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ダイスと確率の話

 この記事は定期ゲ・鶏 Advent Calendar 2020の19日目の記事です。
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 ヘッダーは昔撮った適当なダイスの写真です。よく見ると「10d6で6が出てない」ですね(「ダイスって……なんだ……?」の項参照)(公開してから気づいた)。

19日目のラインナップ
松・やすかけさん
竹・GTさん
梅・れもうんさん
樅・へるつさん
鶏・ここ

 改めて見ても参加者多いっすね。すごいな……。

 どうも、はじめまして。ご存じの方はこんにちは。六連 昴(むつら すばる)と申すものです。梅12日目の記事を読んでくださった方(いる?)はありがとうございます。今回は多分短いです。


お前誰だよ?

 まずは自己紹介から。梅12日目のやつをコピペして持ってきてちょっといじっただけなので、そちらを読んだ方はほぼ同じ文面を見ることになります。適宜飛ばしてね。

PC一覧
・コトシタ一期 白黒笹乃と仲間たち
・ソレナリ ルカ・ワーハイト
・ソラニワ エルバ・ビッグディッパー&『地霊』の魔女
・グリマルシェ アッサム・オレンジペコ
・不奇跡世界 カルド・オーガニック
・クリトラ バニティ&エラー、その他いろいろ

 コトシタから定期界隈に参入した新参者、チキン&最近リアルが忙しいのでソロール中心に隅っこの方でわいわいしてます。PCの名前を並べるより

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 こういうアイコンとか

画像2

 こういうアイコンとかを貼った方が見覚えある人が多いかもしれません。コトシタではいくつかやらかしをしたりもしたのでもしかしたら悪い印象がある人もいるかも。その節は本当にすみませんでした。
 定期以外でいくと普段は一次創作中心にTwitterに設定を垂れ流したり、ソシャゲやったり、絵を描いたりしてます。財団職員(SCP財団サイトメンバー)の末席にいますが、tale一本書いたところで活動が止まってます。Twitterは基本全ジャンルごちゃ混ぜの雑多垢一個で回してますが、最近はリアルの影響で普段はTwitterログアウトしてるので、ソラニワあたりからの参戦の人はTwitter接触少なめですね。
 あとは、サンダーボルトスクリュー氏(竹11日目)主催のうちよそRPG企画でテストプレイ用ゲームの雛形を作ったりしたのでそっちで知ってる人もいるかも。その他いくつかのDiscordサーバーで賑やかしもやったりしていますね。こんなところでしょうか。
 ……自己紹介だけで1000字近くあるってマジ? ではそろそろ本題に入りましょう。


ダイスを振るのは楽しい

 みなさん、ダイスを振るのは好きですかー!? おれはだいすきーー!! 今回はマジでダイスの話(というか確率の話)しかする予定ないので、好きじゃなかったら帰っていいよ! なんならこのテンションについていけない人も帰っていいよ!!
 というわけで、この記事では定期ゲームのチャットにおけるダイスの話をします。ゲーム面のランダム要素の話は梅5日目のゆうさんの記事などに詳しいのでそちらをご覧ください。
 ダイスを振る、という行為は魅力的です。自分の意思に従わない乱数によって生成される数字が期待どおりにいくかいかないかで何らかの命運が決まる。ハラハラしますね。チャットにダイス機能があるとなんかとりあえず振ってみたくなる、人間そういうもんだと思います(クソデカ主語)。適当に振るのはもちろんのこと、ダイスは戦闘ロール等にも超役に立ちます。対等な二人によるガチンコダイス勝負から、シリアスなイベントレイドのジャッジ、果ては唐突なギャグソロールの決着まで、ダイスは公平です。これは使うしかない。
 でもちょっと待って!! 適当にダイスを振りすぎて、有利になりすぎたり不利になりすぎたりしてませんか?? 対等なつもりの勝負が実は超不公平でした、なんてことになったら体育館裏に呼び出されてベキボコにされても文句は言えません。ということで、この記事では「こういう風に振ったらだいたいこんな感じの確率になるよ」というのを見ていきたいと思います。
 なお、私も確率にわかなので間違ってることは多分ありますし、分かりやすさ優先で厳密にしてないところもありますが、生暖かい目で見てね。


ダイスって……なんだ……?

