見出し画像

真に重要なことは趨勢ではない。変化である。

2008年のリーマン・ショックは多くの企業にとって

 「100年に1度」

といわれる大変な痛手を与えましたよね。
まだまだ記憶に新しい方も多いと思います。

ちなみに私もそのタイミングでそれまで2年近く続いていたプロジェクトが一度白紙に戻り、1週間ほど次の仕事が見つからない…という時がありました。まぁその後、空前絶後かってくらいのトラブルプロジェクトの解決メンバーとして加わり、様々な病気やら体調不良やらを経験したため、嫌でも記憶に残るイベントだったと記憶しています。

ちなみにリーマン・ショックは突然起きたかのように見えますが、痛手を受ける予兆がまったくなかったかといえばそうではありません。

たとえば、自動車業界などでは北米市場を中心に少しずつ売れ行きか鈍り、収益構造も悪化していました。しかし、それを不景気の予兆ととらえることなく殆どの自動車メーカーにおいて減産に踏み切りませんでした。

過去多くの不景気の最もよく見える傾向が

 「買い控えによる市場流通の停滞」

に起因していたにもかかわらずです。それが結果として"過剰在庫"につながり、経済危機における赤字の大幅化としてあらわれたといわれています。

”組織の中にいると、外の世界の現実は、組織の中の基準によって咀嚼され、
 「報告書」という高度に抽象化されたフィルターを通してのみ知ることになる”

…と、ドラッカーは指摘しています。

多くの場合、組織にとって重要な意味をもつ外部の出来事は定性的です。定量化されるときにはすでに事実情報として積みあがっているということですからもはや手遅れです。すでに過去の事実でしかないのです。

重要なことは趨勢ではなく、趨勢の変化です。
知覚することが必要であり、残念ながらITでは捉えることができません。

組織の中にいれば最もよく見え、よく耳にし、急を要するのは当然に組織の内部の問題になります。ですから、組織の内部に焦点を合わせがちになります。組織は成長するほど(特に成功するほど)組織の現状を維持するために一層組織の中に関心が向き、内部のことで仕事が占領されることになってしまいます。

こうした状況を加速するのがコンピューターであり、ITです。

コンピューターはその機能が演算処理であるように、データを非常な速さと精密さで処理するのには確かに適しています。しかも、定量化できるデータはほとんど内部のデータです。大量に処理できるがゆえに、必要かどうか分からなくともとにかく大量のインプットがなされ、大量のアウトプットが生じます。

一般的に、定量的に確認することを「測定」(Measurement)、一方で定性的に確認することを「監視」(monitoring、Surveillance)と言います。

変化をどうすれば知覚できるか。
それは監視することによってのみ可能です。
変化を知覚できるのは、あくまで人間です。

コンピューターにもできているように見えているそれも、実は測定によるデータの変化をとらえているにすぎません。すなわち、定量的な変化しか検知できないのです。

組織で働く人聞は、組織の中にのみ関心を寄せるのではいけません。
ましてコンピュータやインターネットのデータのみを見てもダメです。
意識的に外の世界を見て、変化を知覚することが重要です。

すべての成果は組織の外にあります。
内にあるのはコスト努力(プロセス)だけです。

成果を内に求めると自己満足しか得られません。

実際、製品を作っていてもそうですよね。
お客さまが評価してくれて初めて価値が出ます。
どんなに自己満足できたとしても、だれも見向きもしないモノを成果とは呼びません。

ITでは測定しかできないし、測定できた時にはすでに変化を近くできるタイミングにありません。そのためITにばかり頼ってはいられません。成果を左右する変化をリアルタイムに知覚するのは、人間だけにできる大切な役目なのです。


いただいたサポートは、全額本noteへの執筆…記載活動、およびそのための情報収集活動に使わせていただきます。