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“川柳EXPO 2024”参加作 “Locked Joe: The 12 months of chastity”のガイダンス

“#川柳EXPO 2024”が好評発売中です.

“川柳EXPO 2024”に, 私は“Locked Joe: The 12 months of chastity”という連作を載せて頂いています.
BDSMのエロティシズムとポエジーが交錯した特殊な作品で, 私の背景情報を知らなければ読み取り方が不安かと思われますので, 簡単な解説を記しておこうと思います. 自解という程には作品自体に踏み込まず、あくまでも作品の背景のガイダンスのような文章になります. とりとめのない随想ですが, 気楽に読んで頂けたら幸いです.

‘Joe’とは. Joeとは私の夫, 或いは’あなたの中の男性性の表徴’です.
Joeと作中主体の私は夫婦ですが, エシカル•ノンモノガミー(合意の下の非一夫一婦制)でポリフィデリティ(三人以上のパートナーシップで, そのメンバー内の人とのみ性的関係を持つことが認められる), そして二人は揃って一人のDominant と主従契約関係にあるsubmissiveなのです.
(Dom/subとはBDSMの概念の一つで支配と服従を旨とする関係性. SMやフェティシズム, セックスや恋愛と結びついたり, ライフスタイルそのものの場合など様々です.)
私達の在り方は人権という一神教に覆われた現代の価値観と相反する, 多神教の神話の時代の身体感覚への回帰と言えるでしょう. そこではカッコ良く美しい者/力が強く富んだ者への憧れと畏れこそが絶対的な意味とリアリティを持ちます.
さて, Dom/subの主従関係の根底には, [祝祭 - 供犠]の構図があります.
即ちJoeは生け贄として男性器をDomに管理されています. 自分の意思で射精する事も許されません. その為, 常時貞操具を装着させられています.
(当然あなたは, 切り落とされたウラヌス神の男性器や失われたオシリス神の男性器を想起すべきです.)
Joeと私は私達の’神であるDom’とセックスをします. それは常人には味わえぬエクスタシー(脱我)を齎します. 私達は’Domに選ばれた特別なsub’なのです. その栄誉と祝祭に対し, Joeは自分自身, 私はJoeへの性欲を絶たれる事でDomへの純粋な供犠となります.
そうして’Joeは私と神であるDomとの間に生まれる子と化し, 私は女神へと昇華される’のです.
私達subは愛するDomに殺されながら生きている. 神話的な性エネルギーのダイナミズムに生かされています. そこにモラルは無く, ただ’力’が有るのみです.

Ju-no 私より良い 艮 夫より良い
/音羽

‘艮’とは神であるDomの巨大な男性器.
私もJoeもその神性に触れる事で’良(艮に光が差した状態)い’自分自身を知ってしまうのです. 神秘主義的には’光明を得る’と言う境地でしょう.

マゾヒストの多くは自己肯定感が低かったり, 或いは逆にプライドが高過ぎたりします. つまりエゴイストなのです. ですがJoeはマゾである前にsubmissiveであるようDomに躾けられています. subにエゴは要りません. 頭も心も欲望も全てを主たるDomに全託しているのです.
現代人は死んだ神の前に平等に貧しく人権を求めているようです. 対して私達は生きた神の下に幸福と快楽を約束されています. 豊かなる服従です.
(私達は実際, 経済的にも際限の無い恩寵を賜っています. 家も車もハイブランドも欲しい物は全て主が与えて下さいます.
人権とは巨大な国家権力への抵抗から発生した革命思想の副産物に過ぎません. 絶対的なカリスマを持つ主との信頼関係で成り立つ小さなファミリーには, 人権は不必要です. そこには潔いギブとテイク, 剥き出しの[祝祭 - 供犠]があるのです.)

‘Joe’とは一体何なのでしょう. 男性とは一体何なのでしょう.
夫は自由でモテていた昔よりも, 不自由でメス化した’Joe’である今の方が幸福そうです. 私は男性に平等は相応しくないと直観しています. 男性の身体のメカニズムは, ヒエラルキーを望んでいるのだと. 男性(男性を内面化した女性を含む)が発明する全ての思想や技術がその事を直接的乃至逆説的に自白しているように感じるのです. (未だ研究の途中なのであくまでも私の個人的な感覚ですが.)
きっと私はずっとJoeを観察し, 男性の秘密を探り続けるのでしょう.
主たるDomとJoeが同性である事は, 宇宙大のギャグにも優しく美しいBLにも思われます. 私は二人の中に, ’永遠のアニムス’を感じ取っているのかも知れません. それは女性自身を知る事であり, 同時に性差を超えて進化しようとする意識でもあります. 私達は’来世の神話’を生きているのです.

私の力不足で, 川柳と言うよりは短歌のようなバイブスの作品にはなりますが, “Locked Joe: The 12 months of chastity”を私は誇らしく送り出しました.
これはとても危険な, 政治的な作品です. 現代的な価値観と時間軸の政治を拒絶する, まつりごと=祭祀としての. アナーキズムとしての.
是非とも深読みして頂き, クスリと笑ったりゾッと慄いて頂けたら幸いです.

以下補足情報.
1). バタイユの“呪われた部分 有用性の限界”, “太陽肛門”, アルトーの“ヘリオガバルス: あるいは戴冠せるアナーキスト”, ドゥルーズの“アンチ•オイディプス”を参照されると, よりこの連作をお楽しみ頂けるかと思います.
2). 画像はJoeが嵌めている貞操具, HolyTrainer V5です.
鍵を持っているのは, 私です.♡

HolyTrainer V5

追記:

ママの若い頃にはBLはやおいと呼ばれていて, 当時から腐女子達は敏感に時代を先取り(或いは先祖返り)し男性同性愛をモチーフにしていました. 半世紀を経て, BLのドラマは流行し, 若いゲイの子達は堂々とカミングアウトし, ストレートの子達でさえBLの影響で腕を組んでトイレに行くなどラブリーでキュートな時代となったようです.
そして今, そのBLのジャンルにDom/subユニバースという括りがあり, BDSMに拠った世界観の作品が一定の支持を得ているのだとか.
つまり半世紀後にはDom/subが偏見に晒されたりしない時代になっているかも知れない. 現在において私達の秘密の性癖であるBDSMが未来においては市民権を得ているかも知れない.
ポリアモリーやポリフィデリティについても同様です.
常識とはどんどんと変化していくのだと言う事を書き添えておこうと思います.

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