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失敗原因は10に分類できる

失敗を学び活用するには、失敗を分析して理解する必要があります。

言葉にすれば当り前のことかもしれませんが、案外プライドが邪魔してまともに向き合えていない人も多いのが実情です。

「修正すればいいんでしょ!」

みたいな態度は、その場しのぎの対応はできたとしても再発防止にはつながらず、信用を失い、ひいては信頼されなくなる人となっていく危険性すら伴います。

本当に、「失敗は成功のもと」としたいのであれば、まず落ち着いて失敗自身と向き合う姿勢を保つようにしましょう。焦っても、慌てても、ロクな未来は待っていません。仮に、緊急性が高く優先して是正処置が必要だったとしても、必ずそのあとで失敗と向き合う習慣を身につけましょう。


これは個人にのみ言われていることではありません。

企業や組織に対しても同様…いえそれ以上に重要なことです。

未知

世の中の誰もが知らなかった現象が原因となって起きる失敗です。

誰も知らないし、誰も経験していないことであればどうしようもありませんね。未知による失敗はいたずらに「人」に対して責任追及をするのではなく、科学技術を発展させ、さらには文化を生み出す最大の糧ともいえるものです。

失敗をプラスの面でとらえ、「失敗は成功のもと」で語られるときの失敗がこれです。

仮に未知でなかったとしても失敗をプラスの面でとらえ、次に活かそうとする姿勢さえあれば「失敗は成功のもと」とすることは可能です。

その姿勢を持てるかどうかは、そのままその人が「真摯かどうか」にも直結します。裏を返せば、そうした失敗を次に活かそうとする姿勢が取れない人というのは、口では何と言っていたとしても真摯さや誠実さとはかけ離れた存在であるということです。


無知

失敗の予防策や解決法がすでに世の中に広く知られているにもかかわらず、当事者が不勉強であることにより引き起こされた失敗です。

不勉強なのですから、この失敗を防ぐには学ぶしかありません。

真摯に、誠実に学ぶ姿勢を見せられない人は、この先も無知を通すのでしょう。すなわち「再発」するリスクを永遠に持ち続ける人材であることを意味します。

そしてこれを疎かにする人や組織では大抵の場合、属人化を強く推奨します。たとえば「できる人間」に押し付けて自分は何もしなくて良い方向に持っていこうとするなどです。

本来、正しい属人化は

『それぞれの得意領域(強み)に集中できるように仕事を再配分する』

ものですが、ただ属人化させて自分の仕事を楽にさせたい人はそもそも得意領域を持っていません。不勉強で楽をすることが好きなわけですから、当然と言えば当然でしょう。

しかし、無知を恐れるあまり、行動することなくいたずらに調査や勉強ばかりに精力を注ぐと、失敗により失うものよりもさらに大事なやる気時聞を失うことになります。


不注意

十分に注意していれば防げたはずの失敗です。

体調不良や過労、多忙、あせりによる平常心の喪失など注意が散漫になっているときに起こしがちです。致命的な結果に結びつくような作業ではこの原因による失敗を避けるべく作業自体を中止すべきです。「居眠り運転」がその最たる例です。

また、仕事に対する姿勢が不誠実な人もこうした問題をよく起こします。いわゆる「ケアレスミス」と呼ばれる不良/不具合の原因となる大半がこれにあたります。

しかし、不注意はちょっとした仕組みによって改善することも可能なため、周囲に不注意によるケアレスミスをよく起こす人がいた場合は、不注意そのものが起こせない仕組みを構築してあげましょう。

これは、組織のリーダーの責務の1つでもあります。

たとえば、簡易的なものであればクロスチェックなどを実施するとか、予算等に余裕があるのであればシステムやツールなどを用いるのもいいでしょう。「高い」と思われるかもしれませんが、何度も不注意で問題を起こし、手戻りが発生する回数×人数を考えれば、相対的に安上がりとなっているはずです。


手順の不順守

組織で決められている約束事、広く知られている習慣や規則を守らなかったために起きる失敗です。

組織では、全員が守らなければならない約束事をたった一人が無視したことでそれが失敗につながります。中にはちょっとした不順守で何千万、何億円という損失につながることも珍しくありません。

そうでなくても、単価100万の人材が1日手戻りを発生させただけでも

  • 手戻りした1日分(5万)

