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少女と毒-そして切なく甘い別れの歌

少女が父親の水差しに毒の白い粉を入れ、父親が死ぬ場面からこの映画は始まった。

ノスタルジックなピアノの音。スペイン内戦時代の夫の写真を飾り死を待ち望む祖母。記憶の母親は癌の痛みに何度も苦しみ、そして楽になる薬だと白い粉を少女にみせる。

一見”今は昔”から始める物語のようで、2つの時間が錯綜し、しかしそこが現在である事を示す強烈な楔が

porque te vasの甘い歌声であった。

映画の内容と歌詞には全く共通項が無い、母親はとうに死に、残された3姉妹に恋愛など無縁、面倒をみるために移住した叔母は怒ってばかりで

唄の違和感も含めてシュールな世界が続く。説明は難しい、あらすじにも意味が無い、映画を観てくれ、皮肉と虚無と狂気を楽しんでくれとしかいえない。父親は腹上死で白い粉は毒では無く、飲ませた叔母は死なず、少女達は学校に通う。

大学時代に内容もわからずに片っ端から見続けた札幌の小劇場での衝撃の出会いであった。

主演のアナ・トレントや癌の痛みに苦しみながら死んだ母親役のチャップリンは強烈な個性で、映画の印象も強いが、唄も観客の心に残る様で、のちのち多くのカバーを生む。

孤独な3姉妹のコスチューム遊びのダンスシーンに、この唄は流れる。華やかだが閉鎖された世界の孤独が強調される。


では改めて、唄だけの世界をどうぞ。可愛く切なく甘い歌謡曲。

カバーされた年をみながら。



実は日本でも。


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