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試作会と試食会は楽しむことが大事!


宇宙一外食産業が好きな須田です。

今回は、試作会と試食会の効果的な実行方法をお伝えします。


そもそもですが、試作会と試食会の違いをご存知でしょうか?


根本的にこの違いを理解していないと、商品開発は無駄なコストと時間を

要してしまいます。


似ているようですが、試作会と試食会ではそもそもの意図が違いますから正しく理解しましょう


試作会とは、開発する商品の構成要素を決め込む作業の事です。

この段階では、味の設計図通りの商品が出来上がるのかを検証します。

ですから、原価も見栄えもオペレーションも考慮することなく、商品コンセプトと味の設計図の具現化に集中します。

食材1品1品を吟味し、商材のバランス、味のバランスを検証します。

大まかな調理工程と現場のオペレーションをイメージしながら、如何に消費者にとって魅力的な商品となり得るかを検証する段階です。

この段階を経ないで商品を開発するとどうなるかと言いますと、魅力的でない、価値の低い商品が出来上がってしまう可能性が高まります。


当然のことと思います。

魅力的な商品を作ることが目的ではなく、最初から売価に縛られ原価を意識して仕込み工程と現場のオペレーションに拘束されたそんな状況で商品を開発してしまい、つまらない売れない魅力ない商品となってしまう可能性が高まります。

しかも、売価を必要以上に低く設定して!


価値を提供しなければならないのに、価値を提供出来ないような売価設定を基準にして商品開発を行ってしまいます。

この原因は、メニューコンセプトと商品コンセプトの欠如です。


お客様に提供する価値も、経験も、感動も決めない状態で、商品の方向性が明確になるわけがありません。

その延長線上にヒットする商品も、お客様に響く商品も作れることは稀なことと思います。

ですから、試作段階ではあらゆる制限を外して、純粋に商品価値を上げること、いかにこの1品を魅力的に出来るかを考えます。

ですから、食材をチャレンジして、ポーションをいくつか試して、味の方向性を数通り作ってみます。

同じ食材でも、ポーションによって最後の味の記憶が違ってきます。

勿論見た目も、イメージも、インパクトも。

味の方向性も、塩味を強くしてみる、フレーバーを効かす、旨味を強調する、後ろから味を感じさせるなど、幾つかの方向を試作してみます。


ですから、試作段階は“楽しい検証作業”の段階です。


制限を突破して発想を自由にして、色々とチャレンジをしなければならない段階です。

そうすることで、トライアンドエラーの後に、魅力的な商品候補がいくつか見えてきます。

この試作段階を正しく通過せずにいきなり試食会に突入するので、大きなブレが生じ混迷が始まってしまいます。

これまでも数え切れないほどの試食会に呼ばれてきました。

出て来た商品候補を見て、今日は試作会ですか?それとも試食会ですか?と、幾度となく聞いたことがあります。

社長はじめ幹部もご出席の上で始める試食会で、商品レベルに達していない試作段階の商品を並べてしまう場合があります。

過去には、「この段階で俺を呼ぶな!」と、怒りを露わにした経営者の方もいらっしゃいました。

当然のことと思います。

多忙を極める中、時間を割いて試食会に出席してみたら非常にレベルの低い、到底お客様には提供できない状態の商品を試食させられる、トップの方が「呼ぶな」と感じても、もっともなことと思います。