 ここでは確率についてざっくり説明します。本当は確率の基礎から書こうと思ってたんですけど、前提事項が多すぎてバカ長くなるのでかなりはしょってある、かつアバウトにしてあります。有識者が見ると「バッカモーン!!」って殴りかかりたくなるようなことがわりと書かれているので、正確なことを知りたい人は高校数学の数学Aの「場合の数と確率」っていう単元を履修してください。というか、この単元ちゃんと習得したらこの記事なくてもダイスの確率ぐらいホイホイ出せるよ。学校の勉強もバカにできませんね。また、「そんなん知ってるよ」っていう人や「はよ本題入れや」という人は飛ばしてもらっても構いません。ただし飛ばした結果わからんくなってもそれは知らん。

 まず用語の説明からいきましょう。ここに6面ダイスがあるじゃろ? これをこうして、こうじゃ!(コロコロコロ……3)
 はい、これが「試行」です。教科書的に言うと「同じ条件のもとで繰り返すことができる実験や観測」となりますが、まあこれはダイスの話なので、ダイスを振るみたいなランダム要素を使うことが試行だと思ってくれていいです。
 で、3の目が出てますね。これが「事象」です。「試行の結果起こる事柄」、ダイスだと出た目がなにか、どういう特徴かというのが事象です。例えばさっきのように「3の目が出る」も事象だし、「奇数の目が出る」も事象です。なんなら「数字が出る」も事象として成立します。起こる確率が1の事象ですね。逆に「サイコロが爆発する」とかはニトログリセリンでサイコロを作ったりしない限り確率0の事象です。「試行」すると「事象」が起きる。これが確率的な世界の見方です。
 さて、サイコロのそれぞれの目が出る確率は、それぞれいくつでしょう? 「面につけられた塗料の重みや削られた部分の重みで微妙に確率が──」とか「コンピューターで作る乱数は疑似乱数だから完全な乱数では──」「一様でない素材で作られたグラサイと呼ばれるイカサマサイコロは──」とかも言われますが、まあ無視できるとして。同じですよね? 1も2も6も等しく1/6ですよね? これを「同様に確からしい」と言います。一個のダイスの各出目が出る確率はすべて等しい、これを前提にしないとなんかいろんなものが計算不可能になります。
 ところで、この「1/6」って何を意味しているんでしょう? おいおい待てよと。さっき自分で出しといて何を言っているんだと。そう言いたくなる気持ちもわかります。でもね昴さん気づいちゃったんです、これ説明しないと後の説明で困ることに。というわけで見ていきましょう。先程の6面ダイスと同じく立方体型のダイスを用意しました。ただし、六つある面には1が一つ、2が二つ、3が三つ書かれています。このダイスで1, 2, 3が出る確率はそれぞれいくつでしょう。1と2と3しか出ないからどれも1/3でしょうか。何か違う気がしますね。だって書かれてる個数が違うもん。ここでさっき言ってた「同様に確からしい」の話を思い出してください。先程同様に確からしいことの根拠にどの面も条件が同じであることを挙げました。そしてこの時は、それぞれの面にそれぞれ違う数字が書かれていましたね。じゃあこうしましょう。さっきの123ダイスの二つの2と三つの3に、A, B, Cと添字を書いて区別できるようにしてみました。これで出る目は1, 2A, 2B, 3A, 3B, 3Cの六つになりましたね。塗料の重みとかはやっぱり無視できるとして、1は一つしかないから1/6で良さそうです。2はどうでしょう。六つあるうちに2Aと2Bの二つありますから、これは2/6=1/3となります。3も同じく六つあるうちの三つで3/6=1/2です。