歌の録音-ボーカルレコーディングが格安

レコーディングでプロシンガーはどんな注文(ディレクション)を受けてるのか?という話

サクセスボイスの岩谷です。

実は僕はボイストレーニングを普通の受講生の方だけでなく、ボイストレーナーを目指す方やすでに仕事している方に向けて「ボイストレーナーアカデミー」という勉強会を主催しています。

今日は現在育てているボイストレーナーの卵たち、アカデミー生3名とガチンコレッスンでした。

一人は現役大学生。
一人はサラリーマン。
一人は司会業となかなか面白いメンツです。

3人とも真剣に音楽の道を歩んでいます。

そんな彼らに「プロの歌とは何ぞや?」という話をするんですが、その中で受けた話を今日はご紹介しましょう。

レッスンの内容は完コピ

今日のアカデミーのテーマですが、「完コピ」でした。

完コピというのは、曲を完全にコピーすることでして、息づかいや音符一つ一つも完全に再現していきます。

これはモノマネとは大きく違います。
モノマネはその人っぽく歌うのですが、完コピは完全再現です。

正直難易度は段違いに跳ね上がります。

今回の講義では、その完コピをどのようにスピーディーに行うことができるのかをあの手この手で伝授していました。

プロにとっての上手さは引き出しの多さ

その中でなぜこの完コピをしなければいけないか?というと、ひとえにテクニックやレパートリーを増やすためです。

いわゆる引き出しというやつです。

引き出しの多さがそのままプロの歌手の上手さに直結します。

なぜなら、こんな注文がくるんです

例えば、CMソングのレコーディングの現場に行ったとしましょう。

大体の現場では1週間前から前日あたりに曲の譜面と歌詞が渡されます。
場合によっては当日渡されることも多いです。

で、録音ブースに入ると大体は「まずは軽く歌ってみて」と言われます。
これは録音テストだったりして、本番採用にはほとんどなりません。
(なったこともあるけど)

そこから「じゃあ本番いってみましょう!」となります。

そこでOKをもらえれば御の字なんですが、場合によっては何回かテイストを変えて歌う場合もあるんです。

その時にこんな注文が来ます。

「少し明るめの声でお願いします」

「ちょっと若めの声でお願いします」

「もうちょいリズムにタイトでお願いします」

面白いディレクションになると、

「えーと、ちょっとマイケル(ジャクソン)入った感じでお願いします」とか。

岩谷の苦い録音の思い出

こういうディレクションが来た時にマイケルジャクソンを歌ったことがなかったら非常に困ります。

というか、僕は困りました。
恥ずかしながら僕は声質に合わないだろうとマイケルジャクソンは避けて通ってきました。

なので、めちゃくちゃ困った。
もちろん、とりあえずその場しのぎのモノマネでその現場はやり過ごしましたが、なんともやりきれない現場となってしまいました。

汚名返上なるか・・・?

その後、僕はめちゃくちゃマイケルジャクソンの完コピを行いました。

勿論難しい曲はありましたし、いまだにどう歌えばいいか分からない曲はあります。

しかし、そういう練習をやっている中で機会はやってきました。

あるレコーディング現場でのことです。

「ちょっとこの曲はマイケルっぽい感じを入れていきたい」
プロデューサーさんが言いました。

待ってました!とばかりに僕はマイケルの質感を前面に押し出した歌い方を出しました。

すると、、、「なんか違うんだよね」というお言葉。
もちろん凹みます。

そして言われたのが、「今のはBADの感じなんだけど、Human natureのマイケルが欲しい」とのこと。

やっててよかった完コピ

この言葉で僕は迷わなくなりました。
なぜなら、その曲を知っているから。

次のテイクでは一発OKが出ました。

このようにコピーしたことがある楽曲が題材だったりすると、現場でもすぐに対応ができます。

ディレクションは人それぞれ

ただこういう現場って基本的にカラオケの歌どりやCMソングなどの現場が多いのです。

これが作品作りになると、また違ってきたりします。

ある人は「もっと青っぽい音で」とか
ある人は「もーめっちゃカッコよくして」とか
正確に「何度の音をもっと強調して」とか

人それぞれです。

僕らプロシンガーはそれぞれの現場に合わせて理想の歌を歌うために練習なければいけません。

そして、イメージを正確に伝えるためプロデューサーさんたちはあの手この手の表現でディレクションしていただけます。

実はスタジオってそういう人の血の通った楽しい場所でもあったりします。

もっとコミュニケーション上手にならなければいけません。

本日もお読みいただきありがとうございました。

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