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すあまのたんぺん

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中根すあまがかいた短編小説たちです。
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#小説

うらうらうら

桜って、別にピンクじゃないじゃないですか。あれ、本来、白なんですよ。まあ、ピンクの桜もあ…

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鰯に学ぶことなんて、ない

まるで水族館の巨大水槽に放り込まれてしまったようだ。酸素ボンベはない。呼吸ができる回数が…

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ほていをつぐもの

「神様みたいなお仕事だと思います」 何の脈略もなく突然現れた、素性の知れない客がそう言っ…

14

ばっきゃろー

太陽の光は人間の体に深刻な健康被害を与える。 人気バラエティー番組の放送が打ち切られ、突…

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ある病室

この国から人がいなくなった。 厳密に言えば、隠れた、の方が正しいのだが。 窓から外を見ると…

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さんたのふくがあかいわけ

ぴろりん。 俺のケータイが震えた。すかさず電源を入れる。 通知欄には『山城もも』の文字。推…

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かみさま

「おそいのねえ。今、帰り?」 ドアの横にもたれて立っていたおばあさんが僕の目をじっと見つめながら話しかける。 時刻は7時、いつもと同じ帰りの電車。携帯の充電がなくなりそうだったので、ぼーっとしていたところだった。 無視するのも忍びなく、曖昧に頷く。 「大変ねえ。部活?勉強?」 「部活です」 素直に答えた。今日は大変な日だった。部員同士の小さな争いごとが発展して、最終的には退部者を5人も出してしまうような事態になった。僕はただただ音楽が好きで、憧れのサックスをうまく吹けるように

うつくしい

うつくしいと思った。 うるんだ奥二重の目、瞳は黒々として澄んでいる。真珠を纏っているかの…

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休校

『あ、おはよ』 『おはよ。あれ知らないの?』 『知らないのって?』 『いや、休校』 『知って…

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まほうだよ

花火が、すきだった。 それは、夏の夜に咲く一瞬の夢であり、わたしをどこか遠い世界に連れて…

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彼とカツカレー

今日は日曜日。 目が覚めて3秒で顔がにやけてしまったのは、今日がとっても幸せな日になると確…

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狭間

目が覚めたら夢だった。 自分が存在する世界が現実であるような気もするし、夢であるような気…

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季節はずれのきらきら

AM 8:00 『はなちゃんおはよう〜!!』 『あ!ゆかちゃん!おはよ!!』 『学校までいっ…

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さなとろじー

正直、もういらないと思った。 何がって?命だよ、命。 だって生きていてもいいことなんてひとつもないし、むしろ状況は日に日に悪化して、生きづらくなる一方なんだ。 ぼくの願いはひとつ。苦しむことなく、痛みに耐えることなく、ただひたすら平穏に、この命とお別れをしたい。 自殺願望とは少しちがう。『ぼく』という命が、存在が、人格が、ぼくにはもう必要ないのだ。 どうすればこの願いを叶えることができるのだろうか。 ぼくは考えた。 何も食べず、眠ることもせず、硬い学習机のいすに座っていつまで