もうお分かりでしょう。まず、出る目を全部区別します。区別されて1通りしかなくなった事象を、「根元事象」と言います。そして、その個数を数えます。分子は欲しい事象に含まれる分だけ、分母はすべてのパターン──「全事象」に含まれる分だけ。こうすると、事象が起こる確率は(その事象に含まれる根元事象の数)/(全事象に含まれる根元事象の数)と表されることがわかります。また、根元事象が起こる確率は1/(全事象に含まれる根元事象の数)となり、すべての根元事象が同様に確からしいこと、同様に確からしくなければならないことがわかります。さっきの123ダイスで「1が出る確率」と「2が出る確率」と「3が出る確率」は同様に確からしくないので、この3つを根元事象にはできません。
 では、次は6面ダイスをもう一個用意して、二個同時に振ってみましょう。分かりやすいように白いのと黒いのを用意しました。では……。(コロコロコロ……白4黒6) お、合計10。出目がいいですね。ところで、合計が10になるパターンは他にいくつあるでしょう? そして、それらの確率はいくつでしょう?
 ここで、「独立試行」と「排反事象」の話をしましょう。まず、ダイスを一個振ります。(コロコロコロ……4) そしてもう一個ダイスを振ろうと思いますが、このダイスの各出目が出る確率は、一個目と比べて変わりますか? …………変わりませんよ、騙されないでくださいね。「さっき4が出たから次は違う目が出るはず!」というのはよくある誤解です。こういう、前後の試行に確率が影響されない試行を「独立試行」といいます(後で教科書見る)。ではもうひとつ質問です。一個ダイスを振ったとき、「1の目が出る」のと「6の目が出る」のは同時に起きますか? 振ったらサイコロがまっぷたつになった場合とかは除きます。起きませんよね。こういう、「同時に起こらない事象」を「排反事象」といいます。そして、確率の重要な性質に、「独立試行同士が同時に起こる確率は掛け算で出せる(積の法則)」「排反事象同士のどれかが起こる確率は足し算で出せる(和の法則/加法定理)」があります(実際には積の方法と和の法則は確率ではなく場合の数の法則ですが、要するに分母と分子をそれぞれ計算した場合っていうことなのでまとめてやっちゃって大丈夫です。多分。不安なら分母と分子に分けて考えるといいと思います。加法定理は確率の定理です)。これを用いることで、先程の問いに答えましょう。
 まずは起こりうるパターンを全部出します。2d6の出目の合計が10になるパターンは、さっきの白4黒6に加え、二つの数字を入れ換えた白6黒4。それからゾロ目の白5黒5。この三つですね。
 あ、「2d6」は「6面ダイスを2個振る」という意味です。面の数と個数を自由に指定できるダイスを採用しているチャット、それから概ねめっちゃダイスを振る環境であるTRPGではよくある表記ですね。
 戻りましょう。では、いよいよ2d6が10になる確率を計算します。まずは一個ずつ計算しましょう。最初は白4黒6から。白ダイスが4になる確率は1/6、黒ダイスが6になる確率は同じく1/6ですので、積の法則から白4黒6になる確率は1/6×1/6=1/36となります。同じように白6黒4、白5黒5も計算すると、やはり1/36となります。そして、これらが同時には起こらないことを確認し、和の法則でドッキング! 1/36+1/36+1/36=3/36=1/12となりました。これで2d6が10になる確率が1/12であることがわかりましたね。やったあ!
