季節はずれのきらきら

AM 8:00

『はなちゃんおはよう〜!!』
『あ!ゆかちゃん!おはよ!!』
『学校までいっしょに行かない??』
『もちろん!いっしょに行こ!!』
『ねえねえ、今日の給食、揚げパンだよ?』
『え!そうなの!ひさしぶりじゃない?わたし絶対おかわりしよ〜!』
『みんなおかわりしたいから、きっとじゃんけんだよ。』
『そっか…。わたしじゃんけん弱いんだよな〜
。』
『たしかに、いつも負けてるイメージ。』
『うるさいなあ。…ねえ!!あれ見て?』
『なに?』
『ほらあれ!こんな時期なのにクリスマスのイルミネーションまだついてる!』
『あ〜、あれね!わたし、しおりちゃんから聞いたんだ。…あそこんち、年中サンタさん来るらしいよ?』
『え〜?なにそれ!』
『よくわかんないけど、あそこんちは季節関係なくサンタさんが来るの。だからずっとつけっぱなしなんだって。』
『そんなのずるいじゃん!!』
『たしかにね〜。年中サンタさん来たらいいよねえ。』
『あ!やばい、今週給食当番じゃん!白衣わすれてきちゃった!』
『え?!』
『…とりにもどる!行ってくるね!』
『え〜、ちょっと〜!!』

PM 1:30

『もう〜!面倒臭い!PTAの副会長なんて受け入れるんじゃなかった!』
『なんだかんだ週3で集まってますもんね〜。』
『そうよ。こんなに大変だって聞いてなかったんだけど。』
『でも、高橋さんがいてくれて助かってます。会長、ちょっとオカシイじゃないですか。』
『そうだね、相当キてるねあのジジイ。』
『言いますね〜。でも本当にそう。この前だって……』
『もうやめよう、やめよう!!学校着いたら散々その話なんだから。ねえ、どうなの?はなちゃん。最近は?』
『相変わらずですよ。今日も白衣忘れて、取りに戻ってきて…』
『そうなんだ!ふふ、相変わらずそそっかしいね〜。でもはなちゃんはそれがかわいいよ。』
『そうですか〜?親としてはもっと落ち着いてほしいんですけどね。』
『まあ、そうよね。あっ、ねえねえあの家、知ってる?』
『どれですか?』
『ほらあの、イルミネーションついてる…』
『こんな時期に…』
『そうなのよ!それでね、怪しいと思った近所の鈴木さん、あ、ほら広報の!鈴木さんがね、インターホン鳴らしてみたんだって。でも反応がなくて…それから何回も鳴らしたけど、何の音もしなかったんだって。』
『え?怖いですね。』
『そうそう、もともと生活感がなかったらしいんだけど。それでね、聞くところによると、あそこ事故物件らしくて。引っ越してきてもすぐいなくなるらしいのよ。それで、1番最近の住人も、イルミネーションをつけたまま、忽然と消えたとか。』
『なんですかその話…怖っ!!』
『まあ、これ会長から又聞きした話なんだけどね!』
『なんだ、そうなんですね!通りでちょっと無理あると思った!怖がって損でした!』
『ごめんごめん、変な話して。とりあえず今日も頑張りますか、我が子の笑顔のために!』
『よ!高橋さんかっこいい!』
『ははは、何言ってんのよ!』

