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「風船ガム」 - 幼なじみと恋する日常に癒される普段着のラブストーリー

★★★★★

漫画的な展開のドラマばかり観ていたので、たまには起伏が激しすぎない穏やかなドラマが観たいと思って観始めたのがこのドラマ。期待以上に「普通の日々」がとても優しく、時間をかけてじんわりと沁みる良作でした。

主人公は幼なじみの男女ふたり。母親に女手ひとつで育てられたリファン(イ・ドンウク)と、母親を早くに亡くし、父親も中学生のころに亡くしたヘンア(チョン・リョウォン)。親同士が昔馴染みのふたりは幼いころから一緒に育ち、リファンは漢方医に、ヘンアはラジオPDになります。

30を過ぎても互いに独身で、リファンは見合いをし、ヘンアは会社の先輩とつきあっているものの別れ…あれやこれやの中で互いに想い合っていることに気づいて付き合い始めるものの、リファンの母親に反対され、さらにその母が若年性アルツハイマーになってしまい、なかなか平和な幸せにたどり着けない。そんなストーリー。

そうは言ってもドラマの主人公なので、そこそこ裕福だったり医者だったり、平々凡々な設定では必ずしもないかもしれませんが、リファンもヘンアもキャラクターがものすごく等身大で、ふたりの悩む姿にひたすら共感し、ふたりの何気ないやりとりの可愛らしさには本当に癒されます。

幼なじみというのは人間関係の中でも特殊だと思います。必ずしも付き合いの時間の長さが関係性を決めるものではありませんが、幼いころを知っている仲だと、やっぱり根本的に気を許せるもの。まして学校でも家でもそれ以外でもずっと一緒に過ごしてきたふたりは、大人になっても子供のころと同じように喧嘩して、笑い合って、お互いのことを想う。他の相手に見せるのとはまったく違う顔がそこにあって、そんなふたりの姿は永遠に見ていたくなってしまいます。

ふたりの子供時代もちょくちょく挟まれていくのですが、子役たちがまた本当にかわいい。それこそ等身大の初恋の甘酸っぱさがリアルに表現されていくのです。

互いに向ける気持ちはもう最初からずっと恋なのですが、自覚したときに一気に大人の感情になるのがまたグッとくるところ。ヘンアの元恋人はヘンアたちよりだいぶ年上なので、そことの対比もありつつ、リファンとヘンアがふたりなりに全力でお互いを守ろうとする姿が最高に愛おしくなります。

また家族の定義みたいなこともこの作品の大きなコンセプトになっていて、最終話に至るまでの間に、血のつながりがなくても築かれる間違いなく逞しい絆が浮かび上がってくるのです。たぶんそれは交わした感情と共有する時間の積み重ねあってのものなのですが、人間関係は決して既存の型にはまるものではないのだなと感じられて、孤独だったり、家族のことに悩む人にとっては、きっと勇気をもらえる物語だと思います。

展開のドラマティックさに目を奪われることの多い韓国ドラマの中にあって、こんなにも普通であることに魅了される作品は個人的に珍しかったです。とても大好きと言える一本。

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