 ということで、出目がどれも同様に確からしいダイスにおいては、ダイスをいくつか振ってなんらかの出目が出る確率は(その事象に含まれる根元事象の数)/(全事象に含まれる根元事象の数)=(欲しい出目の組み合わせ)/(全出目の組み合わせ)で出すことができます。この時、必ずダイスは区別してください。そうでないと根元事象にしたものが同様に確からしくなくなっておかしなことになります。この辺の話は多分後にも出てきます。
 最後に、「組み合わせ」と「余事象」の話をしましょう。この二つは知っておくと確率を出すのがめちゃくちゃ楽になります。
 まず組み合わせ。さらにもう一個ダイスを用意しました。赤いのです。この三つのダイスを振って、1が一つ、6が二つ出る確率を求めたいと思います。まずはさっきと同じように考えると、全事象は6^3=216。累乗知らん人はググれ。求める事象の根元事象は白1黒6赤6、白6黒1赤6、白6黒6赤1の3通り。なので求める確率は3/216=1/72です。この数だとこれでも大丈夫ですが、これが例えば「10d6で1が一個、2が二個、3が三個、4が四個出る確率」とかになると爆発しますね。何パターンあるんだお前。そこで登場するのが組み合わせ。「nCr」と書いて「n個の中からr個選ぶ組み合わせ」を意味します(ほんとはこのnとrは下付きなんだけど出し方わからん&多分環境によっては見えなくなっちゃうので断念)。この計算の方法はというとn!/(n-r)!r!となります。なんやて? まあまあ、まずは階乗の説明からしましょう。「2!」「6!」などのビックリマーク付きの数字は階乗というものであり、それぞれそのまま「2の階乗」「6の階乗」と読みます。で、こいつはなんなのかというと、1からビックリの横の数字までの整数を全部掛け算したものです。2!=1×2=2、6!=1×2×3×4×5×6=720というわけ。ね? 簡単でしょ? これでさっきのむにゃむにゃした式も理解できますね。なんでこんな式になるんだ? というのはググれば出ますが、ざっくりいうと、「まず順番を気にして並べた列(順列)を作って、同じ組でできてるやつのの個数で割る」という感じ。先に順列やっておくといいんですけど、ダイスで順列気にするケースってあんまりなくない? って思ったのではしょってあります(まあ、実はさっきの式のn!/(n-r)!の部分が順列の計算なんですけどね)。詳しくはググれ。
 では、さっきの「10d6で1が一個、2が二個、3が三個、4が四個出る確率」を計算してみましょう。まずは十個のダイスを全部区別します。色だとちょっと無理がある数なのでダイスA~Jとしましょう。で、欲しい出目は1+2+3+4=10、全部で十個とダイスの数と同じなので、どの目が出てもいいダイスはありませんね。なので、組み合わせの数を分子とする(根元事象が組み合わせ個ある)だけでよさそうです。これがフリーのダイスがある場合だとちょっとややこしくなります。
 では組み合わせていきましょう。まずは4が出るダイスを決めます。4が出るダイスは四個、ダイスの数は全部で十個ですから、十個のなかから四個選ぶ、10C4ですね。
 10!/(10-4)!4!
 =10!/6!4!  =10×9×8×7×6×5×4×3×2×1/(6×5×4×3×2×1)×(4×3×2×1)
 =10×9×8×7/4×3×2×1
 =210
 というわけで210通りみたいです。お気づきの人もいるかもしれませんが、n!/(n-r)!の部分はn!の後ろ側がきれいに約分できてnから一個ずつ下らせた整数をr個かける状態になります。つまり10P4(このPが順列です)なら10, 9, 8, 7の4個。わかりやすいね(そうか?)。