  • その日進めるはずだった予定の1日分(5万)

の計10万を無駄にします。しかも、本人の「ルールを守らない」といういびつな判断/決断のせいで起きているのです。もっとも責任の重い失敗と言えるでしょう。


誤判断

状況を正しくとらえていなかったり、状況は正しくとらえたものの判断を
まちがえたことにより起きる失敗です。

判断をするのに用いた基準や決断に至る手順がまちがっていたり、判断をするときに考慮に入れるべき要素が欠落していたりしたための失敗も含まれます。

ひとつの事柄を決定するときには、さまざまな状況を想定してそこで起きる結果までを必ず頭の中で考える仮想演習(シミュレーション)を行わなければなりません。

もちろん、悪い結果に至るシミュレーションも必須です。
リスクヘッジとしての対策には必要不可欠です。

ですが、この失敗は失敗した本人自身が認めたがらない…という傾向も強く出ます。周囲が何と言っても、自己正当化を図ろうとあの手この手で言い訳を作り出そうとするのです。

たとえば

「これまではこの判断で問題が無かった」
「今までそうやってきた」

といった停滞(という名の退化)を良しとした言い訳です。今目の前でその判断自体が失敗を招いており、この「過去からの踏襲」にかまけて思考停止し、

「今回も過去同様で良いのか?」

という吟味を怠ったことが引き金となっている以上、その発言自体が誤りなわけですが、発言している本人自身はいたって真面目に「自分が正しい」と思い込んでいるわけですから始末に負えません。

これは、必ずしも本人だけが悪いわけではなく、本人任せで属人的なやり方を推進してきた組織や企業側にも相応の責任があります。

誤判断するからには、誤判断を誘発してしまう仕組みやプロセスの穴があります。まずはそのことを自覚し、仕組みやプロセスによって穴をふさぐ努力をしない限り、この失敗要因は決してなくなりません。


調査・検討の不足

判断をする人が当然もっていなければならない知識や情報をもたずに判断したり、十分な検討をしなかったことにより起きる失敗です。

そもそも正しい判断には「正確な情報」が必要です。

にも拘らず、それを収集しないまま判断するのですから失敗確率が上昇するのは当然の結果です。料理の素人が、レシピ本を見ることも無くKKD(勘・経験・度胸)だけで美味しい料理を作ろうとしているのと同じです。万が一美味しい料理を作れたとしてもそれは所詮『万が一』です。けして実力によるものでもありませんし、組織として信用を得る類のものでもありません。

しかし、実際の場面ではすべての情報が完壁にそろって判断できる状況は極稀でしょう。そう言った場合でも、判断する人がほんの少しでも常識を理解していればまちがったときのことも想定し、その対応策も考えていたりして、たとえそこで失敗しても右往左往することも少ないことになります。


制約条件の変化

なにかをつくり出したり企画するとき、あらかじめ制約条件を想定してスタートします。これはプロジェクトマネジメントでも同様のことが言えます。ところがその想定した制約条件が時間の経過とともに変化をし、そのために思わぬ失敗になることがあります。

制約条件は常に変化するものです。

たとえば為替レートや金利。当初の想定を超えた大きな変動は事業に大きな影響が出ます。「想定外でした」ではすまされないので、常にリスクヘッジとしての対策が必要になります。

さきほどの『誤判断』にもあったように、常に最新の制約条件を確認しようとせず、

「これまではこの判断で問題が無かった」
「今までそうやってきた」

と言って条件、状況の変化を追うことなくまったく同じことをして失敗するというのは、ソフトウェア開発の現場でもよく見かけます。

10年ほど前、ある大手SIerが某メガバンクのシステム開発を請け負っていました。そこでは二次請けのベンダーが「過去に中堅金融機関で使ったシステムを流用すればコストを抑えられます!」といって採用されていましたが、実際には「小が大を兼ねる」ことはなく、まったくのミスマッチで大トラブルへと炎上し、ようやく消化できたのは発足してから4~5年経ってからのことでした。