PM 5:45

『はーあ、嫌になっちゃうわ!!』
『なんだよ、せっかくたまには2人で散歩でもって思って誘ったのに、さっそく愚痴ですか。』
『全部あの人が悪いのよ!京子さん!』
『いい人じゃないか。しゃきっとしてて。うちの息子にしちゃ上出来の嫁だよ。』
『だって今日も、PTAの集まりだとかいって、いつも帰るの夜じゃない!それに週に3回も!副会長だかなんだか知らないけどねえ、疑っちゃうわよ!』
『疑うって何を?』
『浮気よ浮気!!』
『またそんな、根も葉もないこと…』
『ひろちゃんがかわいそうでしょ。もし本当にそうだったらわたし、絶対許せないわ。』
『PTAの集まりなんだろ?しょうがないじゃないか。京子さんは忙しいんだよ。』
『なにその、わたしが暇してるみたいな言い方。』
『違うよ、ちょっと落ち着けよ。お前、うちの母親に似てきてないか?ちょっと前までああいう姑にはなりたくないとか言ってたのに。』
『そのほうが好都合なんじゃない?あなた、お母さんのこと大好きでしょう?』
『はいはい。…あ、なにあれ。ちょっと見ろよ。』
『……』
『なあ、お前が最近京子さんのことでカリカリしてるから、少しでもゆっくりしてほしいって思って散歩に連れ出しだんだよ。そう拗ねるなよ。』
『……どれを見ればいいの?』
『ほら、あそこ。こんな時期なのにイルミネーションついてる。』
『あ〜、あれね。』
『なにか知ってるのか?』
『坂田さん。ほらゆかちゃんとこの。』
『あ〜、ゆかちゃんね。うちのはなちゃんと仲良しの。』
『そう、坂田さんの奥さんが言ってたのよ。あそこんち、3人家族で、5歳の息子さんがいたんだけど、』
『いた、?』
『そうなのよ。不幸なことにちょうどあのベランダから落ちて亡くなったらしいよ。』
『それは、辛いなあ。』
『それでね、その事故がちょうどクリスマスの直前で、その男の子はサンタさんが来るのをとっても楽しみにしてたんだけど、プレゼントをもらいそびれちゃったんだって。』
『なるほど、それで…』
『そう、天国でちゃんとプレゼントがもらえるように、イルミネーションをつけっぱなしにしてるんだって。まあ、わたしも坂田さんにきいただけなんだけど。』
『悲しい話だな。うちはみんな元気だから、感謝しなきゃな。』
『そうね…あなた、ごめんなさい、さっきは、』
『いいんだよ。いつもご苦労さま。』
『ふふふ、いいえ。』

PM 11:00

うわっ!!よっくねたあああ!!!
あれっ!ここはどこわたしはだれ?ダレ?…はてさて、いまはいつだ?ウーーーン。
…おもいだしたゾ!!ぼくは猿田太郎、さんじゅうはっさい!!かいしゃいん!!そしてここはぼくのいえ!!
それで、いまはいつだ?ウーン、ごがつのじゅうごにち…ウーン?ぼくはいままでなにを…
…おもいだしたゾ!!ぼくはかいしゃをくびになった!!それで、そのままねた!!そしたらいまになってた!!そうだそうだ!!ウーン、それでそれで??ぼくはいつからねてた??
あれ、まどのそと、ぴかぴかしてる。なんだっけあの、そうだ!べらんだだ!べらんだがぴかぴかしてる。いってみよー。
…おもいだしたゾ!!ぼくはくりすますがだいすきだから、さんたさんのぴかぴかをかってきて、それでまいとしつけていたんだ!!
ってことは!!あれ?それでぼくはくりすますをいわえたんだっけか?
……わっかんないや!!まあいいや!!よくあることだし、もうなれっこだもんね〜〜〜。
こーゆーときはまず、ぽすとをみにいきます。
さるたくんはえらいので、ぽすとをみにいきます。それではしつれいして…ぱかっ!!アレっ!!たっくさんあるねえ。
おすしのちらし、ぴざのちらし、これはすーぱーのちらし、これは…
『…え、電気代高っ!!』

AM 8:00

『はなちゃんおはよ〜!!ねえ、今日は忘れ物ない??』
『ばっちり!!今日はちゃんと学校までいっしょに行けるよ!!』
『そっかよかった〜。』
『ねえ、見て!昨日話してたあそこ…』
『…あれ!!!』
『『消えてる〜〜〜〜!!!』』

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