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情報システム産業の本質

三連休の最後は雨ですね。
晴耕雨読も中一日挟んで2日もやれば飽きてきます。

さて、今回は中途採用者…中でも別業界から来られた20代後半から30代前半向けに、私がよくやっている教育?説明会?にちなんで、私が属している情報システム産業についてザックリ説明します。

学生もそうですし、この業界に所属しているエンジニアの多く、経営者の多くもそうですけど、この業界に対する認識がどこかズレている気がしてなりません。

派遣中心に活動されている企業様はともかく、請負中心で活動している企業では、たしかに「モノづくり」が売り上げに直結します(請負契約は成果物を収めることで対価が支払われるものなので)。

けれども、一般的な製造業のような、「商品を売る」というのとはちょっと違います。BtoBで受注生産する私たちの仕事は、言い換えれば一つひとつがオーダーメイドで、2つとして同じものを作らず、だからこそ「売れた」かどうかではなく、「ユーザーが満足した」かどうかが企業の生き残りに直結しやすい業界でもあります。

ですが、営業職の方々はとにかく受注量を増やすことにばかり傾倒して、生産職の方々はプログラミングばかりに傾倒し、管理職にもなるととにかく数字をナメナメしているだけ…なんか、私の描く情報システム産業とは色々違う気がしてなりません。

気のせいでしょうか。

情報システム産業とはどうあるべきか?

情報システム産業(以降、IT産業という)は総務省の定める業務分類に従うと、「第三次産業」に属します。

産業の分類については、小学生だか中学生だかの頃に学びましたよね?アレです。第一次は「自然界にあるものを利用・加工する産業」、第二次は「第一次産業で得られた資源を利用・加工する産業」、第三次は「第二次産業で作られた資源・製品等を用いて新たな価値提供を行う産業」…みたいな感じだったと思います(あえて調べていないので、うろ覚え)。

また、社団法人情報サービス産業協会の分析によれば、IT産業は、

 「コンピュータ機器製造業」
 「通信産業」
 「情報サービス産業」

の三つに区分されていて、「コンピュータ機器製造業」は第1次産業に相当し、半導体などのコンピュータ・ハードウェアの製造業という位置づけ。「通信産業」は第2次産業に相当し、ネットワークインフラや通信サービスといったデータの流通業、そして「情報サービス産業」は第3次産業に相当し、サービス業という扱いになります。

サービス業…そうつまり

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と言うことです。

毎度、この話をすると、変質者が出たような目で見られるんですけど、まぁ最後まで聞いてください。


製造業ではなく、サービス業だと何が違うの?

モノは作ってるのに、製造業ではない。なぜか?

それは、モノを売るだけが仕事のすべてじゃないからです。プログラミングが仕事の中心にあると思ってこの業界に来られる人は、ここでまず躓いているような気がします。

じゃあ、他に何があるのか?

そういう疑問に陥った時は、本質的な問いに立ち返りましょう

 そもそも、我々のような企業/業界に
 仕事を依頼する人たちは何が目的なのか?

これは即ち、私たちIT企業人の存在意義を指す問いでもあります。だって、依頼する人や企業がいなければ、私たちは仕事を失ってしまうわけですからね。

先に結論から言っておくと、私たちに依頼するユーザー企業の方々が本当に欲しているのは、現在の業務や事業において存在する

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この差を埋めることです。ソフトウェアに頼ったり、システム化したりするのは、あくまでその差を埋めるための実現手段の1つにすぎません。もし、安価で、あるいは使い勝手が良くて、かつ同じ効果を期待できるのであれば、ソフトウェアやシステムに頼らなくてもいいのです。

私たちの企業や業界に依頼すると言うことは、結果的に「ITに頼りたい」と言うことなのでしょうが、それを私たちがはき違えていい道理にはなりません。

あくまでも、ユーザー企業の方々が求めているのは

 「今抱えている問題/課題を解決してほしい!」

と言うことです。「解決し、満足する」、そのためにソフトウェアの作成や、システム化と言う力を借りて、提案から実務を担うのが、IT産業の仕事です。

ですから、モノを作って売ったかどうかではなく、ユーザーは提供されたモノによって問題/課題が解決されたかという軸で見ようとしないと、どんな成長戦略も的外れとなってしまうことでしょう。

言い換えてみれば、満足度(CS:Customer Satisfaction)に対して対価が支払われている業界と言えます。逆に、“満足できなかったら”もう二度と頼んできません。だからこそのサービス業なのです。

私たち自身が一般消費者の立場になって考えてみてください。テーマパークでも、飲食店でも、自分が客なら「面白くない」「不味い」そういった評価をしてしまって、満足できなければ

 「二度とこない」

と思いませんか?
IT産業も、基本的にそういったユーザーの満足度が原資となって存在する業界と言えます。


満足度以外の価値基準はない!

すごい技術を駆使しても、世界初の試みだったとしても、BtoBのソフトウェア作成、システム開発においては、あまり意味がありません。

なぜか?

