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ベンチマークはまさしく顧客の答えを聞ける作業


宇宙一外食産業が好きな須田です。

前回の続きでベンチマークの件ですが、先だってもセミナーを開催しましたが、どうもベンチマークを簡単に軽く考えているような方が多いような気がしました。

先だって亡くなったダン・ケネディは、“答えは顧客に聞け!”と、
常々言っているくらいマーケティングの基礎を言っておりましたが、
ベンチマークはまさしく顧客の答えを聞ける作業です。


前回の記事でも書きましたが、折角ベンチマークに行っても自分の慣れ親しんだ味を基準にしてしまって、美味しい、美味しくないという評価になってしまう場合が非常に多いです。

外食業で必要なことは、あなたが美味しいと感じる味を押し付けることでは無くて、お客様が美味しいと感じる味に商品を仕上げていくことです。


ですから、いつも住んでいる地域以外の地方に行った際には、慣れ親しんだ味とは違う味が提供されるので、いつもの美味しさを感じにくくなる傾向があります。

ですから、前のりしてその地域の何か有名なものを体験するなど、舌を慣らして味の記憶をリセットする必要もあります。

そもそも美味しいと感じる味は食べ慣れた味です。


従って、外食業では経営者の食べ慣れた好きな味が提供されるパターンが多くなってきます。

以前、社外ブレーンとして経営に参加していた企業では、社長プレゼンの商品と実際に流通させる商品の味付けを変えていました。

商品化されてから総料理長に聞いたことですが、
「社長の味の趣向は子供っぽい味で、甘みが強すぎる味ので、社長用に味を変えてプレゼンしました」と、驚くことを言っておりました。


年商20億に届くかという企業でしたが、ある意味、顧客の好みの味を提供したので、レストラン業としては正しいことをしたのかもしれませんが、勇気のあるプレゼンをした料理長は凄いなぁと感心しました。

それほどの味の決定権を持っている経営者ですから、売れる味を常に研究し、ご自身の味に関する感性と舌の感覚を鋭敏にすることは大事な経営者の務めと思います。

私は日ごろから亜鉛のサプリを飲んでいます。
味蕾を衰えさせないために、常に亜鉛を飲んでいます。
亜鉛不足は味蕾を鈍らせるので、気を付けるようにしております。

また、1%の食塩水も飲んでいます。
正確には、飲み込まないですが、口に含んで舌の色々な場所で味を感じるかをテストしております。

さて、ベンチマークをする際には、他店舗視察シートなるものを用意すると良いかもしれません。


かなり以前から使用しているシートですが、今でも非常に有効なシートです。

このシートには、視察するポイントが明記されており、A4サイズ3枚~4枚ほどのシートですが、大項目とそれぞれの小項目とコメントを書き込めるようにしてあります。

大項目は店舗の立地・外装から始まって、店舗レイアウト・効率性、接客・サービス、商品政策、その他ターゲットや店長の技量とチームワークの完成度、客単価・回転率、販促計画・実施率などを設定しており、それぞれに小項目があり、コメントを書き込めるようになっています。

最後のページには、各人の総評が書き込めるようになっておりますので、最終的に集計して活用できるようにしてあります。

同じ項目でも普段受け持っている担当が違うと全く違った評価のコメントが書かれることは頻繁にあります。

そこがこのシートの良いところで、このシートが無ければなんとなく見逃されてしまいがちな要素を、ピンポイントで議論することが出来ます。

キッチンの方がキッチンオペレーションについて厳しいことを書いても、ホールの担当者は全く感じていないこともしばしばあります。

逆に、サービススタイルについてホール担当者がきつい指摘をしても、キッチンスタッフは全く感じていないこともあり、見ている景色も注意を向けている箇所も全く違うことをそれぞれが感じられるので、このシートは本当に面白いなぁと思います。


実は、前回の記事で書いたクライアントには、このシートを活用しませんでした。

ベンチマークをする前に、ある担当者にシートの件を確認しましたが、ある理由でお断りされてしまい、活用できませんでした。
その結果、荒れたベンチマークになってしまいました。

後々伺ったことですが、過去にある有名なコンサルタントの方とベンチマークに行ったことがあるそうで、その時にその有名なコンサルタントの方に一から十まで、その場で事細かくあらゆることを説明され、まるで洗脳でもされているようなご経験をなさったとかで、それ以降は自分の感性を信じるとなったことが原因で、シートの活用は見送ったと聞かされました。

非常に残念だと感じましたが、そのようなご経験がお有りならと承服するしかありませんでした。


この他店舗視察シートは、ずいぶん前にあるクライアントから、ベンチマークに行ってもただの飲み会になってしまい、誰もそのお店のことを正しく記憶していなく、開発に全く寄与していないという悩みを打ち明けられ、それでは基準となる他店舗視察シートというものを作成しましょうか、ということになり作成したシートです。

あれから20年以上経過していますが、ターゲット業態用に視察ポイントをアレンジしながら今でも活用しております。


ベンチマークでは、ついつい表面的な要素に注意が行きがちです。

特に、視察といえども営業中の他店をチェックに行くわけですから、どうしてもミステリーショッパーのような気分になってしまい、厳しく批判的に荒捜しをしがちになります。

ターゲットと設定したそのお店の何が顧客心理に響いているのか、
どこが大きな価値と感じられてお客様はリピートしているのかを、
真摯に観察する必要があります。

繁盛店が本質的に提供しているものは、
多くは大きな付加価値を提供している場合がほとんどです。


品質も商品もサービスも環境も、それら全ての基準がしっかりとしていて、しかも高いレベルでバランスが取れており、維持されている場合がほとんどです。

繁盛店はそのお店なりの武器となる繁盛ポイントがあります。

立地との適合性、商品との適合性、顧客心理との適合性、利用シーンとの適合性など、それらのどれか、もしくは複数で高い適合性があります。

一般的にQSCと表現されることのレベルが高いことも共通した特徴です。

ですから、事業で失敗したくないのなら、素直に繁盛店・成功点から学ぶべきです。
学ぶポイントを明確にするため、他店舗視察シートをオリジナルで作成し視察ポイントを共有し情報を共有することです。

私は仲の良い経営者と冗談でTTPが大事ですよねと、言っております。

親父のギャグですが、“徹底的にパクレ”の頭文字をとって、TTPです。

つまらないおやじギャグで申し訳ありませんが、

成功している業態を徹底的に分析して、それ以上の価値を提供出来たなら、
勝利を得る確率は各段に上がります。

“顧客に聞け”、まさしく評判になっているお店の業態の顧客にどこが良いのかの答えを聞いてから、新業態を開発するわけですから、勝算はグッと上がります。


ベンチマークはそれほど大事な作業です。

会社経費の無駄使いになるような飲み会ベンチマークは卒業してください。


昨夜、先日のセミナーを受講してくださった方のお店を訪問して、業態力のお話しが出たものですから、次回は業態力に関してお話しをさせていただきます。

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