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【創作小説】僕と「柏餅」

放課後。
僕と友人の満寛みちひろとで駄弁っていたら、同級生でオカルトコンビの十朱とあけしばが入って来た。
「購買に柏餅売ってたから、食べようぜ〜」
「五個入りしか無かったから、最後の一個はじゃんけんで買った人が食べよう」
「ありがとう」
僕の机に柏餅を広げ、皆で食べ始める。最近見た心霊動画の話で盛り上がっていると、芝があれ、と声を上げた。
「残ってた柏餅は?」
四人で、机の中央を見る。容器に入っていた柏餅が、消えていた。
「どこいった?今俺たちしかいないのに。落とした?」
机の真ん中にあったもの、落ちるだろうか。床を見て顔を上げる途中、教卓の前に、裸足の小さな足があるのを見た。子ども?緑色の半ズボン。そのまま視線を上げれば、顔がーー
宗也そうや。無いだろ、諦めろ」
肩を掴まれ、満寛を見上げた。改めて教卓を見ても、誰もいない。頷こうとして、目の前に何かが降って来る。柏の葉。
「えっ、」
皆の声が揃う。天井を見上げた。何もない。顔を見合わせて黙った時。
「ごちそうさま」
幼い声が、教室に響いた。
「わっ!」
全員で廊下に飛び出す。
「なに何、今の!」
興奮する十朱が、ドアから教室内を見渡す。その上から、逆さまの子どもの後頭部が下りて来たから、僕は黙って十朱を引き剥がした。これはまずい。怖い。
「ちょっと歩こうよ」
十朱を引っ張りながら、走り出さなかった自分を褒めたかった。満寛と芝も、黙って着いて来てくれる。話したら、十朱と芝は教室に戻るだろうか。不満げな十朱の声を聞きながら、静かに溜息をついた。

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