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今更の原価の話ですが、原価には3種類あることをご存じですか?この事実を知らないと資金ショートして経営が緊迫してしまいます。

宇宙一外食産業が好きな須田です。

今日から何度かに分けて、コスト意識と正しいコストコントロールとは、というテーマで記事を書きます。

コストと言っても範囲が広いので、ここのところは商品についてのお話しを連続しているので、食材原価についてフォーカスします。

さて、先ず原価には3種類あります。
そんな話は聞いたことが無いとお考えかもしれませんが、実際には3種類あります。

この3種類あるという考え方は、一般的な考え方ではありませんが、それゆえに一般的な考え方だけを知っている方の多くは、不幸な結果になっています。

その不幸な結果になる原因の大きな部分が、この原価には3種類有るということを知らないからです。

では、ひとつずつ解説していきます。

一つ目は、レシピ原価。

商品を考える時に、レシピを作り原価と原価率を設定します。
何方でもやることと思います。
この商品の原価はいくらで原価率は何パーセントと設定します。
この商品原価率を基準にして、店舗運営の原価率を設定します。

二つ目は、棚卸原価

通常、ひと月ごとに棚卸を行います。
面倒な作業ですが、実際に使用した食材の量と額を把握するために、必要な作業です。
会社によって様々な考え方がありますが、棚卸をすることで、実使用量と実使用額が見えてきます。

三つめは、仕入原価です。

通常仕入は、月ごとに決済します。
今月の末日までに仕入れた食材は今月末で締切、来月以降の指定された日に支払います。

私は、これを運営原価と、経営原価と言っています。

私は、棚卸原価のことを、店舗運営にかかった原価なので、運営原価と言い、売上と支払いというお金の流れに関係する原価なので、経営原価と呼んでいます。

冒頭にお伝えした3種類の原価とは、レシピ原価、運営原価、経営原価です。

このレシピ原価と、運営原価と、経営原価の違いを、よく理解していないと資金繰りに緊迫することになるかもしれません。

この3つの原価が存在していること、この原価の違いが運営にブレを生じさせる、混乱を起こしている要素と成っています。

例えば、レシピ上では平均原価率28%なのに、実際に棚卸額を計算してみると30%になってたことがありませんか?

また、棚卸では30%とまだ低い原価率なのに、実際に仕入れ先にお金を支払っていくと、資金ショートしてしまいそうになり、大慌てしたということはありませんか。

これらの原因は全て、原価には種類があることを理解していないからです。

解説していきます。
レシピ原価は、その1品を調理するための原材料費が明確化されています。
一般的に、この一品当たりの原価を、大きな意味で原価と捉えています。
1品あたりの原価はここで設定しますので、ここの数値が基準となり、平均原価率が算出されます。

棚卸は、実使用量が明確になります。
多くの財務関係者は棚卸が実使用量なので、正しい原価はここでわかると言います。
これは事実の一側面ですが、全てではありません。

実際に当該月で使用した原材料費の合計は、棚卸で明確になります。
レシピ原価よりも正確に使用した材料費が、金額として明確になります。
これが実際の店舗運営にかかった原価です。
これを運営原価と、私は言っています。

三つ目は、当該月に仕入れた原材料費の総額が解ります。
その月の営業成績と全く連動することなく、その月の締め日までに仕入れた金額がハッキリとします。
仮に、28日にある食材が切れかかっていて、発注をかけて納品が29日になります。
翌日の30日に締めます。

30日までにその材料を使う料理のオーダーがなかったとしても、その材料は仕入れています。
しかも発注するロットは、1ケース、1袋、1缶等決まっています。
29日30日に使うかもしれない、わずかな使用量は仕入れられませんので、当然決められたロットで仕入れています。
仮にその材料を使う注文が入らなくとも、仕入れは行われて、仕入れ原価として計上されます。

この三つの原価の違いを、ご理解いただけたでしょうか。

この違いがあるにも関わらず、「原価」とひとくくりにされているのが、飲食業の実態です。

非常に危険なことです。

店舗では、レシピ以外の原価が、材料費が、沢山かかっています。
商品に使用している以外に、調理の際に使う揚げ油とか、テーブル上の調味料とか、下味をつける段階の仕込み調味料や、賄いも含まれますが、見えていない大きくは認識していない商材と金額があります。

そもそも、発注ロットが決まっている、締め日ごとに仕入額が決まるので、実際の売上と連動していないのが実情です。

私が事業計画で出す原価は、三つ目の経営原価と言っている原価です。

要するに、当該月で仕入れる額で事業計画を出しています。

食材をカテゴリーに分けて、メニュー内容と使用する食材を考慮して、実際にそれらのカテゴリーの商材を、1日にいくらくらい買い取るかを考えて算出しています。

肉なら1日にいくら買うな、お酒なら1日に生樽を何個買うかを考えて算出します。

この記事を読まれている方は、店舗運営を行っている方々ばかりなので、生樽が1日に2本空くのか3本空くのかは、すぐに想像が出来ると思います。

毎日2本空くのなら3本仕入れて、必ず1本の予備は持っておくと思います。
たまたま飲む量が多い時には、3本目の封を切ります。
翌日の営業開始時に生樽が無いことも考えられるので、必ず1本は店舗在庫にしておきます。
すると、1回目に3樽、額にして30,000程度、2回目以降は2樽、20,000程度と見えてきます。
立地によっては、週末は増えるかもしれませんし、休業するかもしれません。
この運営上買い取る量を基準に、月額でカテゴリーごとに仕入額を出していきます。