 次は3が出るダイスを決めます。すでに4が出るダイス四個は決めましたので、残りの六個から三個選ぶ、6C3となります。6×5×4/3×2×1=20通り。さっき選んだ4のダイスの210通りそれぞれについて20通りあるので、ここまでで210×20=4200通りあるということになります。ひえっ多……こんなん数えてられません。計算万歳。最後、2が出るダイスを決めます。1が出るダイスが残ってるって? いやいや、2が出るダイスを決めたら残りが1が出るダイスなんだから、1通りで計算不要なんですよ。nCn=1、これ覚えとくとお得です。ついでにnC0=1、nCr=nCn-r(約分してみよう。あるいは、さっきの階乗の式をよく見てみよう)も覚えておくといいですね。話がそれました。2が出るダイスは残る三つのダイスから選ぶので、3C2=3C1=3/1=3通り。やはり4200通りそれぞれに3通りずつなので12600通りです。こんなん数えてたら日が暮れますし、ミスも多発します。計算万歳。さて、やっと確率がわかります。計算機くんによると6^10=60466176だそうです。ヒイ……。全事象60466176通りに対し求める事象12600通り、
 12600/60466176
 =175/839808
 =0.000208380…
 約0.02%だそうです。ひっっっく。任意のガチャの最高レアより渋い(キャラ個別だと知りませんが全体でこれ切る確率の最高レアはないでしょさすがに)。狙って出すもんじゃないですねこれ。以上、組み合わせでした。
 続いては余事象。「10d6を振って少なくとも一つ6が出る確率」を出してみましょう。この「少なくとも一つ」という日本語は便利な言葉です。このワードだけで6が出るダイスの個数一個~十個の十パターン全網羅できちゃいます。そう、これ真面目に細切れにして計算しようと思うとえらいことになるんですね。えっと? (1/6)(5/6)^9×10C1+(1/6)^2×(5/6)^8×10C2+……。……やってられるか!! もっと楽に計算したい。できます。そう、余事象ならね。余事象というのは、「ある事象が起こらない確率」のこと。計算方法は簡単、(全事象の確率)-(起こってほしくない事象が起こる確率)。これだけです。さっきの確率の定義を見ると、全事象の確率は1であることがわかると思います。つまり、1-(起こってほしくない事象が起こる確率)と言い換えてもOKです。というか普通こう計算します。だって全事象の確率はいつも1だからね。ではこれを使ってさっきの確率を求めましょう。「10d6を振って少なくとも一つ6が出る確率」は言い換えると「10d6を振って一つも6が出ないことがない確率」です。なので、1-(10d6で一つも6が出ない確率)で計算できます。これならできそう! 10個全部で6以外の五つの目のどれかが出ればいいので、10d6で一つも6が出ない確率は(5/6)^10です。これを1から引いて、
 1-(5/6)^10
 =1-(9765625/60466176)
 =50700551/60466176
 =0.8384……
 ということで「10d6を振って少なくとも一つ6が出る確率」は約84%となりました。高いね。10d6で6が出ないことがあったらプチラッキー(アンラッキー?)だと思えばいいと思う。なお、「10d6を振ってどれか一つの目が出ない確率」は求めるのクソ面倒です。なんせ「1だけ出ない」「1と2が出ない」「1, 2, 3出ない」とかが重なりまくって存在しているので。さっき言ってたフリーのダイス問題が浮上してきたりもする。バカめんどくさくてとても出してられん確率もあるってことは覚えておくといいんじゃないかな。役に立つかは知らんけど。