その間、元請けの大手SIerが被った損害は億程度ではおさまることも無く、私も途中から解決支援に加わって2年弱ほど解決に勤しんでいましたが、参加した直後はあまりにもベースとなるシステムが酷すぎて、「作り直す」ことを即提案したくらいです(まぁ結局、どこでも同じように受け入れられるはずもなく、問題個所のみを修正する対応となっていましたが…当然、私が離れるころには原型なんて欠片もありませんでした。ただただ拡張性や試験容易性、変更容易性を犠牲にした元請けの自己満足で塗り固められたシステムの完成です)。


企画/計画不良

企画や計画それ自体に問題があることによる失敗です。

たまに「計画なんて立てても、計画通りにいくことなんてない」といって計画そのものを疎かにしようとしたがる人がいますが、そういう人たちは今一度ビジネスや契約、金の動きというものを勉強し直した方がいいかもしれません。

契約がある以上、契約が定める期間内に契約が定める成果を上げなければならないのがビジネスです。計画は、契約時点で「いかにして契約の定める期間内に、契約で定めた成果を提供するか」という未来図です。これが示されなければ、ビジネスの相手も信用して任せることができません。

結果的に「できませんでした!でも頑張ったのでお金ください」と言っても契約がそれを許しません。そうしたビジネスの"当たり前"を理解していない可能性があるのです。

これは進めていてどう頑張っても、行きつく先は「振り出しに戻る」しかありません。よほど優れたマネージャーであれば…なんとかできるかも知れませんが、そもそも企画/計画時点で大きく破綻しているものを、個人の才能だけで巻き返すというのは現実的ではありません。

ところが企画や計画が組織のリーダー…なかでも高位の者の発案であったりすると企画や計画そのものが問題にされず、その下の実行者に失敗原因が帰せられることが往々にしてあります。

「モノ/コト」に責任を追及せず、「ヒト」に責任を追及した時点で対応できることは限られています(実行者への懲戒)し、対応したところで根本的原因(企画/計画の発案者自体の問題)は解消されず、何度でも再発することになります。

そのたびに「ヒト(実行者)」が犠牲になっていく組織のできあがりです。

もちろん、実行者も不審に思ったら確認し、是正を促すなど連帯責任はついて回ることでしょう。ですが、当の組織のリーダーは意外と連帯責任と思っていないケースが往々にして起こります。

ソフトなブラック企業はこうして存在しているのです。


価値観不良

自分や自分の組織の価値観がまわりと食い違っていることにより起きる失敗です。

過去の成功体験だけに頼ったり、組織内のルールばかりを重視していると、市場、顧客、経済、法律、環境、文化などの面からいわゆる常識的な理解・適応ができなくなり、そのことで失敗に至りがちなものです。

目的を果たすための価値観とは、己の中に持つべきものではありません。
常に自問自答を繰り返し、常に多くの価値観と比較検討し

 「いいとこ取り」

する必要があります。

時には全く新しい価値観として生まれ変わることだってあります。その価値観がもともと持っていた己の価値観とは真逆となってしまうこともあるでしょう。ですが、誤った価値観のままでは誤った判断につながりかねません。

過去の成功に自信を持つことは悪いことではありませんが、そのことで過信し、妄執することは、組織を高い確率で失敗へ導きます。しかも、確信犯的に、です。


組織運営不良

組織自体が、きちんと物事を進めるようになっていないために起きる失敗です。

組織のリーダーが判断を誤り、その組織運営を修正する決断を行わないでいると問題を大きくしてしまいます。これはなにも企業という大きな組織に限ったことではありません。部や課などの組織でもそうですし、プロジェクトチームという小さな組織においても同様です。

プロジェクト計画を明確にせず、開発作業の手順や仕組みも存在しないまま、メンバーは都度言われた仕事を言われたとおりに進めるだけの作業をするだけのロボットと化してしまうとその進め方自体が本当に正しいのかどうかも判断できず失敗し、そのままトラブルまで一直線と言うのはよくある話です。

実際、そうしたトラブルプロジェクトは山ほど見てきました。

しかも、こうしたトラブルは大抵の場合、契約金額を大幅に上回ってコストを消費する大赤字プロジェクトに発展することが大半でした。

失敗は、なにも個人ばかりが起こすものではありません。組織ぐるみで失敗を誘発するものも中には存在するのです。一人ひとりが「自分だけは失敗しないように」とするだけでなく、「自分の所属する組織において失敗させないように」という視点を持ち、取り組んでいくことがこの原因解決のカギとなります。

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