これが、正しい経営原価の計画の立て方です。

ここまでをご理解いただけた段階で、売上と仕入れは実は連動しているようで、実際には連動していないことをご理解いただけたでしょうか。

月初は前月仕入れた残りの材料が使えますし、月末は使用していない多くの在庫が来月に回っていきます。
しかし、仕入れの締め日は月末なので、月末までに仕入れた商材は全てその月の仕入れ原価となります。
しかし、その月に支払う材料費は、前月の仕入れの支払いです。

5月の仕入れは6月に払います。
5月の売上で4月分を払い、6月の売上で5月分を払います。

これをキャッシュフローと呼びます。
キャッシュフローとは、お金の流れのことです。

仮に5月がものすごく忙しくて、売上が良かったとしましょう。
いつもは月商500万のところが、5月は600万いったとしましょう。

4月は480万だったとすると、この4月5月6月の平均月商は526万ですが、平均月商500万の30%の150万が平均原価と仮定します。

この考え方が、事業計画で一般的に想定されるやり方の元となる考え方です。
平均月商に対して、原価率は何パーセントとして設定します。
この数値を見て、高い低い、利益が出る出ないと事業計画をやりくりしていきます。

実際はどうなるかと言いますと、4月は480万の月商、すると仕入れは144万。
この144万は5月の売上から支払われます。
5月は月商が600万もいったので、144万の支払いは苦になりません。
手元にはいつもよりも少し多めに資金が残ります。

問題は6月です。
6月の売上が平均の500万行けば、問題はまだ大きくはなりません。

6月の500万の売上から、5月の600万の売上の仕入れ額180万を、この5月の売上から捻出します。
勿論、5月に支払った後に残った資金と併せて支払いますが、180万の支払いは大きな負担となります。
5月の売上500万、5月の支払いは180万、実に原価率36%です。
平均原価率30%の設定ですが、5月の支払いは想定値よりも6%も多くなります。

この1か月遅れの資金の流れをきちんと把握しておかないと、資金ショートを起こしてしまう場合があります。

これが店舗運営と会社経営の違いにおける資金の流れになりますが、売上と原価と資金の流れは、全く別建てで考えなければならないことだと、ご理解いただけると思います。

ですから、大きな売上が行ったときは喜びますが、翌月には大きな売上に伴った大きな支払いがあるということです。

ですから、大きな売上を喜ぶことも大切な要素ですが、大きな売上の次月の売上が非常に大事になってくるということです。

当月の大きな売上=次月の大きな支払い という公式が成り立ちます。

この資金の流れを常に考えて、お客様とスタッフと事業に向き合うのが経営者の常となります。

ここが店長として店舗運営のみを任されていた時と、経営者となって会社経営を行うことの一番の大きな違いです。

店長の時は、棚卸原価を実使用料として会社に報告して、原価率何パーセント、利益は何パーセントと報告していましたが、その時本社では、購買部の担当者とベンダーさんから上がって来る請求書の額をチェックして、支払い計画を立てていました。

しかし、現場を任されている店長には、なかなかその情報がおりてきません。
ただ、やみくもに原価を下げろ、仕入れを抑えろとしか命令されません。

すると、反発心が目覚めてきます。
自分たちは、想定通りに原価を抑えているのに、なぜこれ以上に抑えろと言われるのか、これ以上下げるとお客様に価値を提供できないと考えます。

しかし、本社では支払いに追われているわけです。

この様に、原価は仕入れ額を基準として計画して、実際はキャッシュフローを考えて店舗運営と会社経営を成り立たせることが、経営者には必要な要素です。

店舗運営者であった、店長時代から、起業をすることで、店舗運営と、会社経営を行う起業家になります。

この違いを深く認識して、実際に店舗運営に向かうことが大切です。

このことから、私はあることをいつも提案しています。
それは対前年売上との比較を止めて、対前月との比較をするようにおすすめしています。

曜日構成も、天候も、経済状況も違っている前年を比較の対象にしたとしても、余り意味を持ちません。
実際に現場では、「日曜日が1日違うから、天候がどうだったから」と、違う要素を取り上げ、実際には同じような状況では比較できないなと言い訳をしながら、対前を比較しています。

これに何の意味があるのか、いつも不思議に思っています。

ですから、対前月を比較対象とする方が、実際に流れる資金を考慮すると、現実的と言えます。

前の月と比較して、売上がどうか、客数がどうか、客単価がどうかを検討する方がすぐに手を打つことが出来ます。

1年も前のことを比較しても、行動が遅くなってしまいます。
去年と比較して、客数が落ちていますねと言ったところで、今すぐに手を打つとは思えません。
今月が、前月よりも客数や客単価が大きく落ち込んでいるのなら、もっと緊迫感をもってすぐに手を打つと思います。

ですから、原価とキャッシュフローと月次の動向を鑑みながら、会社経営を行い、常に早い行動を起こせる材料を身の回りに置くことが起業家、経営者にとって最も大事なことです。

原価の違いを深く理解して、商品設計に反映させ、利益確保にもっと貪欲になるべきです。

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