現状の不満や困った状態を解決できるなら、そんな不確かなものより、安価で確実な方がいいに決まってるからです。解決できなければ、どんな優れた技術も意味を成しません。

何千万、何億とIT投資をしてユーザーが求める見返りは、「ブランド」ではなく、確かな「実利」です。

こういう話をすると「じゃあ、満足度だけを見て業務すればいいの?」と言われる時がありますが、私はこう返します。

 「いいんです!」

ユーザーは、満足さえできるのならば、必要経費はいくらでも払います(もちろん適正価格内に限りますが)。満足できなければ、高くても安くても買いませんし、場合によっては即クレームにつながります。損害賠償請求だって辞さないことがあります。それが「サービス業」の本質です。

いくら企業が営利を求める存在だったとしても、営利にしか興味を持たない経営陣や管理職層というのは、私は好きになれません。

お金が回る仕組みは、あくまでユーザーの満足度ありきであるはずなのに、満足度をどうやって向上するかを考えず「もっと受注しろ」「もっと利益を上げろ」とばかり言っていて、それにしか目がいかない経営陣や管理職層…。

実際に稼いできてくれているのは、現場担当者たちで、彼らのエンゲージメントが高くないとより良いサービスを提供できなくなるのに、彼らが一番不遇な扱いを受けるのは、そうした「満足度」に対する視点がスッポリ抜け落ちているからではないでしょうか。

では、満足度だけを見て、業務を運用するとどうなるのでしょう。

たとえば従業員満足度(ES)を向上すれば、従業員一人ひとりのパフォーマンスが向上します。時間帯効果が向上すれば、収益性にも大きな影響を与えることでしょう。

「そう上手くいくかぁ?」なんてひねくれたことを考える人も出てきそうですが、考えてもみてください。エンゲージメントが低い状態を維持すると、有能な社員が離れて行ってしまうかもしれませんよ。それでも本当に経営は維持できますか?優秀・有能な社員の有無は、必ず収益性に影響を与えるはずです。

一方で、顧客満足度(CS)を向上すれば、リピーターとなります。口コミで受注量が増加するかもしれません。相見積もりをとられていたとしても、多少の価格差であれば、こちらに注文してくれるはずです(ほかの企業が同じだけの満足度を提供してくれるとは限らないため)。

ここでも「そう上手くいくのかなぁ?」という冷ややかな声が聞こえてきそうですが、満足できない製品、満足しない仕事ぶりを見せられて、ユーザーはそれでも仕事をくれると思いますか?

ちょっとポジティブに説明すると、ひねくれた意見をする人が出てきますが、ネガティブなイメージを思い描くと、それがどれだけ影響力の強いものであるかがわかります。

ですので、満足度を向上する良いサイクルが回れば

 勝手に売り上がっちゃう

 勝手に業績は伸び続ける

ことになります。そういうものです。
これは、一般消費者の購入ルーチンを考えれば自ずとわかることだと思います。

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ユーザーと一口に言ってみたところで、相手がどこの誰であっても、会社から一歩出れば「一般消費者」です。だから思考ルーチンは一般消費者のそれと大して変わらないはずです。

 ・超高額商品なので、衝動買いはできない
 ・信頼できるきっかけが必要
 ・ユーザーにとっても新たなIT企業探しは非常に困難なギャンブル

そういった観点から、満足度がユーザーの求める水準を上回ってしまえば、反復購買行動が促進されることが高い確度で予想できるわけです。


満足度は製品の出来だけでは測れない

ユーザーの抱える問題や課題を解決できる製品であることは確かに最重要ですが、それだけでは不足です。

有名な狩野モデルからも、そのことがよくわかります。

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特にIT投資は、高額商品のなかでも群を抜いています。

ちょっとした機能を1つ実装するだけで、家が一軒建てられるくらいのお金がかかることも日常茶飯事です。

それだけに、「結果よければすべてよし」というわけでもなく、製品が、あるいはサービスが完成して提供されるまでの期間(プロジェクト活動期間)の姿勢や、接し方一つとっても、ユーザーに不安や不満を抱かせないようにする必要があります。

「プロジェクトマネジメント」は、主に"確かな品質のものを、決められた期限に、与えられた予算内で"、コントロールするためのノウハウを詰め込んだものですが、それらの目標を達成するために

 ・統合マネジメント
 ・スコープマネジメント
 ・リソースマネジメント
 ・リスクマネジメント
 ・調達マネジメント
 ・ステークホルダーマネジメント
 ・コミュニケーションマネジメント

と言ったカテゴリ観点からも、フォローしなくてはなりません。

ユーザーと特にかかわりがあるのは、ステークホルダーやコミュニケーション、スコープ、リスクと言ったところですが、こうした部分でもユーザーに不安や不満を抱かせないような取り組みが必要になってきます。

一般的に「プロジェクトマネジメントはマネージャーの仕事」と思われがちですが、マネージャーの指揮、指導の内容を理解し、いち早く行動に移せなければ、マネジメントは成立しません。
そう

 マネジメントは1人では成立しないのです

マネージャーの推進する「顧客満足度を向上するためのマネジメント」を実践するためには、メンバーはもちろん、途中から参画してくる方々の理解と協力も必要になってくると言うことを、ここでしっかりと覚えておきましょう。

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