考えてダイスが振りたい

 前置きがなげー!! ここから本編です。もにょもにょ覚え書きをしているとはいえこの段階で8000字超え、やはり短いは嘘だった。
 さて、ダイス振りの概論から行きます。この項もだるかったら飛ばしていいです多分。ダイスを振る場面には大きく二種類あると思います。一つは「判定」。ある値を目安(目標値)にして、ダイスで出した値(達成値)をそれと比較、行為が成功したか失敗したか決める場面です。クリティカルやファンブルなどもありますが、この場合成功と失敗がはっきり決まります。「数字惜しいからヒントあげるね」などの温情があったとしても、失敗は失敗です。でないと振った意味がない。もう一つは「数字生成」、ダイスを振り、出た目をそのまま用いて足したり引いたりかけたり代入したりします。「サンドバッグを1d999メートル吹き飛ばした!」とか「料理の出来は1d100-20だ!」とかがこれ。戦闘で見ると、命中判定が前者でダメージダイスが後者です。
 ここまで聞くとわかるかもしれませんが、一回のダイスでできることはかなり限られています。1~5回のダイス対決で勝敗が決まる勝負なんかはほとんどじゃんけんと変わりません。まあもちろん描写による肉付けを受けて対戦者も観戦者も楽しめる名勝負へと変わるわけなのですが、やってることはじゃんけんです。有利も不利もない完全な運勝負です。じゃんけんに強くなる方法はありませんから、努力のしようがありません。また、このシンプルな勝負のもう一つの欠点として、どちらに有利かわかりやすすぎるという点があります。補正という概念がありますね。どちらかのダイス目を足したり引いたりすればそりゃ有利不利は作れます。が、それだとあまりにもわかりやすすぎる。高い方が勝つなら足された方は有利だし引かれた方は不利です。梅の記事にも書きましたが名勝負とはどちらが勝つかわからないものですから、有利不利はマスクされていた方がいいに決まっています。そこで、定期ゲーの戦闘を思い出してください。HPとかATKとかDEFとか数字がたくさんあって、スキルの効果や係数が一個一個違って、行動順がまたSPDとかで決まって、しかもバフやデバフで数字が変動して……ややこしいわ!! そう、このややこしさは有利不利をマスクするんですね。またスキルセットを変えたり能力値を伸ばしたりといった努力で自分を有利にすることもできます。これが大抵のゲームが戦闘にある程度複雑なルールを採用している理由です。複雑なルールは一回の判定では作れません。個々の判定や数字生成がより集まり、絡み合ってルールになっています。しかし、個々のダイスの確率を見ることは無駄にはなりません。判定の成功確率を見ればスキルの発動しやすさや当たりやすさがわかります。生成される数字の平均がわかれば与えられるダメージや回復量の平均がわかります。それらの要素が絡み合って戦闘ログが生成されるのですから、個々の結果はそれぞれ重要な歯車です。あとはその噛み合い方を見ればバッチリOKお前が定期マスターだ。まあそこが難しいんだけど。
 ところで、戦闘のルールを作りたくなったこと、ありませんか? 必要になったでも可です。戦闘でなくても、修行してポイントを貯めて成長するルールとかでもいいです。そういうとき、当然ダイスを使うわけですが(いやカードとかでもいいですけど、定期ゲー付属のチャットにカード配る機能がついてるとこは見たことないです)、なんか……何をどうすればどうなるかさっぱりわがんね。ということもありますね。ここから先はそういう人とかがなんかそれなりの妥当性をもってふわっと戦闘ルールが組める、ぐらいを目指して書いていきたいと思います。ふははもうすぐ10000字。まだ全然序盤ですよ。でも前書きが本編の三倍……だと……ってなる予感がする。


ダイスを振ってみよう

 ここではロール内で使えるいろんな単発ダイス振りの方法とその特徴を紹介します(そろそろ疲れてきた)。

○100面単振り
 判定の場合、ある値を目標値に、1d100を振ってそれを超えたり下回ったりしたかで成否を考えます。達成値が目標値より高いまたは目標値以上(この二つの違いは一般常識だからググれ)で成功のパターンを「上方判定」、未満または以下で成功のパターンを「下方判定」と言います。以上と以下のパターンが多いかな。私は軽い単発判定だと以下型1d100下方判定をよく使います。これは目標値の数字がそのまま成功確率のパーセントになるから。以上型上方判定だと確率が100から目標値引いて1足すとかになってめんどいんですよね。明確な目標値を決めず大まかに高いか低いかを見たり、ゾロ目だと成功にしたりといったパターンもありますね。ちなみに1d100でゾロ目が出る確率は10%(全事象100通りに対しゾロ目は0~9までの10通り)なので案外高いです。それなりに大きい数字までまんべんなく同様に確からしい確率で出るので1d100は使いやすいですね。亜種として1d999とかもありますが、判定に使うには数字が細かすぎるのでもっぱら数字生成に使ってます。