私は常々、「飲食業のトップは消費者の代弁者であれ」と、言っております。


あなたのお店の一番のファンであり、一番厳しい消費者の代表でいてくださいと。

一番のファンであり業態を愛しているからこそ、消費者に成り代わり本当の意見をスタッフに伝えてくださいと、お伝えしております。


ですから、トップがこの段階で呼ぶな!という意味は、

お客様がこんな商品を出すな!と、叫んでいることと同義なことです。


試作会を行うことでより発想が自由となり、今まで見えてこなかった商品の可能性が見えて来ます。

より“価値の高い豊かな商品”を開発することが可能になります。

あらゆる可能性をテストすることで、全く新たな商品が生まれることもしばしばです。


この試作会は、多くの場合3回ほど行います。

1回目は、商材の選択と味の方向性の絞り込み、調味料のバランスを変えてある方向性の味を強調してみます。

2回目は、実際に作りこんでみます。

使用する食器も盛り付けなども気にすることなく、ただ単純に調理に向き合います。

3回目は試食会に向けて、決め込んできます。


味の方向性を2種類程度決める、使用する食器をいくつか選んでみる、盛り付けをいくつか試してみるなど、商品化するための前段階の作業を行います。

1回目と2回目の試作を、時間をかけてじっくりと楽しみながら行ってください。


お客様に喜びと楽しさを提供することが飲食店の使命です。

その楽しさを伝える商品を作る方々が苦労してはいけません。

どうか楽しんで行ってください。


食の冒険をする探検隊になったようなイメージで、ワクワクしながら行ってください。


次に試食会です。

試食会も通常3回程度行います。


1回目の試食会では、商品の魅力を徹底検証します。

試作により、同じ商品でもいくつかの方向の試作品が出て来ます。

味の方向が違うもの、盛り付けが違うもの、使用食器が違うもの、ポーションが違うものなど、それぞれの特徴を吟味していきます。

この中から、2回目にチャレンジする候補商品を決めます。

勿論、試作されたそのものに決まる場合もありますが、多くは提供された試作品のそれぞれの要素をミックスした結果になります。

味はこれで、盛り付けはこっち、食器はこちらに変えて、飾りつけはこれに変更してなど当初出された商品の、より魅力的な部分をミックスして次回に望む形になります。

この段階で、新しい商品が発掘されることも多々あります。

新たな要素が加わって、全く新しい商品候補が出てくることもしばしばです。

2回目は、前回の結果を踏まえ具体的な商品に近いものが出て来ます。

これを基準に、原価を検証し売価をイメージし、ネーミングもキャッチコピーも候補出しします。

現場のオペレーションも考慮しておきます。

調理工程も、ホールオペレーションも幾ら綺麗な盛り付けでも、時間がかかりすぎるホールスタッフが持っていけないような商品では、実際に現場には導入出来ません。

原価と食材確保などの件は、この2回目の試食会に臨む段階で裏取りをしておきます。

当然、トップから質問が飛んで出来ますから準備しておきます。

いよいよ3回目で、今までの検証内容の最終決定を行います。

商品を決め込み、売価・原価、ネーミング、キャッチコピー、写真撮りする際のアングルまで決める場合もあります。

このように、自由な発想で商品を開発し、段階的に商品をブラッシュアップすることで、魅力的な商品を開発することが可能となります。

やみくもにいきなり調理をして、“美味しい”“美味しくない”の議論に終始することなく、消費者に伝えるべき魅力はどのポイントか、提供できる最大価値は何か、利益ポイントはどこかなど、戦略的に商品を開発することが可能となります。


言うまでもなく、お客様が具体的に対価を支払う対象が商品です。


その商品をいかに大事に作りこむのか、そこが成否を分けるポイントです。


次に参加メンバーについて解説させて頂きます。

試作段階では、開発メンバーのみで開発を進めていきます。

調理担当者と、いわゆる営業サイドのスタッフとなります。

場合によっては、購買担当の方なども仕入れの確認のために立ち会うこともあります。

必要以上に関係者を増やすべきではありません。

意見が出すぎてしまい、決められなくなる危険性がありブレを引き起こす原因となります。

試食会は決裁権を持っている方の出席が義務です。

トップを初め、幹部社員の方で店舗運営の責任を有している方、購買の担当者や広報の方、ターゲットとしているお客様に近いスタッフにも出席していただきます。

消費者の立場で商品を吟味できるスタッフに出席していただきます。

この出席者の選択ですが、試食会のテーマに沿って選択します。

1回目は、商品の魅力を確認する段階ですので、ペルソナに近いスタッフにも出席していただきます。

2回目までは出席していただき、3回目は必要ないと思います。

購買担当は2回目の試食会に出ていただきます。

裏付けを証言していただき、最終決定の前段を立ち会っていただき、ベンダーさんとの協議を行って頂くための交渉材料を提供します。

具体的に導入する日程が決まりますので、対象食材を発注するタイミングと納期の確認などを行って頂きます。

広報の方は、出来れば最初から最後まで出席していただきます。

商品が出来上がるまでのストーリーを感じていただき、プロモーションに反映させて頂きます。

商品が生まれるまでのストーリーを、開発の苦労を、お金に換える作業を担っていただきます。

最後に、試食会で商品を提供する際のタイミングの注意点をお伝えします。

試食会で、初めから全ての商品をテーブルいっぱいに並べて行う会社さんがありました。

理由を聞くと、トップが忙しい方なので出来立てを順番に出すのではなく、いっぺんに全商品を並べて端から順番に試食して行く方針をとることとなったそうです。

これでは、経時劣化したものを試食することになり、消費者が消費する環境と変わってきてしまいます。

逆に、デリバリー業のクライアントの試食会では、出来立ての商品が出てきたことがありました。

それを見て私は、「デリバリー業を行っている御社で、この状態を消費できる消費者は皆無ですよね!このまま放置して20分後、30分後、40分後に試食しましょう!」と提案したことがあります。

消費者に商品が届くのは調理後30分後程度ですから、その段階が実際の消費タイミングです。

何れの場合も、実際の消費タイミングを逸脱した試食会に意味も効果も価値もありません。

全く無駄な試食作業です!


試食するタイミングを実際に則した状態にすることで、オーダーが入ってから調理にどの程度時間がかかるのかも検証出来ますが、既に全て調理されていてはそれもわかりません。

試食会では、1品ごとに提供するべきです。

試作会と試食会、その違いを理解し正しく運用することで、より魅力的な商品に仕上げることが可能になるばかりか、効率よく短期間で開発作業を進めることが可能になります。

この開発手法が通常業務となると、今までよりも楽に新商品を開発出来るようになります。

どうか、お客様のためにより魅力的な商品を、世に送り出してください!

大きく期待しております!


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