を高めると、否応なく今まで取捨選択してきた情報のなかで、捨ててきたものが減っていくということです。そして、またその会話から詳しい情報や背景を聞き、自分の中でどんどんパズルのピースが埋まっていくのです。おかげですっかり、全国数拠点ある遠地の状況も手に取るようにわかるようになってしまいました。

このように、関わる仕事内容を少しでも知っておくと、受信感度が高まり、今までは耳に入っても、右から左へスルーされていた情報なんかも、どんどん敏感にキャッチするようになり、本格的に取り掛かるころには、アタマがその分野になじんでいるため、仕事そのものを受け入れやすくなっているのです。

このように、何も考えずに力任せに走りつづけるのではなく、用意周到な準備をすることで、無駄が減り、何気ない作業1つとっても効率がグンと向上するようになります。わずか1時間程度の「ちょっとだけ」によりエンジンをかけた状態にしておくことが、その何十倍、何百倍もの効果を生むわけです。

特に「④情報への受信感度が高まる」というのは、心理学的には「ツァイガルニク効果」と呼ばれています。人は完了したことよりも、中断したことに対してより強い興味と記憶を持つという心理現象です。

テレビ番組では「えっ、このあとどうなるの!?」という大事な局面に差しかかったところで、狙いすましたようにCMが入ったり、次回に持ち越されたりしますよね。これは、情報を中断させることよって視聴者により一層の興味を抱かせる「ツァイガルニク効果」を狙ったものです。マンガ雑誌なんかでも、毎週同じページ数のはずが、いい感じの展開にするために、わざと増ページしてみたりすることもあります。

デアゴスティーニのビジネスモデルは「パートワーク(分冊百科)」と呼ばれていますが、これも「ツァイガルニク効果」を戦略の軸にしたものではないでしょうか。創刊号だけ異様に安く、一度購入してしまうと、揃え切らないとモヤモヤしてしまい、購買促進を狙っているのだと思います。

仕事も、ちょっとだけやってみて、あえて中断することで「せっかく知ってしまったのだから、忘れるのは勿体ない」「忘れないようにすると、アレとアソコのところがわかんなくって悶々とする」と言うように、脳がその内容に関して興味を持ち始めることができるのです。

実践してみると、確かにその案件に対する受信感度が格段に高まりまることがわかります。別の仕事でネット検索をしているときでも関連情報がセンサーに引っかかるため、役に立つ情報などを見つけてしまうと、とりあえずコピーをとったり、ブックマークに登録しておいたり、ファイルに保存したりすることができるようにもなります。

画像1

私の場合、そうやって集め続けてたら、とんでもないブックマーク量になっています。ですけど、きちんと整理しているので、必要に応じて必要な情報が手に入りやすくなっています(毎回探すの面倒で…)。

新しい仕事に取り掛かったときに1から情報収集するよりは、はるかに効果的な仕事の進め方であることを実感できるでしょう。

いただいたサポートは、全額本noteへの執筆…記載活動、およびそのための情報収集活動に使わせていただきます。