○6面複数振り
 6面ダイスはサイコロとも呼ばれるもっともポピュラーなダイスです。なんせ立方体ですから作りやすい。みなさんも一回ぐらいは実物を触ったことがあるのでは? TRPG界隈でもよく使われているダイスで、2d6で達成値を出す型なんかはよくありますし、変わり種だといくつか6面を振ってゾロ目の数で判定、なんてのもあったり(ウタカゼとか)。しかしこの6面、実は確率考えるとわりとめんどくさいです。なにせ数字が小さいですから、細かい調整が苦手なんですね。え? 複数個振ればいいって? 実はそこに落とし穴があるんですよ。同様に確からしいダイスというのは、たくさん振ると正規分布と呼ばれる平均値に近い位置が出やすい分布に近づいていくんですね。低い値や高い値は出にくい。というのも、先に書いた通りダイスを区別することによってどのダイスでどの目が出るという組み合わせが多様になり、真ん中あたりにある合計値になる組み合わせは膨大に、最大や最小に近い合計値はたくさんゾロ目がいるので組み合わせが減って少なくなります。逆に言うと出目が平均値付近に安定するので、そんなにブレがない乱数を出したいとき、すなわちダメージや回復の数字生成などに役立ちます。

○その他
 リアルダイスであとよくあるのは1d4、1d8、1d12、1d20あたりですかね。これらと1d6は正多面体なので想像しやすいです。あとは1d10とか。立体の名前としては正ねじれ双五角錐とか言う名前がついてるみたいですがまあどうでもいいですね。リアルダイスの話はいいんだ。コンピューターダイスだと現実にないダイスも作れます。1d7とか(いや、工夫すれば作れるんだけどね)。ダイス一個だと1から最大値まで同様に確からしく出るので、なにか複数のものをランダムに選ぶのに向いてます。6面の弱点として約数が2, 3, 6しかないというのが挙げられます(要出典)が、コンピューターダイスだと気にしなくていい。嬉しいね。複数個振るとさっきも言ったように出目が安定するので、1d100を振る局面で4d25を振ることにより真ん中が出やすくする、といった使い方もできます。


ダイス振るのたーのしー!

 では今見た判定を組み合わせてルールを作ってみましょう。これを書いてるのがもう公開予定日当日なので新しいルール作るとかはやめて自分が作ったルールを解説しようと思います。
 
○幼女・地霊ちゃんの鍛練
 クリトラで現在進行形で使っているルールその一。まずは概要をぺたり。

最初に100面で調子チェック、鍛練に加算。

6面で鍛練内容決定。
1,2 浮遊魔術 3,4 地魔術 5,6 大鎌

100面+調子+成長で鍛練結果。
浮遊魔術……大質量浮遊、姿勢制御、気配遮断の3項目。
地魔術……岩石召喚、金属召喚、岩石加工、金属加工、岩石操作、金属操作の6項目。
大鎌……白兵演武、遠戦演武の2項目。

結果の数値が100を超えると6面で成長、次回以降鍛練時に結果に加算。
補正抜き純ダイスで00または01を出した場合と調子ダイスと同じ目を出した場合、結果の数値が200を超えた場合は通常の成長に加えそれぞれもうひとつ6面を振り成長。
成長値が20を超えたら、通常成長は100面を振って現在の成長値以上が出た場合のみとなる。

 つまり、100が目標値で2d100+補正が達成値の判定で、調子ダイスはその日の全訓練に適用、個々の判定ダイスは個々に振って出目に応じてボーナスが出る、というルールです。
 このルールの設計意図は、

・2d100とすることで出目に多少の安定性を持たせる
・2dの片方を「調子」とすることでロールプレイのフックに
・2dのもう片方の判定ダイスの特殊出目もロールのフックに
・成長値が上がってきたら判定が成功しやすくなるので、成長判定を別個に挟むことにより成長速度を調整

