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カリフォルニアで本屋を作る #6 本屋をはじめたいんだ、ってレコード屋さんに伝えてみたら

 本屋さんをはじめるための場所が決定しました。
 探しはじめて半年で見つかったのは運が良いよね。きっと。

 オープンの場所はサン・ガブリエル(ゲイブリエル、と発音する)という街、San Gabriel Missionという古い教会区の中にあり、教会自体はアメリカ建国よりも歴史が古い。寺内町といった感じで、そのエリアはとても穏やかな雰囲気。

本屋をここではじめます

 建物がとてもいい感じの良いデザインなのは、オーナーのDalesさん自身がアーティストで、仲間たちと共に店のデザインしながら、徐々に今の外観を作り上げたそう。
 ギャラリー兼画材とフレーム作りの店Mission Art Centerは、70年末からつい数年前にDalesさんが引退されるまで地元の人に愛されてきた場所。
 
 DalesさんとMission Art Centerについてはまた別の機会に書こうと思う。
 
 今回は、そもそもどうしてこの建物に辿り着いたのか、のお話。
 偶然が重なって出会ってしまう、というテーマで書いてみよう。

LA行ったり来たり

 街から街へと物件探しを続けて、それでもナカナカ良いのはうまく見つからず、見つかっても値段があわなかったり、そもそも本屋に理解がなく門前払いされることもしばしば。

 気持ちも落ち込むこともあったけれど、好転のきっかけは予期せぬ旧友の訪問からだった。 

 京都のレコード屋のジジ(RECORD SHOP GG)さんが、岩手のBOOKNERDの早坂さんと共にLAの買い付けに来たのが1月の末。

ジジさん(左)と早坂さん(右)とベニスビーチの近くにて

 
「ウヘー(私)さん、買い付け手伝ってよー」とジジさんから連絡あって、すんなりと快諾した。

 ジジさんとは僕が10年以上前に昔京都に住んでいた時からの仲。
 
 とはいえ、ジジさんと最後にポートランドで会ってから5、6年過ぎていた。

 また、僕という人は、何年かに一度、放浪の果てに連絡先がわからなくなる、みたいなところがあるのだけれど、連絡先がわからなくなっても、彼とはどうしてかつながってしまう、みたいなところがあって面白い。
 
 それに昔僕が音楽のライブをしていた頃、ジジさんはよくお客さんとして来てくれていた。
 
 そんな彼のお願いだ、買い付けのドライバーをするぐらいは容易い。

 こちらも新しく本屋をはじめようとする時だ、ここはノっとく方が楽しいに違いない

 それにLAは超がつくほどの車社会、街なかの駐車場探しとか、距離感に慣れてないとおそらく買い付けの効率悪くもなるだろう、これは知ってる人が案内した方がいい。それにあたらめてLA界隈の本屋とレコ屋を巡ってみれば何か自分にとっても発見があるやもしれぬ。

 とまぁ、そのような次第で、一方はレコード屋巡り、一方は本屋巡り、されど車は一台なので、あっちへこっちへと動き回った。

 何かに取り憑かれたように一心不乱にレコードを漁るジジさん。

 一冊一冊を美味い葉巻の如くジックリと堪能する早坂さん。
 
 二人ともスタイルは違えど、好きなものを追求する人としての魅力に溢れている。

早坂さん@Counterpoint Records & Books
「人から人へと本を旅させる仕事」に従事することの喜びを伝えてくれた。

 僕自身が本屋をはじめようとする時期に、この好対照のお二人が偶然にも渡米してきて、本や音楽やお店のことで雑談でワイワイできたのは、なんとも運の良いことだった。

 二人はそんなつもりはないかもしれないけれども、僕に取ってはアドバイスとなるような言葉を沢山いただけたように思う。

 僕としても、本屋やレコード屋の場所を知っていることで、人に喜ばれることなんて、普段ナカナカないのだけれども、二人の買い付けに少しは役に立てて良かったかな。

 そして、LA買い付けの数日間のことはZINEにてまとめられているみたい。

 LA行ったり来たり(BOOKNERD)
 LA行ったり来たり(RECORD SHOP GG)

本屋をはじめたいんだ、ってレコード屋に伝えてみたら


 さて、二人が日本へ帰国した後に、本屋の店舗探しにも展開があった。

 ある日の夕方(日本時間で朝)に日本からLINEが入った。
 ジジさんからだった。
 
 アメリカのレコードを買ったので、On Maritimeというレコード屋に時間がある時にでも引き取りに行って欲しいとのこと。
 
 On Maritimeはハイランド・パークという街にある。ハイランド・パークはヒップ・スターが多く住んでいて、ユニークな店と音楽のイベントも盛んに行われている場所だ。
 
 僕はたまたまハイランド・パークの近くにいたので、今から行ってレコード取って来るよ、と快諾。

 ここもやっぱりノっておこう!

 On Maritimeにいってみると、店主は何とも気のいい感じ兄弟二人で、こちらで言うeasy goingという言葉がピッタリの人柄だ。
 彼等が話しやすいのもあって、レコードを受け取ると僕も唐突に聞いてみた。

「ねぇ、このへんに本屋さん、はじめれる場所ないかしらん?  僕、本屋はじめたくて、物件探してるんだけど」

 では、と店主のお兄ちゃんはその場で(ほとんど間髪入れずに)彼の知り合いの不動産屋に電話してくれる。その対応に驚く間もなく、僕に携帯電話ごと渡して、僕は少しドキドキしながら、本屋のことや予算のことやサイズ感について、電話の向こうの不動産屋さんに説明する。

 そうすると不動産屋はこう伝えてきた。

 「ハイランド・パークは、君の予算では高すぎる。が、そこからさほど遠くない場所に一つ、面白い場所がある。そこなら本屋にあうかもしれないし、今から見にこれるか?」

 もちろん。今から、すぐ行くよ!

 という流れで、Mission Art Centerに出会うことになる。
 
 そして、それはどんな物件サイトにもリストされていない建物だった。

 まさに人づてでしか知り得なかった場所。

 そして、ジジさんのお使い仕事がなければ、、
と今思っても不思議な気持ちになる。

 でも上手くいく時は、大体そんなものかも。
 それにしても、僕はレコード屋さんのつながりによって助けられてるな。

 続きは次の回に書きましょう。
  


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