 といった感じです。成長判定は「成長値(だんだん上がる数字)を目標値とする上方判定」なのがミソで、目標値がどんどん上がることにより成長すればするほど成長しにくくなります。逆に下方判定であれば成長すればするほど成長しやすくなるので、峠を越えると楽になる系の判定に使えますね。成長判定が成長値20からなのは最初の方でうっかり失敗すると悲しい気持ちになるからです。あと、後付けだから。

○マギクムさんの鍛練
 クリトラで現在進行形で使っているルールその二。また概要をぺたり。

 いくつかのダイスを合計が960になるように振る。480に近いほどちょうどいい威力となり、高いほどヤバく低いほどしょぼい。

~✿流れ✿~
 今日の調子を100面で決める。この値分だけ個々のダイスの値を加減算して調整可能。

現在ステップに合わせてダイスを振る。

・480ぴったりになる
・ひとつ以上1が出る(ひとつにつき一回)
・ひとつ以上最大値が出る(ひとつにつき一回)
・ひとつ以上3桁全て揃うゾロ目が出る(ひとつにつき一回)
以上の条件を満たす度に現在ステップの確率で一回成長判定を行い、成功回数をカウントする。

成長判定成功回数が現在ステップの必要回数に達すと次のステップに進み、成長判定成功回数をリセットする。

~✿ステップ表✿~
 下記のステップごとにダイスの個数、成長確率、成長に必要な成長判定成功回数が異なる。
1. 1d960、成長80%、必要回数1回
2. 2d480、成長70%、必要回数2回
3. 3d320、成長60%、必要回数3回
4. 4d240、成長50%、必要回数4回
5. 5d192、成長40%、必要回数5回
6. 6d160、成長30%、必要回数6回
7. 8d120、成長20%、必要回数7回
8. マスター!

 調子回りがちょっとわかりにくいので補足すると、例えば調子が54のとき、
・1d960で38が出たら37引いて1にして成長判定できる
・1d960で913が出たら、903+54=957で960には届かないが、913-25=888で3つゾロ目の条件は満たせるので成長判定できる
・2d480で33と22が出たらそれぞれ32と21引いて(32+21=53なので調子内)二回成長判定できる
・2d480で45と63なら45は44引いて成長判定できるが残りの調子は10なので63のダイスはからは成長判定できない
 なんかこんな感じです。ぴったり使わなくてもOKなわけだ。まあ、これがあることにより確率計算が鬼面倒になってるのがこの判定だったりするんですが。
 設計意図は、

・複数振りの出目の安定化現象を利用してコントロールがうまくなっていることを表現
・1~9までのできるだけ多くの数を約数にもつ数、かつ999に近い数として960(2^5×3×5、1, 2, 3, 4, 5, 6, 8が約数)を選択し、複数振りをやりやすく
・調子システムで序盤をやりやすく、他二人の鍛練との共通点も作る(気分的に)
・個数が増えると成長条件を満たしやすくなるので成長判定の確率と回数で成長の難易度を調整

 という感じ。個人的には判定の妥当性とダイスによる数値表現をうまく同居させられたお気に入りルールです。案外ゾロ目狙いやすくてしくったかなとも思いつつ、よく失念するので結果的には無問題です()。

ダイスを振れ

いかがでしたか?(様式美) 前書きが本編の三倍……だと……。最後の方はだいぶなげやりになってしまった。もっと中身のあること書こうと思ってたんだけどなー。やはり確率の基礎から書こうとしたのがダメだった。 長々と色々書きましたが、大事なのは楽しくロールすることです。ダイスはそのためのツール、スパイスにすぎません。くれぐれもダイスの邪神に這い寄られませんように。

一部説明の出典:
啓林館「詳説 数学A 改訂版」編・高橋陽一郎

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